皆さんには、"忘れられない食事"はありますか?
グルメドキュメント「あのとき、何食べた」。
今回は中国・南東部の郷土料理『糖醋排骨(タンツーパイグー)』にまつわるストーリーです。
岐阜県各務原市に住む、中国国籍のコンクリート施工技師・翁飛(おうひ)さん(35)。これまで10年以上にわたり、第二東名高速道路や北陸新幹線の橋りょうなど多くの公共施設を建設してきました。今年4月、その実績と高い技量が認められ、永住と家族の同伴が可能な資格「特定技能2号」の全国初の取得者となっています。
しかし、翁飛さんにとってこれまでの道のりは決して平たんではありませんでした。家族の支えと、故郷の料理に込められた思いとは?
「あのとき、何食べた?」は、中部に住む外国籍や外国にルーツのある方々の"忘れられない一品"を掘り下げるグルメドキュメントです。
味覚や臭覚も刺激するからでしょうか。料理とともに経験した記憶は時間がたっても、色鮮やかなまま残るような気がします。主人公・翁飛さんにとって『糖醋排骨(タンツーパイグー)』がまさにその料理でした。豚のスペアリブを八角など薬膳にも使う香辛料で煮詰め、砂糖に火を加えあめ状にした甘いタレで覆った料理。翁飛さんにとっては故郷の味です。
家族を故郷において日本で生活する、翁飛さんの「あのとき」は11年前。中国にいる家族と電話をつなぎながら同じ『糖醋排骨(タンツーパイグー)』を食べたときです。そのとき、当時4歳の息子・翁鑫(おうじん)くんにかけられた言葉が今も忘れられません。来日1年目、日本語もままならないまま、ひとり必死に土木技術の勉強をしていたときでした。
その後も『糖醋排骨(タンツーパイグー)』を食べるたびにその出来事が鮮明によみがえり、つらいことがあったときも翁飛さんの支えになってきたと言います。
翁飛さんは、岐阜県各務原市の建設会社で働いています。現場で職人を束ねるリーダーです。
今年4月には、これまでの実績と高い技量が認められ、全国初の「特定技能2号」の資格取得者となりました。
しかし、翁飛さんのここまでの道のりは平たんではありませんでした。
12年前まで、故郷の中国・常州市に家族3人で暮らしていた翁飛さん。伝統あるガラス工芸の職人でしたが、暮らしは楽ではなかったと言います。経済発展により食料や住宅などの価格が急激に上昇。その一方、消費者の西洋しこうが高まりガラス工芸の需要は減り続けていたのです。
このままでは努力を続けても、貧しさから抜け出せないと考えた翁飛さん。高い技術を身に着ければ、安定した収入が得られると、家族のため日本の建設業界に飛び込むことを決めたのです。
言葉も通じない外国で、新しい仕事を覚えることは翁飛さんにとって大変な日々でしたが、家族の支えによって今まで頑張ることができたと言います。
「特定技能2号」を取得した今、日本に家族を呼び一緒に住むことが可能になります。現在、妻・静静(じんじん)さんと息子・翁鑫(おうじん)くんのビザを申請中。認可され日本で『糖醋排骨(タンツーパイグー)』を囲む日が来ることを翁飛さんは待ち望んでいます。
- <材料(2~3人分)>
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- 豚のスペアリブ・・・500g
- しょうが・・・1片(薄切り)×2
- 青ネギ・・・適量
- 塩・・・小さじ1
- サラダ油・・・大さじ2
- ☆ホワジャン・・・小さじ2
- ☆月けい樹の葉・・・1枚
- ☆八角・・・1個
- ☆シナモン・・・1本
- ◇ビール・・・350ml
- ◇しょうゆ・・・大さじ1
- ◇みりん・・・大さじ1
- ◇砂糖・・・大さじ2
- 黒酢・・・大さじ3
- <レシピ>
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1)豚のスペアリブをフライパンに入れ、水をひたひたになるまで入れます。
しょうが1片と青ネギ、塩小さじ1を加え、沸騰したらアクを取りながら20分程煮ます。(圧力鍋で5分程でもよい)故郷では下ゆでを省略し、最初から油で炒める方も多いそうですが、翁飛さんはこの下ゆでを大事にしています。
骨のうまみが肉全体にしみわたり、味に深みを加えると言います。2)ゆで汁を捨て、豚のスペアリブを取り出します。
フライパンにサラダ油を熱ししょうが1片を入れ、取り出した肉を加え炒め、途中で☆を加え炒めます。3)肉に焦げ目がついてきたら◇を加えて煮ます。
半分以上煮詰まったら黒酢を加えて煮絡めて火を止めます。
仕上げに刻んだ青ネギを散らして出来上がり。
翁飛さんお手製の「糖醋排骨(タンツーパイグー)をディレクターも頂きました。味は"スパイシーな黒酢酢豚"と言った印象です。翁飛さんのおっしゃるとおり下ゆでとビールが利いてるのか、口の中に複雑なうまみが広がるのを感じました。とてもおいしかったです。きっと日本人が大好きな味ではないでしょうか?
取材の終わり、お土産にと大量の「糖醋排骨(タンツーパイグー)」をタッパーで頂きました。家に帰ってレンジでチンして食べてもやっぱりおいしかったです。