二酸化炭素の削減が世界的に求められる中、給食を通じて二酸化炭素の排出を抑制する新たな取り組みが名古屋市で始まった。果たして、どんな給食なのか。

名古屋市の小学校で出された給食。この日のメニューは、すき焼きどん、だんご汁、チーズ。見た目も味もこれまでと変わらないが、二酸化炭素の削減に貢献する、その名も「カーボンオフセット給食」だ。
カーボンオフセットとは、「カーボンダイオキサイド=二酸化炭素」を「オフセット=埋め合わせる」こと。日常生活や経済活動など、さまざまな場面で排出される二酸化炭素を削減する活動を支援することで、排出された分を相殺しようという取り組みだ。

ポイントとなるのは、すき焼きどんに入っているタマネギ。北海道の北見市産だ。

タマネギの生産には、トラクターなどの機械を使うため、二酸化炭素の排出は避けられない。このため、北見市のJAは、植林や森林管理をする費用を道内の自治体に支払うことで、排出された二酸化炭素を相殺する「生産段階のカーボンオフセット」に取り組んでいる。

そのタマネギは、名古屋市まで鉄道で運ばれる。名古屋市の給食では、タマネギのほか、じゃがいもも北海道産のものが使われていて、輸送で排出される二酸化炭素はワンシーズンで20トンにもなる。

この輸送段階でもカーボンオフセットを目指したのが、名古屋市の給食の材料を仕入れている青果組合と名古屋市だ。
ことし9月から、青果組合が植林などの費用として二酸化炭素1トンにつき1万円を北海道内の自治体に支払っている。費用は全額、組合が負担し、給食費への上乗せはない。これが「カーボンオフセット給食」だ。

青果組合では、子どもたちにおいしい食材を届けられる環境を守るため、取り組みを決めたという。


名古屋市では、「カーボンオフセット給食」をきっかけに環境について考える授業により力を入れている。
この日は、環境を守るために自分たちで何ができるか、子どもたちが意見を発表。食品ロスの削減やエコバッグの利用など、毎日食べる給食から環境問題を身近に感じている様子だ。


「自分たちも、もうちょっと食べて食品ロスを減らそうかなと思いました」
「買い物とかではやっぱり自分でカバンを持っていくことがいいと思う」

「自分とは関係ないようなことのように捉えてしまっては困るので、少しずつ環境のために、自分でできることを考えてもらいたい。今後もそうした意識を持って食べてもらえるとうれしいなと思います」

生産と輸送で排出された二酸化炭素を相殺する「カーボンオフセット給食」。もうひとつ、二酸化炭素を削減する上で大事なことは、給食を残さず食べることだ。残された給食は、可燃ゴミとして処理されるので、焼却のために二酸化炭素が排出されることになる。体のためにも環境のためにも、子どもたちには給食をもりもり食べてほしい。

玉置泰史 記者(名古屋放送局)
2005年入局。名古屋局、津局を経て、2020年8月から再び名古屋局。現在は名古屋市政を担当。好きだった給食は、カツ丼、わかめご飯、みそおでん、ししゃものフライ、ミルメーク、冷凍みかん。
「種をまいたあとに集中豪雨や台風が来て、シーズンを通して作物がとれなくなることがありますので、やっぱり環境は重要だと思います。子どもたちに、よりよいものを届けたいという一心です」