NHK長崎 乗車率92% 「ふたつ星4047」の魅力
- 2023年03月07日
乗車率92% ふたつ星4047の魅力
列車に揺られながらのんびりと旅をする。最近は、効率の良い時間の使い方を「タイパ=タイムパフォーマンス」と言うそうだが、こんな時代だからこそ、のんびりとした旅は貴重だろう。運行開始から半年、長崎と佐賀県の武雄温泉を結ぶ観光列車「ふたつ星4047」が乗車率92%と好調だということで、体験乗車に参加した。
長崎放送局記者 郡義之
“西九州の海めぐり列車”
3月3日、長崎駅の在来線ホームに、白が基調の気動車「ふたつ星4047」が停車していた。去年9月の西九州新幹線開業に合わせて、JR九州が長崎と佐賀の観光振興の一環として運行をスタートした特別急行だ。「ふたつ星4047」の名前は、佐賀と長崎を2つの星に見立て、数字は気動車の形式「キハ40」と「キハ47」からとった。コンセプトが「西九州の海めぐり列車」というだけあって、ルートは、長崎駅発が大村湾沿いを、武雄温泉駅発が有明海沿いを走る。
意匠を凝らした列車
出発前にもかかわらず、ホームはすでに多くの乗客でにぎわっていた。心をウキウキさせていると、扉が開き、早速乗車した。3両編成、87人乗りの車内は、木材がふんだんに使われた落ち着いた雰囲気だ。目を引くのが2両目だ。ラウンジカーになっており、唐草文様を配した色鮮やかな内部には、ソファや窓側に向いたカウンター席があり、長崎・佐賀の美しい風景を楽しむことができる。この日はほぼ満席で、外国人観光客の姿もあった。JR九州によると、運行開始から先月20日までの平均乗車率は92%と人気の高さがうかがえる。
大村湾を満喫
午後3時前に長崎駅を出発。武雄温泉までは約3時間の旅だ。車窓に流れる田園風景。諌早を過ぎるころには、大村湾の海原が目に飛び込んできた。雲一つ無い青空の下でキラキラと輝く海面。車内の乗客たちも「わ~!」と歓声を上げながら、盛んにスマートフォンのシャッターを切る。西九州新幹線の場合は、長崎・武雄温泉間の行程の半分以上がトンネルで、車窓の風景を楽しめない。それだけに「ふたつ星」の存在価値は大きいと言えるかも知れない。
「賞味期限は30秒!」
列車の旅の楽しみのひとつは食だ。ラウンジカーに併設されたビュッフェでは、焼き上がったばかりの洋菓子「スフレ」を味わうことができる。甘い香りが漂い、見た目もおいしそうだ。洋菓子は、長崎市内の菓子店の人気メニューの1つ。
(乗務員)
「ふわふわした食感を楽しんでもらうために、賞味期限は30秒」
私も試食してみたところ、ほどよい甘さと軽い食感でいくらでも食べられると感じた。車窓からの大村湾を眺めながら食べれば、よりいっそう味わいが増す。
地域との交流も
この列車は途中、乗客と地域との交流も売り物になっている。長崎を出発してから約1時間半。停車したのは、長崎県東彼杵町の千綿(ちわた)駅だ。大村湾に面したホームと、レトロな木造駅舎は、「インスタ映えする駅」として、鉄道ファンや若者らに人気のある駅の1つだ。ここでは、地元産の「そのぎ茶」がふるまわれるなど、地元の人たちが乗客たちをもてなした。
「千綿駅の停車がわずか10分しかなかったので、もう少し停車時間が長かったら、
地域の人たちの交流も深まるのに」
この列車に観光客だけでなく、地元の人たちも乗車して頂き、長崎・佐賀の魅力を再発見して欲しい
列車は貴重な観光資源
列車は午後6時前に武雄温泉駅に到着。約3時間の旅はあっという間に終わった。ゆっくりと景色を眺め、沿線地域の魅力に触れることができるのは、列車の旅の醍醐味といってもいい。利用客の減少などから全国各地で次々と鉄路が廃止されているが、こうした鉄路をいかに活用して、観光振興につなげることができるかも大事な要素と言える。「ふたつ星4047」が今後、どんな趣向で地域を盛り上げてくれるのか楽しみだ。