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伝統とエンタメの大集結!NEO舞踊劇「名古屋心中」完全版で放送

2023年2月14日

〈放送〉
NEO舞踊劇「名古屋心中」完全版
~第74回 名古屋をどり~

2月21日(火)0:30~2:45(※月曜深夜)

NHKプラスで見逃し配信(放送から1週間)

NHKプラス 東海・北陸プレイリストはこちらから

コロナ禍を乗り越えた「名古屋をどり」

「名古屋をどり」というイベントを知っていますか? 戦後の焼け跡が残る昭和20年9月、傷ついた人々を癒やそうとスタートした娯楽イベントです。昭和30年代には20日間以上も公演を行う一大行事となり、名古屋の秋の風物詩として親しまれてきました。

創始したのは日本舞踊の西川流。伝統的な舞踊だけでなく、川端康成や三島由紀夫といった著名な作家が脚本を手がけた「新作舞踊劇」が人気となりました。

70年以上の歴史を誇る「名古屋をどり」ですが、2020年はコロナ禍で全面中止に。同じ年に先代の家元が亡くなるなど、つらい出来事が続きました。

そんな苦難を乗り越えて、去年10月、復帰公演が行われたのです。

一球入魂!「NEO舞踊劇 名古屋心中」

「名古屋をどり」を率いるのは、西川流 四世家元の西川千雅(かずまさ)さん53歳。今回の復帰公演になみなみならぬ意欲で臨みました。

最大のポイントは、これまで複数の演目を上演してきたのを、1本に絞ったこと。まさに一球入魂。「NEO舞踊劇」と銘打ち、エンタメ要素満載の舞台を作り上げました。

演目は「名古屋心中」。尾張名古屋が繁栄を極めた徳川宗春の時代に起きた心中未遂事件を題材に、千雅さんが脚本・演出・作舞を手がけた新作です。

名古屋のエンタメ界が大集結

これまでの「名古屋をどり」は、伝統的な日本舞踊が中心でしたが、千雅さんは「伝統とエンタメの大集結」を打ち出しました。キャスティングを見ると、名古屋エンタメ界の多彩な顔ぶれが並びます。

・ボイメン本田剛文さんが花魁(おいらん)に!?

まず目を引くのが、地元名古屋のエンタメグループ「BOYS AND MEN」の本田剛文(たかふみ)さん。なんと女方に挑戦して、主役の花魁を演じたのです。千雅さんのもと集中的に稽古に励み、悲しみを湛えた強く美しい女性を見事に演じきりました。

・名古屋出身の名俳優 戸田恵子さんと佃典彦さん

名古屋出身の名俳優、戸田恵子さんと佃典彦さんも登場。心中を図る主人公2人の老後を演じました。軽妙な名古屋弁の掛け合いが笑いを誘いました。

・豪快な殺陣(たて)!「カブキカフェ・ナゴヤ座」の役者たち

レトロな雰囲気が魅力の円頓寺(えんどうじ)商店街。その一角にある芝居小屋、「カブキカフェ・ナゴヤ座」は知る人ぞ知る熱いスポットです。

歌舞伎の所作を取り入れた迫力のステージ、圧巻の殺陣、個性豊かな役者たちを目当てに、全国から熱烈な女性ファンが集まります。

今回の「名古屋心中」では、座長の名古屋山三郎さんを筆頭に6名が出演。強烈なキャラクターで圧倒的なインパクトを残しました。

・大阪のOSK日本歌劇団「故郷に錦を!」

打って変わって豪華けんらんな歌劇団の女性たちも。大阪のOSK日本歌劇団から、名古屋出身者を含む5名が出演。故郷に錦を飾ろうと、本番2週間前から名古屋入りして稽古に打ち込みました。

彼女たちが演じたのは、敵討ちに燃える兄と妹たち。兄役の華月奏(はなづき・そう)さんを中心に、コミカルな掛け合いや俊敏な立ち回りで舞台に華を添えました。

こうした名古屋エンタメ界の多彩な面々と、日本舞踊の踊り手たちのコラボレーションによって、「NEO舞踊劇 名古屋心中」は笑いあり涙ありの感動作に。名古屋市公会堂で2日間にわたって行われた4公演は大盛況となりました。

2時間超の「完全版」を放送!

NHK名古屋では、去年10月15日の公演をテレビ収録し、「新・にっぽんの芸能」(Eテレ・全国)で放送しました。

しかし、オンエアできたのは約20分のハイライト版のみ。これではもったいない!ということで、この度「完全版」の放送が実現しました。

番組冒頭には、約17分のメイキング・ドキュメンタリーも。真剣勝負の稽古、公演の舞台裏、会場のにぎわいなど、必見の映像が満載です。ナレーションは、主役の花魁を演じたBOYS AND MENの本田剛文さん。すてきな語りで番組を盛り上げてくれています。

NEO舞踊劇「名古屋心中」完全版
~第74回 名古屋をどり~

2月21日(火)0:30~2:45(※月曜深夜)

Eテレ中部ブロック(東海北陸7県)

※放送後から1週間、NHKプラスで見逃し配信も!こちらは全国でご覧いただけます。

NHKプラス 東海・北陸プレイリストはこちらから

プロデューサー西川千雅さんの魅力

取材を通じて筆者がもっとも感銘を受けたのは、西川千雅さんのプロデューサーとしてのあり方でした。

千雅さんは、脚本・演出・作舞を手がけただけでなく、イベント全体を取りしきり、その役割は膨大なものでした。

多彩な出演者をそろえたため、稽古の予定を調整するだけでも大変!全キャストがそろったのは公演前日の通し稽古のみというギリギリのスケジュールでした。

何度も稽古に通っていた筆者は、なかなか作品の全体像が見えてこず、正直「これ、本当に仕上がるのだろうか...」とヒヤヒヤしていました。

しかし千雅さんは、いつも穏やかでユーモアたっぷり。出演者を信頼し、裏方のスタッフを信頼し、どんなときも「大丈夫!」とポジティブなのです。そんな千雅さんのもと、関わるすべての人たちが最大の力を発揮し、唯一無二の作品として結実していきました。

今回の「完全版」の放送を通じて、一人でも多くの方に、彼らの作り上げた物語に触れていただけますと幸いです。

筆者

吉田英司 ディレクター(NHK名古屋放送局)

平成11年入局 兵庫県出身
クラシック音楽の番組を長年担当してきました。
名古屋に来て半年、まだあんかけスパは食べてません。
年に3回くらい断食します。