シーズンが開幕した「フィギュアスケート」。
皆さんご存じのように愛知県は伊藤みどりさんや浅田真央さん、宇野昌磨選手などメダリストを輩出しているフィギュア王国です。選手たちはもちろん「すごいぜ」なんですが、愛知にはもうひとつの「すごいぜ」な技術があるんです。それはフィギュアスケートの競技には欠かすことができない"採点"システムです。
(NHK名古屋 北澤実季)


今月(11月)18日に開幕するフィギュアスケートのNHK杯には、男子シングルの宇野昌磨選手や女子シングルの坂本花織選手、ペアの木原龍一選手と三浦璃来選手など北京オリンピックのメダリストたちが出場を予定しています。
氷上を華麗に舞うジャンプやステップ、スピンなど選手たちの多彩な技に注目が集まりますが、競技を支える採点システムを名古屋市の会社が支えているの、知ってましたか?

オリンピックやグランプリシリーズなどで使われる、国際スケート連盟の公認となっている採点システムは世界で2社しかないんですが、そのひとつが名古屋市の会社です。

縁の下でフィギュアスケートを支えるのは、どんな会社なのか。訪ねてみると郊外にある従業員17人の小さな会社でした。


社長の澤田一也さんは大学時代、愛知県代表として、国体にも出場したフィギュアスケーター。この時の経験が、採点システムの開発のきっかけになったそうです。



たとえばジャンプひとつとってみても、技の種類、回転数、レベルで決まる「基礎点」。その技を評価する「出来栄え点」。そして演技の前半でやったか後半でやったかで、得点が変わります。フリープログラムでは、こうしたジャンプやスピンが、合計12も盛り込まれ、さらに、演技全体の表現力、構成力、スケート技術力も採点されます。大きな大会になると、技術審判、演技審判、合計10人以上でジャッジします。

澤田さん
「とってもめんどくさい」

このめんどくさい採点を、早く!正確に!してくれるのが、澤田社長が開発したこのシステムです。
このシステムを使ってどうやって採点するのか? 元フィギュアスケーターの社員のかたの実演も交えながら、教えてもらいました。


例えば、ダブルアクセルの時は、アクセルの欄の2を押すだけで入力完了です。
出来栄えの判定は、マイナス5からプラス5までの評価を選ぶだけ。
審判はスーパースロー映像を見るなど、演技に集中して、ジャッジすることができます。
各審判の点数をメインシステムに集め、演技が終わって、わずか2分半で結果が表示できるすごいシステムなんです。


会場やテレビ中継などで結果がすぐにわかるのも、この採点システムのおかげなんです。

澤田さんのシステムが、世界の舞台で活躍する転機となった出来事がありました。
かつて審判は、演技全体の技術と芸術をそれぞれ6点満点で採点していました。それが、2004年のルール改正で、1つ1つの技に対して、あらかじめ基礎点を設け、技の完成度に応じて点数を付け加えることになりました。
複雑になった採点方法に対応するために、澤田さんはわずか2か月で、動画もみられるシステムに改修しました。国内の大会で、トラブルのない安定した採点システムの運用を続けたことで、国際スケート連盟の目に留まり、公式に採用されたのです。
澤田さん
「フィギュアスケートの採点っていうのは、どちらかというとブラックボックスに近い形で行われていたわけですが、主観の競技であるがゆえにいろんな懸念点も抱かれていたっていうこともあるので」


今シーズンも9月から全国各地でフィギュアスケートの大会が開かれ、この採点システムが選手の活躍を支えています。

澤田さん
「スケーターっていうのは自分の人生をかけて演技をしているわけじゃないですか。競技の時には、その中の人生勝負するための順番を決めているのが我々のシステムと思えば生半可なことはできない。その緊張感の中に携わっている自分の仕事が好き」
澤田さんによると、フィギュアスケートはルール改正が大きいものは2年に1回、細かい改正は、年に数回あって、それを1週間や10日で修正しないといけないこともあるんだそうです。そうしたときに、スケーターとしての経験が生かされると話していました。
今月(11月)18日から札幌で行われるNHK杯でも使われることになっていますので、こんな採点システムが活躍しているんだという視点で競技を見てみると、さらに楽しく見られるかも知れません。

NHK名古屋 北澤実季
愛知県豊橋市出身
「ほっとイブニング」では東海地方のものづくりのコーナーなどを担当。
今も、この地域の話題を「まるっと!」でお伝えすべく、日々取材をしています。
澤田さん
「演技が終わって宿舎に帰っても成績の連絡がこない、自分が何位なのかもわからない。ご飯食べた後とかにFAXで結果がわかる。へたすると2時間くらいかかって、自分の成績がわかるというのが、当たり前の競技だったんです。フィギュアスケートの結果の計算っていうのは、当時も今もそうなんですけど、とってもめんどくさい」