あえて空気を読まず、働く女性の視点から
社会に切り込む、山本恵子解説委員(Keiko Yamamoto)の「KYジャーナル」。
今回のテーマは、「理系の女子学生を増やそう!」です。
ことし5月、高等教育のあり方を検討する政府の教育未来創造会議の第一次提言が出ました。そのなかで、グローバル化が進むなかこれからの日本には、デジタル化や脱炭素化など成長分野をけん引する人材が必要だとして、世界的に見ても少ない理工系を専攻する女子学生を増やす、という目標が掲げられました。
こちらは、大学の学部入学者に占める理工系の男女合わせての学生の割合です。
日本は17%と、OECDの平均27%と比べても大幅に低くなっています。
そして、特に低いのが女子です。
大学に入学した女子学生のうち、理工系の学部に進んだのはわずか7%。
これを男子学生と同等の28%に高めていくとしています。
日本の高校1年生では、男女とも科学や数学のリテラシー、いわば学力は高いにもかかわらず、高校で、文系、理系と分かれるとき、理系を選択する生徒は約2割になります。
そこから、大学に進学するので、さらに少なくなるのです。
提言では、その原因として、「女子は理系に向いていない」などの根拠のない固定観念が保護者・学校・社会にあって、女子の理系への進路選択の可能性が狭められていることが考えられると指摘しています。
この提言を受けて、文部科学大臣が、保護者や小中学校の教職員などに向けてメッセージを発表しました。
保護者には、「『女子は文系』といった固定観念から離れ、子どもたちの幅広い進路選択をお支えください」と呼びかけています。
そして、教職員には、「高校で早期から文系・理系に分ける教育から脱却し、文系・理系の枠を超えた学びを」そして、「学校における男女の違いに基づく先入観を徹底的に排除しましょう」と呼びかけています。
大学も動き出しています。
名古屋大学では、「入学者の多様性を確保し、工学分野において、社会を構成する比率と大きなかい離が見られる女性比率の是正を目指す」として、来年度の入試から、工学部の学校推薦型選抜で女子学生枠を創設すると発表しました。
さらに愛知県では、もっと前から取り組んでいる大学があります。
名古屋工業大学では、平成6年度から工学部の電気・機械工学科に女子学生対象の推薦制度を設けています。
こうした背景には、研究開発など、産業界から女性、多様な人材が必要という要望があったということです。
この30年近くで、女子学生の割合は10%ほど増えたということです。
時代は、デジタル、環境、と文系、理系、両方の知識が必要になってきています。
私たちの固定観念で子どもの未来の可能性を狭めてしまうのはもったいない!
保護者も、先生も、わたしたち大人がまず意識のアップデートを。
山本恵子解説委員(NHK名古屋放送局 報道部 副部長)
愛知県出身。1995年入局。金沢局を経て社会部で教育、女性活躍、働き方改革などを中心に取材後、名古屋局で赤ちゃん縁組や里親について取材。国際放送局World News部を経て2019年再び名古屋局。「子ども子育て応援プロジェクト#わたしにできること~未来へ1歩~」スタート。2021年より解説委員(ジェンダー・男女共同参画担当)を兼務。中学生の娘の母。