長崎の海と漁業者を救う新ビジネスに!ウニ養殖の専門家が来崎
- 2023年01月26日
橘湾のウニ蓄養は独特!?

前回からつづく
橘湾の磯焼け対策や漁業活性化などのため、雲仙市・京泊漁港で始まったムラサキウニの蓄養。

しかし、カゴに入れたウニが次々と死んでしまい、漁協の井上幸宣組合長は専門家のアドバイスを求めていました(あなたのお困りごとも募集中)。

そこで、じげ×サポでは参考になる先進例を調査。全国の漁協や企業などの例をまとめると「ある傾向」が見えてきました。

これは、ウニを養殖・蓄養している「環境」によって色分けした地図です。青色は京泊漁港と同じ 海上 、オレンジは水槽など 陸上 で育てているところ。全国の約8割が陸上でした。

同じ長崎県でも、新上五島町ではアカウニを陸上の水槽で養殖しています。水槽を使うことで、水温を管理しやすいといった利点があるからです。

一方、岩手県大船渡市ではムラサキウニを 海上 で蓄養しています。ただ、以前は京泊漁港のようにカゴに入れて育てていましたが、今はより自然に近い環境の海の浅瀬に放って育てています。

河野早杜
京泊漁港と同じ「ムラサキウニ」を「カゴ」に入れて「海上」で蓄養している例は見つかりませんでした。そこで…
“ウニ養殖のパイオニア”長崎へ
じげ✕サポでは、京泊漁港のやり方を検証してもらうため、研究者を長崎に招きました!

ウニ養殖のパイオニア と呼ばれる神奈川県水産技術センターの主任研究員・臼井一茂さんです。8年前からウニの養殖を研究しています。

臼井さんは2017年、全国で初めて野菜だけでウニを育てることに成功。今では、各地の漁業者などから相談を受けたり指導を行ったりしているそうです。

臼井一茂さん
ぜひ長崎でも、ウニの蓄養を大規模にやれるようお教えしたい。

早速、じげもんの待つ京泊漁港を訪れた臼井さん。井上組合長に蓄養のやり方を見せてもらいました。

ここでも、野菜でウニを育てています。しかし3日前に与えた白菜が食べられず残っていました。なぜ食べないのか?臼井さんが指摘したのは…

臼井一茂さん
ウニの口は体の下側についているので、野菜を上に乗せても食べられないんです。エサを指ぐらいの幅に切って与えて下さい。
臼井さんの研究所では、キャベツを細長く切って与えています。

するとウニはトゲで餌をとらえ、口元に運んで食べるのだといいます。

もう一つ、臼井さんが指摘したのは「陸にあげる時間を最小限」にすること。ムラサキウニは温度変化に弱いため、寒い日はエサやりを中止するよう助言しました。

臼井一茂さん
外気で冷えて死んでしまう可能性がある。生きていたとしてもダメージを治すために身が太らない。

井上組合長
ウニって意外とデリケートなんですね…
さらにカゴの形状についても「網目が細くてウニがつかんでいられない」と指摘。

カゴの側面にもつかまれるようにしないと、ウニが密集してぶつかったり、エサをうまく捕えられなかったりするといいます。
ウニ蓄養を必ず成功させたい!
臼井さんからの指摘を受けて、井上組合長はあることを思いつきました。

カゴにコンテナを入れれば、ウニが側面につかまる足がかりになると考えたのです。

臼井一茂さん
これはいい!当面の工夫は、コンテナを入れることとエサの細切りでいいと思います。
改善すべきポイントがわかった井上組合長。「必ずウニの蓄養を成功させる」との思いを新たにしていました。

井上組合長
ウニ蓄養に成功し、ビジネスとして漁業者の皆さんが豊かな生活ができるような組合にしたい。
この5か月後、スタッフが蓄養の現場を訪れると大きな進展が…

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