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DNAから見た対州馬 長崎県対馬市で遺伝情報活用して保存へ

  • 2024年03月01日

 

長崎県の離島・対馬にいる対州馬(たいしゅうば)。日本固有の馬である「日本在来馬」の1つです。8種類いる日本在来馬の中でも数が特に少なく、絶滅も危惧されています。対州馬を未来につなげるため、DNAを活用した研究が行われています。対州馬のDNAから何が見えてきたのか、取材しました。

NHK長崎放送局アナウンサー 木花牧雄

遠い昔から対馬で生きる対州馬

対州馬が暮らす対馬

昔から対馬の人々とともに暮らしてきた馬、対州馬。対馬市の天然記念物にも指定されています。

体高は130センチほど。穏やかで人懐っこい性格ですが、歴史的には「元寇」で軍馬として活躍した記録も残る馬です。

カメラにも興味津々

かつては荷物の運搬や農作業など、生活に欠かせない馬として対馬の島民に重宝されていました。

絶滅も危惧される対州馬の現状

1965年には1200頭ほどがいた対州馬。時代の変化とともに農作業などの機械化が進み、役割が少なくなったことから急激に数を減らします。現在は島の内外を合わせても54頭。8種類いる「日本在来馬」の中でも、特に数が少なく、絶滅も危惧されています。

急激に数を減らした対州馬

現在、対州馬の多くが飼育されている目保呂ダム馬事公園(対馬市上県町)です👇

ここで対州馬の保存・活用事業に関わっている吉原知子さんです。

獣医師でもある吉原さん

対州馬の健康管理や研究も行っています。その吉原さんに対州馬の現状を聞きました。

獣医師 吉原知子さん

一般的に品種や野生動物の固有の種などを維持していくために、最低100頭が目安としてよく言われます。やはり今の数では十分ではないと思います。

数が少なくなると、血縁の近い馬同士の交配が起きやすくなります。そのリスクを吉原さんはこう指摘します。

獣医師 吉原知子さん

近親交配のリスク。「近交弱勢」と言ったりしますが、子供が産まれてすぐ死んでしまうとか、繁殖能力が減ってしまうとか、そうした遺伝病のリスクが増えるというのが一般的なリスクになります。

なるべく遠縁の馬を交配するためには、血縁関係を正確に把握する必要があります。吉原さんは、対馬市で確認しているすべての対州馬のDNAを調べました。その方法です👇

① 対州馬から血液やたてがみを採取
② そこからDNAを取り出して分析
③ DNAの情報から血縁関係を把握

さらに、対州馬の遺伝子の解析を進めると、毛色・歩き方・体型といった遺伝が関係する特徴も明らかになってきました。

対州馬の様々な情報がわかるDNA

獣医師 吉原知子さん

遺伝子上で見たときに、いま気をつけて残しておかないといけないところや、気をつけて繁殖にこの馬を使った方がいいということを意識しないと、将来失われる可能性のある遺伝子があります。

対州馬の多様性を残して次の世代へ

多様な対州馬の遺伝子を後世に残していくため、実際に、遺伝子の多様性を考慮した交配が行われています。この馬は雌の「高姫」。いま数が少ない「栗毛」の馬です👇

高姫

16歳の時点で、まだ子どもを産んだことがありませんでした。

吉原さん

子どもを作っていない馬がいると、その馬の遺伝子を引き継いでいくことができなくなります。対州馬は、全頭で50頭くらいの小さな集団ですから、1頭の遺伝子が失われてしまうことは、他の動物よりもインパクトが大きいんですよね。

そして去年7月。16歳と高齢ではありましたが、高姫は無事出産しました。産まれてきたのが「栗太郎」です👇

「鹿毛の父親」と「栗毛の母親」から産まれた栗太郎

見た目は父親譲りの鹿毛ですが、頭数の少ない栗毛の高姫の遺伝子もしっかり引き継いでいます。

左:高姫(母) 右:栗太郎(子)

遺伝情報を活用することで、対州馬の多様性を次の世代につなげています。

対州馬めぐる もう一つの課題

数が少ないことに加えて、対州馬をめぐる課題はもう一つあります。それが「活用の場」です。数を増やした先には、その馬たちをどう活用するかが問われます。

対州馬少年倶楽部のみなさん

対州馬少年倶楽部は、対馬の子どもたちを対象にしている乗馬教室です。乗馬に加えて、厩務作業なども行います。さらに、吉原さんの研究である遺伝型検査の手伝いも行うなど、対州馬に関連する学習を広く行っています。対州馬の未来を考える上で頼もしい存在です。

こうして対州馬に関心を持ち、親しむ子どもたちが対馬にはいます。吉原さんたちは、より多くの子どもたちが対州馬に親しむ機会を作ることで、馬の活用の場を広げようとしています。

小学6年生

大人になっても馬と関わりたいから、将来は馬の調教師になりたい。対州馬をもっと増やして、みんなに知ってもらいたい。

機械化が進んだ今、かつての荷物運びや農作業などの役割を対州馬には期待できません。数を増やしていく中で、活用の場をどう作っていくか。時代に合った対州馬の活用方法を模索しています。

子どもたちに乗馬を教える吉原さん

獣医師 吉原知子さん

対州馬の活躍の場が増えれば、需要が増えて、馬たちが無理なく増えていく状況が生まれると思うので、馬が大好きな子どもたちが馬と遊ぶためにどうするかということを引き続き考えてくれたらいいし、一緒に考えていきたいと思います。

  • 木花牧雄

    NHK長崎放送局アナウンサー

    木花牧雄

    新潟県長岡市出身
    「ぎゅっと!長崎」キャスター
    気象予報士
    専門は古代DNA分析
    ぎゅっと!サイエンスで科学分野を継続取材

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