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NHK長崎 スナネコの赤ちゃんデビュー!でも飼わないで

  • 2022年12月23日

大きな耳と横長の愛らしい顔から「砂漠の天使」とも呼ばれるスナネコ。
西海市の動植物園ではことし、2匹の赤ちゃんが生まれ、12月から公開が始まっています。
その一方で、愛らしさゆえの受難に見舞われかねない現実があります。

                              NHK長崎放送局 小島萌衣

スナネコの赤ちゃん公開中!

西海市の動植物園「長崎バイオパーク」では、12月に2匹のスナネコの赤ちゃんが公開されました。

スナネコの赤ちゃんたち

じゃれ合ったり、かけまわったり、元気いっぱいです。

じゃれる赤ちゃんたち
ネコパンチを繰り隙を伺う
母親に甘える赤ちゃん

外の世界にも興味津々です。

来園者を見つめる赤ちゃんスナネコ

人気者の親スナネコに待望の子ネコたち

2匹の母親は「ハディーヤ」。
去年、栃木県にある動物園「那須どうぶつ王国」からやってきました。

ハディーヤ

父親は「マフ」。
同じく去年、兵庫県の「神戸どうぶつ王国」からやってきました。

マフ

ともに1歳の2匹は、繁殖目的でいっしょに過ごす中で、ことし6月ごろから交尾行動が確認できていたといいます。

1匹目が生まれた後(撮影:長崎バイオパーク)
2匹の世話をするハディーヤ(撮影:長崎バイオパーク)

そして、ことし10月、待望の赤ちゃんが2匹生まれました。

すくすく成長

生まれたときは体長が10センチほどだった赤ちゃんたちはすくすくと成長。
今では体長40センチほどの母「ハディーヤ」の半分くらいにまでなりました。


子ネコたちの成長に飼育担当者もほっとしています。

飼育担当者

動物の初産は飼育も含めうまくいくことが難しいので、少し心配でしたが、母ネコのハディーヤがしっかり育ててくれた。親子関係なども見てほしい。

動植物園の来園者もスナネコの赤ちゃんたちの愛らしい姿を楽しんでいました。

来園者

(母ネコの)ハディーヤちゃんが赤ちゃんを産んだと聞いて、初日にいちもくさんに来たのでスナネコ舎まで10分で着きました。
かわいいですね、とにかくかわいいですね。

来園者

めちゃくちゃかわいかった!2匹で遊んでるみたいな追いかけっこをしていて、かわいかった。

来園者

じゃれてるところがかわいいです。スナネコの赤ちゃんがきょう公開と聞いてスナネコ舎までのぼって来ました。

かわいさゆえの問題も・・・

かわいいスナネコたち。
ところが、かわいさゆえの問題もあるといいます。 

それは、スナネコをペットとして飼いたいと考える人が増えていることです。

野生生物の取り引きを監視するWWFジャパンなどによりますと、スナネコは2020年までの2年間に最大で102匹が日本に輸入され、そのほとんどは、野生から捕獲されたものだということです。

こうした需要は密猟や乱獲につながる可能性があります。
その一例が、コツメカワウソです。

コツメカワウソ(画像提供:WWFジャパン)

コツメカワウソはペットなどとして日本で人気を集めましたが、人気を受けて密猟などが進み、さらに、生息地が破壊されたりしたこともあり、コツメカワウソの生息数は2019年までの30年間で30%以上減っていると指摘されるまでになりました。

また、密輸が大きな問題となり、2019年に開かれたワシントン条約の締約国会議で商業目的での国際取り引きが原則禁止となりました。

スナネコでも同じような事態になってしまうことが危惧されています。

そもそもですが、スナネコは家庭で飼うのに適さない野生の動物だと指摘されています。

もともと砂漠地帯に生息しているため、寒さや高い湿度が苦手で温度や湿度の管理に光熱費がかかり、一般家庭で飼うのには向いていません。

また、鋭い牙がある肉食獣で主食は生肉です。
気性が荒く、人にもなつかないことなどから、長崎バイオパークでも飼育員が直接触れずに餌やりや掃除を行う間接飼育を行っているということです。

飼育担当者は、スナネコは家庭で飼われても幸せになれないと指摘しています。

飼育担当者

かわいくて飼えそうと思ってしまうが、野生動物なので一般のご家庭で飼う人が増えると乱獲や密猟問題になってきてしまう。ご家庭では飼わずに、長崎バイオパークに見に来てほしい。コツメカワウソはそれで密猟とか乱獲がすごく深刻になってしまったので、そういうことが2度と起きないように、頭の隅に置いておいてほしい。

◇取材後記◇

長崎バイオパークで見た実際のスナネコや赤ちゃんたちは、さすが「砂漠の天使」といわれるだけあってとてもかわいらしく、取材で行ったにもかかわらず、いつまでも見ていたい・・・と思ってしまいました。

その一方で、スナネコが口を開いたときに見えた牙は鋭く長かったのが印象的です。
エサも生の肉を与えていて、小さくても肉食獣なのだと思い知らされました。

世界を見渡せば、いろいろな動物が人間のエゴなどから絶滅の危機に陥っています。
「かわいい」と思うその気持ちを「飼いたい」「手元に置きたい」という気持ちと直結させずに、動物のことを考える思いやりの方向に向けてみてはいかがでしょうか?

  • 小島萌衣

    NHK長崎放送局 記者

    小島萌衣

    2015年入局
    沖縄局、佐世保支局を経て 現在は長崎市政や原爆・平和関連の取材を担当

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