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急増!梅毒 症状は?治療法は?専門家に聞く

2022年12月7日

性感染症の「梅毒」の患者が急増し、愛知、岐阜、三重の3県とも現在の方法で統計を取り始めた1999年以降、最多の報告数となっています。
なぜいま急増しているのか?
梅毒に詳しい、市立伊勢総合病院の谷崎隆太郎医師に聞きました。

(NHK名古屋 記者 松岡康子)

急増の理由は?

全国の梅毒患者数はことし初めて1万人を超えました。
年代別では、男性は20代から60代まで幅広い年齢層。
女性は20代と30代で75%を占めています。

谷崎医師

「梅毒は人と人が性的な接触をすることで広がっていきますから、単純に人と人との接触機会が増えているということだと思います。
昔と比べると、マッチングアプリやSNSでかなり気軽に出会える場面が増えているので、おそらくそれが原因の1つではないかと考えています。
特定のパートナーと性交渉するよりも不特定の人とする方が梅毒に感染している人と接する確率が高まるので、やはり不特定多数との性交渉が、梅毒を含む性感染症の一番のリスクとなります」

症状は

症状としては、大きく3段階に分けられます。

<1期>
感染から2-3週間位してから、感染した部分(性器、くちびる、口の中、肛門など)にぽこっとできものみたいなものができたり、潰瘍ができたりします。
通常は全く痛みがないため、感染に気づかないことがあります。ただし、痛くなくても人に感染させる力はあるので、この状態で性交渉をすることは、他人に感染させるリスクが高いと言えます。
また治療しなくても症状が消えるので、治療しないまま梅毒が次のステージに進んでしまうこともあります。

<2期>
感染から1~2ヶ月後、第2期になると、全身に梅毒の菌が広がる状態になります。
よくある症状としては、手のひらや足の裏を含めた、体全体に赤い発疹が出ます。
これもかゆみや痛みがないことも多く、軽いこともあるので、全く気づかないこともあります。
発熱や体のだるさなどの症状が出ることもありますが、治療しなくても症状は週単位で自然に改善します。

<3期>
免疫力が正常な人の場合、感染から数年以上たって、「ゴム腫」と呼ばれるゴムのような腫瘍ができたり、脳や心臓、血管、目などに症状が現れたりして、まひ、失明につながることもあります。3期梅毒と呼ばれる時期です。
医療アクセスがよくなり、抗菌薬をすぐに処方してもらえる現代では、3期の患者は滅多に見られなくなりました。ただし、免疫が弱った患者さんでは、感染後早期に3期の症状が見られることもあります。

谷崎医師

「梅毒は治療しなくても症状は消えますが、体内に潜伏してその後しばらくしてから症状が再発してくる方がいます。
特に注意してほしいのは、妊娠中の女性。妊婦が感染した場合は、流産や死産、早産の原因になるほか、生まれてくる赤ちゃんにも感染して重い障害がでる恐れがあり、深刻です」

治療法は

谷崎医師

「梅毒の治療法は、比較的シンプルです。
早期であれば、1回の筋肉注射で治るようになりました。
世界標準の注射薬が日本でも近年使えるようになりまして、病状が進んだとしても、1週間間隔で合計3回注射することによって治癒が見込めます。
従来から使われてきた抗菌薬の飲み薬で治す方法もありますが、注射の方が確実です」

検査は

谷崎医師

「梅毒はさまざまな症状を呈しますので、疑うことが難しいですが、血液検査のみで診断できるので、診断は比較的容易です。
潰瘍などができる部分に菌がいますが、それを証明するのは難しく、血液検査で代用します。
医療機関で採血して調べてもらえるほか、保健所で無料・匿名で検査を受けることもできます。
基本的には性行為をしたすべての人が検査を受けた方がいいですが、特にいつもと違う相手と性交渉をしたあとは検査をした方がいい。
その場合は、性行為の翌日に検査しても感染を見つけられないので、最低でも2週間以上たってから検査してもらうと正確な診断につながります。
性感染症は、性行為で感染するので、患者が1人いたら、もう1人以上の患者が必ず存在します。
私たち医師も1人患者を見つけたら、必ずパートナーの治療もお勧めします。
ご自身が梅毒と診断されたら、相手にもぜひ知らせて検査を検討してほしい」

予防するには

谷崎医師

「相手が梅毒をもっているかどうかは全くわからないので、特定のパートナー以外との性行為を避けることが基本です。
そして早期診断、早期治療が非常に大事。治療は難しくないです。
無症状でも自分が感染している可能性があると認識して、ふだんと違う相手と性行為をした後や、自分がもしかしたら梅毒かもしれないと思う方は、早めに検査を受けてもらいたい。
コンドーム自体は感染予防にかなり有効で、つけないよりはつける方が圧倒的に感染リスクを下げられます。ふだんのパートナー以外との性行為では積極的に使用した方がいいですが、これで100%防げるわけではないので、検査を受けてほしい」

筆者

松岡康子 記者(NHK名古屋放送局)

静岡局、豊橋支局、名古屋局、科学文化部、生活情報部を経て、2013年から再び名古屋局。主に医療分野や介護分野の取材を担当。
愛知県小牧市出身で、2人の息子の母親。