長崎で転身! 水上恒司さん 高校球児が俳優になったワケ
- 2023年01月30日
長崎で高校生活を過ごし、ことし春放送のNHK「藤子・F・不二雄 SF短編ドラマ」 に出演する俳優の水上恒司(みずかみ こうし)さんです。創成館高等学校の野球部で副キャプテンを務めた経験や野球部引退後に始めた演劇体験について聞きました。
(長崎放送局 報道カメラマン 小島陽子)
長崎は第二の故郷
新年あけましておめでとうございます。水上恒司でございます。長崎のことは僕は第二の故郷ぐらいに思っているので、お世話になった母校も含めて、何か長崎に貢献できることがあればいいなって思っているので。それがどういうタイミングで、どういうことになるのかまだわかりませんけれども、もうちょっと大きくなって帰ろうと思ってるので、もう少々お待ちください。今後とも応援のほどよろしくお願いいたします。
「(ことしの目標は)しなやかでやわらか~い身体を作る」。ストレッチでやわらかくしようかなと。やっぱり役者は体が資本で、自分自身のために生きていると、結構役に活きたりするので、体作りからまずは見直そうかなと。ぐにゃぐにゃにしようかなと思います。
高校進学 福岡から長崎へ
当時は、本当に野球をしにいくっていう認識だけだったので、長崎の土地に行くことの楽しみとか印象はあまりなかったです。(長崎の方言は)自分のことを「おい」、あなたのことを「わい」って言うんですけど。方言が結構強いので最初の1週間ぐらいは、長崎のクラスメートが何言ってるかあまりわからなかったです。
僕、小学校、中学校、高校の中で、同窓会に行くとしたら高校に行きたいんですよね。高校3年間で、先生方もそうですし、出会えた仲間たちもそうですし、やってきたことも含めてすごく成長させてもらったなっていう。僕は男子も女子も仲が良かった認識なので、わからないです、本当に聞いてみたら「いやお前のこと嫌い」って言われるかもしれないですけど…(笑)。そのときに出会えたことがすごくよかったなと思います。
強豪校 野球部の副キャプテンに
野球部時代を超える身体的辛さはないと思うので、あの時の経験があるから、多少きついことでも乗り越えていける、なんとかやり過ごせるっていう自信になったかなと思います。野球部で経験した、「(自分は)組織の中の一員、歯車にしか過ぎない、ねじかもしれない」という感覚。僕の俳優のやり方は、自分ありきのチームばかりにいたらちょっと違ったと思います。仕事や何かの目的に向かっていくときに、やっぱりひとりではなくて、いろんな人間がいて。その中で支えられたり、僕も支えていたり、役割・内容・量は違えど、その中の「一員にしか過ぎない」っていう感覚は、あの部員120人の中で野球をやれたことがすごく大きいと思います。
舞台で感じた“俳優になりたい”
野球部を引退した直後、先生に「演劇に興味がないか」っていうことをポロッと言われまして。そのときは本当に俳優になりたいとは思っていなかったんですけど、先生に応えたいっていう思いで「いいですよ」と。
俳優になりたいという気持ちが芽生えたのは、演劇の県大会ですね。諌早文化会館でした。洋子ちゃんっていう女の子が主人公なんですけど、僕の役は洋子ちゃんのいとこの正一。舞台は10時2分、10時5分とかに始まって、最後は11時2分に原爆が落ちた瞬間で幕が下りていく。
われわれの演目が終わって、キャストだけで幕の前に立って、審査員の先生方から講評いただく際に、照明で映っているほこりを見ながら、「俳優になりたいなぁ、やりたいなぁ」と思いました。
“風化させない” 被爆地への思い
僕は親族が広島にいたり、結果的に高校で長崎に行ったりと、被爆地との縁があると思っていて。風化させてはいけないと思いつつも、やっぱり時代として若い世代、僕よりも下の子たちは、原爆がいつ落ちて、何時に落ちて、何回落ちてというのを、放っておくとやっぱり忘れてしまうものだと思うので。少しでも忘れていく速度を遅くするために、僕は個人的にちょっとだけ発信したりしています。
藤子・F・不二雄が描く人間性
(藤子・F・不二雄 SF短編ドラマでは)「鳥留梨男」(とりとめ・なしお)っていう役名なんですけども、楽しかったですね。藤子・F・不二雄さんの作品って、昭和を生きた人間たちの、熱い、でもドロッとしていない人間性がいいなと思うんです。人として正しいというか、生命として正しいというか。藤子・F・不二雄さんも昭和を生きた方ですし、その方から生み出された人物キャラクターたちってやっぱりおもしろいです。
取材後記
インタビューが始まる前、最初に話題になったのはカステラの切れ端でした。水上さんは「安く売られているカステラの切れ端が好き」と話していて、意外な一面に場の雰囲気が和みました。水上さんは、インタビュー中真剣な表情で質問に答えていましたが、高校時代の写真や動画を見ているときに笑いながら「若いな~」と懐かしそうにしている表情が印象的でした。水上さんが「もうちょっと大きくなって」長崎に帰ってくるのが楽しみです。