「東海すごいぜ!」、今回は全国から注文が殺到し、最長で1年半待ちのハンドメイド作品です。
作っているのは、三重県四日市市に住む齋藤勝さん、84歳。
80代になってから裁縫を始め、"生きがい"として作品作りを楽しんでします。

レトロな柄のがま口バッグや、どこか懐かしい模様のトートバッグ。
いま、全国から注文が殺到し、最長で1年半待ちの商品です。
ブランド名は、「G3ソーイング」。
作っているのは、御年84歳の四日市市に住む齋藤勝さんです。

齋藤さんが裁縫を始めたのは、わずか2年前。
娘の千里さんにミシンの修理を頼まれたのがきっかけでした。

齋藤さんの娘 畑中千里さん
「病気もあって、ほとんどいつ家に行ってもパジャマだったし、"生きとってもしょうがない"ってことばが口から出ていた。ミシンを修理してもらったらちょっと元気になるかなって」

電気工事士だった齋藤さん。
機械の整備やものづくりは得意でした。
頼まれたミシンの修理が齋藤さんの職人魂に火を付けました。


最初に作ったのは、ブックカバー。つづいてマスク。
作り方が分からないものは既製品を分解して、形や縫い方を独学で学びました。
負けず嫌いな性格もあって、次々に難しい作品に挑戦し、腕を上げていきました。

齋藤勝さん(84)
「できあがったときの達成感。きれいにいったとき、うれしいですよね。熱が入ったときは、1日に作品を8つか9つ作る。最高で13個作ったこともある」

毎日夢中でミシンと向き合い生き生きとした齋藤さんを見て、千里さんは、インターネットで作品の販売を始めました。おじいさんが作っているので、その名も「G3(じーさん)ソーイング」。

そのときツイッターに投稿したのが、かわいいがま口バッグを持つランニングシャツの齋藤さんの写真。
ギャップが話題となり、いいねが14万以上!注文も殺到しました。
齋藤さんの娘 畑中千里さん
「びっくりして、アカウントを削除してなかったことにしようと思っていたくらいどうしようと思った」
齋藤勝さん(84)
「やっぱりうれしいね。こんなにあったかい世界もあったのかと」
齋藤さんがすごい!のは大胆な発想力です。

例えば、この化粧ポーチ。
型をとるのに使ったのは、なんとお茶わん!
化粧品が取り出しやすい形を考えた時、お茶わんの丸みや大きさがぴったりだと感じたそうです。
身近にあるものを作品づくりに生かしています。
齋藤さんの活躍に刺激を受け、作業の手伝いを申し出た人もいます。
近くに住む堀越葉満さん、91歳です。
バッグの内側に使うキルト生地の型取りや裁断を任されています。


堀越葉満さん(91)
「生きがいを見つけて齋藤さんが仕事をやってみえるので私もうれしくて、お手伝いできて感謝しています」

裁縫を始めて、齋藤さんには宝物ができました。
商品を購入した人から届く手紙です。

「夢中になれることを見つけられるのはすばらしい」、「幸せな気持ちをいただきました」など、感謝のことば。
これまでに送られてきた手紙は、ファイル5冊分になりました。
1つ1つ大切に保管し、読み返しています。
齋藤勝さん(84)
「皆さんがこんなに喜んでくれて、本当に幸せだねって心から思える。常に新しいことを考えていきたい。まだまだ頑張ります」

齋藤さんの作るバッグの値段は1つ1万円前後です。
購入する人たちは作品の魅力だけでなく、齋藤さんを応援したいという思いもあると感じました。
インタビューでは、「裁縫のおかげで、毎日がすごく楽しい」と齋藤さんが笑顔で答えていたのが印象的でした。
いくつになっても挑戦できる、やりがいを見つけることで人生が豊かになると、齋藤さんの生き方が教えてくれているようでした。
また齋藤さんは、購入した人からSNSに届くお礼のコメントを読むために、スマートフォンの使い方を覚えたそうです。
裁縫を通して、どんどん新しいことに挑戦する齋藤さん、私も見習いたいです。

浦野莉恵リポーター(NHK名古屋放送局)
愛知県豊橋市出身
今年度から「東海すごいぜ!」を担当し、東海地方の伝統産業や全国から注目を集める、すごい!技術や取り組みを取材しています。
齋藤勝さん(84)
「ものを作るというのはおもしろいね、何でも」