長崎発 人口減少・空き家増 10年住んだらもらえる家?
- 2023年02月16日

坂の町・長崎市で課題となっているのが斜面地からの人口流出です。
これに伴って、空き家も増加。
空き家は放っておくと倒壊などの危険性があるほか、ゴミの不法投棄の現場になってしまうおそれもあります。
増える空き家を活用しようと、長崎市の不動産会社が新たな取り組みを始めました。
それも、「10年住んだらその家がもらえる」・・・?
NHK長崎放送局 小島萌衣
200m階段でも見学者は多い??
去年10月、長崎市内である住宅のお披露目会が開かれました。

畳をフローリングにするなど、築53年の空き家をリノベーションしたこの物件。
あちこちに元の素材を生かしてリノベーションされています。
アクセスは、さすが「坂の町」と言われるだけある長崎市。
下のバス通りと、上にあるバス通りまでそれぞれ階段でおよそ200メートル。
段数で言えばおよそ150段ずつ。
なかなかハードな坂の中腹に位置しています。

それでも多くの人が訪れている理由。
なんとこの物件、広さおよそ80平方メートルの3LDK。
そして戸建てなのに、家賃は月々2万9000円。
さらに!
賃貸で10年住んだあと、そのままもらうこともできるんです!。

桃田さん
「賃貸住宅に10年住んでいただいた後に贈与するという仕組みですが、賃貸でそのまま住んでいただいてもいいし、贈与として受けていただいてもいいという仕組みになっています」。
つまり、賃貸で10年住んだ後、そのまま賃貸で住み続けるか、無償で譲り受けるか選ぶことができます。
子育て支援につなげたい
この取り組みを行っているのは地元の不動産会社です。

ターゲットにしているのは、若い世代や子育て世帯。
取り組みを通して、子育て支援につながればと考えています。

初めてリノベーションしたところを見に来ましたが、築50年の家がすごくきれいになった感じがします。今からお金がかかると思うので、10年後に家をいただけるのであれば、すごくいいなと思います。

桃田さん
子育て世代の方の10年後はたぶんお子さんが大きくなられて大学生くらいかなというのを想定しているが、そうなると学費もいろいろと必要になってくるので、その時に家賃がないというところがいいのかな。
不動産会社なのに
自前の“リノベーション部門”
この取り組みの利益率はほかの物件と比べると高くありません。
それでもこうした取り組みができる背景に、この会社ならではの強みがありました。
それが、自前のリノベーション部門があることです。

一般的に、不動産会社は物件のリノベーションをするのに専門の業者に委託します。
ところが、この会社はそれを自前でまかなえるため、コストが抑えられます。
会社のリノベーション部門では、自社で買い取った物件を扱う以外にも、施主からの依頼も受け付けています。
また、買い取った空き家は、収納を増やしたり、元の作りを生かしたヴィンテージ風の住宅にしたりするなど、リノベーションの自由度が高くなるといいます。

泉田さん
(リノベーション担当)。
正直大変なところもあります。家がまっすぐ立ってないし、水平もないし。その辺からずっと調整したり、取れない柱とかもあるし。おもしろいですね、できあがってくればですね。

桃田さん
自社でやることで、大工さんに“こういう風にして欲しい”というのが出せると思うんですよね。そうなると、自社らしいリノベーションができるというのが1番いいところだと思います。

空き家対策から生まれた「住んだらもらえる」住宅。
この会社では、自社のこうした取り組みを1つの事例として、ほかの不動産業者も巻き込んで空き家の活用につなげたいと考えています。

長崎は空き家が多いからですね、もったいないじゃないですか。他社さんにも見ていただいて、弊社とはまた違うスタイルの贈与型賃貸住宅とかリノベーションとか、空き家のリノベーションはできると思うので、それはしていただきたいなと思います。
ちなみに、ご紹介した家は入居者が決まったそうですが、会社では新たに同様の物件を手がけているということです。
もしも空き家を継いでしまったら・・・
ご紹介したのは長崎市内で行われている取り組みの1つです。
実は空き家問題は身近にあります。
私たちの実家や祖父母の家など、身近な住宅も、誰も住まない状況になってしまえば空き家になってしまいます。
空き家について、長崎市に最も相談が多いのは倒壊や崩壊の危険性についてです。
また、ゴミの不法投棄の現場になってしまうおそれがあるほか、人が住んでいないと防犯性が下がったり、不法侵入などで火災が発生したりする可能性もあります。
では、空き家を増やさないためにはどうしたらいいのでしょうか?
長崎市によりますと、基本的に家は個人の持ちものなので、まずは、持ち主が責任を持って空き家にしないという意識が大切だと指摘しています。
人生の終活という考え方がありますが、「家の終活」についても考えてみる必要があるのかもしれません。
また、空き家をどうすればいいか、困った場合には行政や地元の不動産会社に相談してみるのも1つの手だと思います。
空き家として放置せず、何かしらの行動に移すことが、空き家を増やさないための1歩になるのではないでしょうか。
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