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秋の使者“あご”(トビウオ)の恵み 長崎・新上五島町

  • 2023年10月31日

九州でだしに使われることが多い「あご(トビウオ)」。長崎県・新上五島町では8月下旬から10月初めにかけて、あご漁の最盛期を迎えます。長崎の食を支える、あごの新たな魅力を探しに行ってきました。

NHK長崎放送局キャスター 西永里花

五島うどんと言えば、あごだし

あごを求めて最初に向かったのは製麺所です。さっそく腹ごしらえ。上五島のソウルフード、五島うどんをいただきます。

今回いただいたのは「地獄炊き」。五島うどんを鍋で炊いて、あごだしのつゆにつけて食べます。

おいしい!つるりとした、うどん。あごだしが濃いです!

透き通ったあごだし

あごは脂肪分や内臓が少ない魚です。そのため、えぐみが少なく、透き通っただしを取ることができます。

新上五島町では、ほかにも、だし巻き卵、おでん、肉じゃがなど様々な料理に利用されています。

調理担当 浜崎洋敬さん

「食材の邪魔をしない、引き立てる、一緒に引き立つみたいな。料理には本当に使いやすくて、なくてはならない感じだと思います」

あごがよく捕れる有川湾

小串漁港

あご漁が盛んな新上五島町の小串漁港を訪ねると、あごの水揚げが行われていました。この会社では、多い日には300箱も捕れたそうです。

8月下旬から10月初めにかけて捕れるあご。地元では「秋の使者」と呼ばれ、水面を飛び跳ねる様子が湾内で見られます。

では、なぜ、上五島であごが多く捕れるんでしょうか?それには、漁場である有川湾が関係しているんです。

山陰地方の沖合で産まれたトビウオ。秋に吹く北東の風によって、日本海を南下し、入り組んだ平戸近海や有川湾に入ってきます。その際、トビウオはだしを取るのにふさわしい15センチ程度の大きさに成長しています。この環境があるからこそ、だしに向いたあごを多くとることができるのです。

炭火のあご焼きを守る夫婦

新上五島町鯨賓館ミュージアム蔵

上五島では遅くとも明治時代にはあごの加工が始まり、だしとして使われていたと言われています。漁の時期には、集落中が、焼いたあごの香ばしい匂いでいっぱいになっていました。しかし今ではめったに見られない光景となりました。

そんな文化を絶やしたくないとあご焼きの生産を続ける夫婦がいます。畑下直(すなお)さんと、なをみさん夫妻です。直さんがとってきたあごを、加工するのがなをみさんの仕事です。昔のやり方そのままに、すべて手作業で行います。

最初は、あごを串に刺す作業です。羽根の付け根あたりに通していきます。

同じ大きさのあごを刺していくと、このあと焼きの工程がうまくいくといいますが…

なをみ「50点です」。思った以上に難しい作業でした。

味を決める焼きの工程は炭で行います。重要なのは強火で短時間で焼くこと。あごが持つうまみを中に閉じ込めることで、コクのあるだしが出るといいます。

1つの串には20匹以上のあごが刺さっています。焦げないように1分以内に魚をひっくり返す作業もかなりの重労働でした。

 

あご焼きの達人であるなをみさん。焼き始めたのは、およそ20年前。夫・直さんとともに加工会社を立ち上げてからのことでした。

畑下なをみ さん
「大変でした。どんなにしたら上手になるかと考えて、ほかの人に聞きながらやっていました。『もうちょっと焼いたほうがいいよー』とか教えて下さる方がいっぱいいたので徐々にうまくできた。ほめていただいた時には嬉しかったです」

畑下さんたちの焼きあご。最近、新たな動きが生まれています。10月から大手だし会社と取引が始まり、そのまま食べてあご本来の味を楽しめる焼きあごが誕生しました。あごの魅力を広く知ってほしいと、挑戦が続いています。
 

畑下直さん
「基本的に手作業なので大量生産は難しいんですよ。できるだけ多くの人に味を知ってもらいたいので、一生懸命できる範囲で広めていけたらと思ってております」

あごの魅力・可能性を広げたい

あごを使った商品は他にも生まれています。それはあごを使ったテリーヌ。肉や魚のすり身と野菜などの具材を固めて作るフランス料理です。

トビウオのミンチに、玉ねぎ、パプリカ、旬の野菜を混ぜてあります。
 

パプリカやきのこがごろごろ入っていて、あごは噛むほどだしが出て、優しくコーティングしてくれています。とてもおいしいです!

このテリーヌを商品化したのは、福田龍(りょう)さんです。ホテルで調理スタッフをしていた福田さん。上五島の食材のおいしさに魅了され1年前から作り始めました。福田さんは、あごなど旬の魚を使って次々に新商品を生み出そうとしています。

福田龍さん
「上五島は魚もおいしいんですけど、野菜も作っていて、おいしいと思っていたんです。それも合わせて魅力として伝えられたらと思って作りました」
「そのまま食べるだけでなく、パスタ、サンドイッチ、サラダ、ほかの料理にも使ってもらえたらなと思っています」

この時期、上五島にやってくる、海のめぐみ、あご。島では今、伝統の味を守り続けながらも、あごの可能性を広げようとしています。

  • 西永 里花

    NHK長崎

    西永 里花

    長野県出身 
    「ぎゅっと!長崎」キャスター
    NHK鹿児島局→長崎局

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