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ガスから水素へ 東海の企業が挑む脱炭素最前線

ニュース特集

2022年8月2日

こちらの写真は水素100%の燃焼実験の写真です。
水素は燃えても目に見えないため、わずかにメタンを配合して撮影されました。
燃やしても二酸化炭素を出さない水素は、脱炭素社会に向けた次世代エネルギーの本命とも言われます。
今回の「東海すごいぜ!」はこの水素の活用がテーマ。
東海地方では今、暮らしに身近なガスを水素に置き換えられないか、世界をリードする技術開発が進んでいます。その最前線に密着しました。(名古屋放送局 山﨑里菜記者)

ことし7月、オーストラリアで日本のメーカーが開発した新型の給湯器が披露されました。
現地のエネルギー業界や政府関係者の前で、実際にお湯を沸かして見せたところ、評判は上々だったということです。
世界を驚かせたこの給湯器。その最大の売りは燃料です。
通常の給湯器の燃料は「ガス」ですが、この給湯器の燃料は水素100%。
家庭用給湯器では世界初の技術です。

開発したのは、名古屋市に本社がある大手ガス器具メーカー「リンナイ」。
主力製品の多くはガスが燃料です。
「脱炭素」が企業経営の大きなテーマとなる中、社内には危機感が広がっていました。
さらに、販売台数から試算したところ、自社製品だけで日本全体の二酸化炭素排出量の約1.5%も占めていることが判明。
対策が喫緊の課題となりました。
リンナイ開発本部の赤木万之さんは
「弊社が脱炭素に真剣に取り組むことは、国のCO2削減に対して大きな意味を持つ」と話します。
そこで、メーカーが注目したのが燃やしても二酸化炭素を出さない「水素」です。
しかし、「水素」といえば、引火して爆発する危険物というイメージが強いのではないでしょうか。
確かに水素は非常に燃えやすい性質があります。
ガスを水素に切り替えるのは簡単ではありませんでした。

給湯器の内部では、通常はバーナーの炎が下向きに出て水を温めます。
しかし、万が一、炎が逆流して燃料の水素に引火すれば爆発のおそれがあります。
安全対策が最大の課題となりました。

そこで、この会社では、バーナー部分の金属板を変更。
従来のものに比べ編み目の細かさを100分の1にしました。
燃料の水素は通しても炎は通さず、逆流を防ぎます。

さらに燃料を供給するパイプの位置も工夫しました。
従来のガス給湯器ではバーナーから遠い位置に設置されていましたが、水素給湯器では、よりバーナーの近くに設置しました。
これにより、内部にたまる水素の量が少なくなります。
こうすることで、仮に炎が逆流して引火しても給湯器に影響が出ないところまで危険性を抑えられたということです。

こうして完成した水素100%給湯器。
ことし11月にはオーストラリアのモデルハウスに設置されて長期の使用に耐えられるかなどをテストする実証実験に入ります。
メーカーは当面、海外での販売を想定していて、日本での発売は未定だということです。
担当者は「国内の水素の供給網が整っていないことなどが課題になる」と指摘していました。

消費者が使う機器ができあがっても、肝心の燃料となる「水素」はどう入手するのか。
実は東海地方では、供給網の拡大に向けた取り組みも着々と進んでいます。
名古屋市に本社を置く大手ガス会社は将来的に、大規模な水素の供給事業に乗り出すことを検討しています。

東邦ガス 産業エネルギー営業部 佐竹諒一さん

「(水素は)そのまま今の設備を使いながら都市ガスから置き換えることができる。
クリーンなエネルギーということで、多くの人から期待されている。
水素をガスと電気に代わる3つめの柱として位置付けている」

「脱炭素」が企業経営の大きな課題となる中、企業の間でも水素への関心が高まっています。
この日は愛知県内の自動車部品メーカーがガス会社の施設を訪れ、ガスの代わりに水素を燃やす様子を見学しました。

部品メーカー担当者は
「都市ガスを水素などの化石燃料ではないガスに代替していくことが必須だと思う」
と語り、実際に工場で導入できるかどうかをチェックしていました。

このガス会社では、水素を導入したいという顧客企業に対して、再来年(2024年)から運搬できるタンクでの水素供給をスタートする計画で、「水素を供給する水素サプライヤーとしての位置づけの確立を目指す」としています。

次世代エネルギーとして期待される水素。
東海地方は、2014年にトヨタ自動車が世界で初めて水素を燃料に走る「燃料電池車」を市販するなど、水素活用の先進地とも言える地域です。「脱炭素社会」実現に向けた切り札となるのか、今後も取材を続けていきます。

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