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長崎の墓の価格はなぜ高い?

  • 2022年05月26日
    長崎市内 傾斜地に並ぶ墓と住宅

    長崎に着任して3年近く。常々感じていた疑問がありました。“坂のまち”といわれる長崎市内では、傾斜地の低いところから高いところまでずらりとたくさんの墓が並ぶ風景が見られます。「お年寄りには墓参りが大変じゃないだろうか?」また、墓石が立派なものが多い印象がありました。「坂をのぼったあと、手入れも大変なのでは?」墓の取材をはじめてから10年余り。長崎に来てからはなかなか取材する機会がありませんでしたが、長崎の墓をめぐる疑問を解こうと取材を始めました。

    長崎放送局 記者 宮本知幸

    長崎の墓の特徴

    まずは、長崎の墓の概要から。全国およそ300社の石材店で作る「全国優良石材店の会」=全優石という団体では、毎年、墓石を購入した人を対象に、建てた墓の形や購入価格、墓石選びで重視した点などを聞くアンケート調査を行っています。最新の調査は、去年3月から7月にかけて、墓を購入した人を対象に行い2100人あまりから回答を得ました。

    調査で読み解ける長崎県の墓の特徴は何でしょうか?まずは建てた墓の形。伝統的な和型34.4%、シンプルな洋型34.4%、デザイン墓24.6%というものでした。「洋型?デザイン墓?」と疑問に思われる方も多いかも知れません。伝統的な和型の墓は、縦に長い石の形。昔ながらのお墓です。洋墓はシンプルな横に長い墓の形です。最近、霊園でよく見かけるという人も多いのではないでしょうか?デザイン墓は、彫刻などが施された墓のことです。

    (表-1 購入された墓石のデザイン)

      伝統的な和型の墓  シンプルな洋型     デザイン墓  
    全国 31.3% 47.6% 15.4%
    長崎 34.4%  34.4% 24.6%
    左:洋型の墓、右:和型の墓

    全国での割合は、伝統的な和型31.3%、シンプルな洋型47.6%、デザイン墓15.4%となっています。長崎では和型がやや多く、デザイン墓が10ポイントほど高い一方、シンプルな洋型が少ないことがわかります。ただ、和型が減少傾向の一方、洋型・デザイン墓が増加傾向という大きなトレンドは共通しているようです。

    では価格面はどうでしょうか?かなり地域差があることがわかります。
    <墓石の価格>※全優石調べ

    全国平均  160.1万円(前年比 +3.1万円)
    ブロック別・九州 198.0万円(前年比 -17.1万円)

    九州は前の年より平均価格が下がっているとはいえ、ブロック別では全国1位です。ちなみに、2位は四国の179.7万円。ブロック別で最も価格が低いのは北海道の130.3万円でした。そして、都道府県別で見ると、金額が高い順に見ると九州の5県が10位以内に入っていることがわかります。

    <2021年の都道府県別 墓石の価格>
    ①新潟  241.7万円
    ③佐賀  232.4万円
    ⑤熊本  225.0万円
    ⑥福岡  223.5万円
    ⑦長崎  213.5万円
    ⑨宮崎  182.7万円
    (最も低いのは 岩手100.7万円)

    <2020年の都道府県別 墓石の価格>
    実は前の年の順位を見ても九州・沖縄が上位を占めています。
    ①福岡  278.6万円
    ③長崎  225.6万円
    ⑤佐賀  212.5万円
    ⑦沖縄  185.0万円
    (最も低いのは 島根108.3万円)
    ※全優石調べ 

    年によって平均価格や順位の変動はありますが、団体によりますと2012年以降の10年間、一貫して全国の平均価格を上回っているのは、千葉、福岡、そして長崎だそうです。総じて長崎県は価格が高めだとわかります。では、なぜ長崎の墓石は高いのでしょうか?長崎県内の墓事情に詳しい方に聞きました。

    長崎の墓 なぜ高い?

    石材店 松田保社長

    話をうかがったのは、佐世保市の石材店の社長、松田保さん。10代から業界に入り、若い頃は長崎市内で修行を積むなど、この道40年以上の経験があります。また、現在、全優石の副会長を務め、長崎県石材加工組合連合会の会長も務めていました。県内の墓事情に詳しい松田さんに長崎の墓はなぜ高いか、率直に聞いてみました。

    松田社長

    そもそもお墓の大きさが違うんですよ。全国的にいうと九州は他の地域に比べると総じて大きくて、長崎・佐賀・熊本あたり、特に長崎あたりは九州でもまだ大きい方なんです。

    では、なぜ墓が大きいのでしょうか?松田さんは、長崎をはじめ九州の墓の構造の特徴を説明してくれました。ポイントは、墓で遺骨を納める「カロート」=納骨室でした。地域によっては、カロートは半地下に作られるということですが、長崎などは違うと言います。

    墓石下部の扉の奥が地上にあるカロート=納骨室部分
    松田社長

    地上に納骨室がある。地下カロートではないということです。地上に納骨部分がある形というのは、どうしても大きくなる。その分、材料(石)をたくさん使うことになります。

    また、特に長崎市は墓にかかる価格が高くなる理由があるんだとか。それは“坂のまち”長崎特有の事情もありました。

    松田社長

    特に長崎市だと傾斜地で、労力(がかかる)。運ぶだけでも、それはもう平坦な佐賀とかほかの地域から比べると、コストは全く違うと思いますよ。

    松田さんが長崎市内で修行をしていた40年ほど前には、砂やセメントといった資材は専門の業者の馬に乗せて坂道をのぼり、墓石は人が担いで上がったそうです。

    長崎は墓建立・維持にお金がかかるのか?

    では、続いての疑問。長崎で墓を建て、維持しようとすると、全国トップレベルでお金がかかってしまうんでしょうか?実はそうでもないようです。ケースバイケースではありますが、一般的に墓を建て維持するためにかかるお金は以下のようになります。

     墓にかかるお金=墓石の価格(施工費等含む)+永代使用料+管理費

    墓石の価格はここまで触れてきたとおりで、管理費は、共用の参道や水道施設などの管理のため霊園・寺などに支払う管理費用。では、永代使用料って何でしょうか?これは、墓を建てる土地を使用するための料金です。いわば“土地使用料”というわけです。購入費用ではなく、あくまで使用料金です。そして、土地の使用料と考えると「地方と都市部では違うだろうな」と想像はつきます。松田さんによると、東京は特に高く、都内のある霊園では1000万円単位だと言います。寺の中の墓地を持つ場合、何百万円単位だそうです。長崎県ではどうでしょうか?

    松田社長

    当然、(地域や墓地によって)まったくそれぞれだと思うんですが、4平方メートル(2m×2m)で50から60万っていうのは普通ではないかと思います。高いところは100万円でしょうし。もし安いところであれば、まあ40万円とか、30万円とかかもしれませんけど。

    やはり、都市部、特に東京と比べると永代使用料にかなりの差があるとわかります。しかし、これまで見てきた墓の敷地で4平方メートルというのは、かなり広い印象が…。

    松田社長

    今はもう大きいですよ。1.5m×2mの3平方メートルとか、ここらへんでも1m×1mなんてのもあるし。2m×2mの4平方メートルは広いです。

    ただ、一方で「今は大きい」ということは、これまでは4平方メートルという広さは、長崎ではそれほど違和感がない広さということ。近年、小型化が進んでいるとはいえ、墓を建てる面積が大きく、墓石そのものも大きいのがスタンダードだったようです。松田さんは、特に長崎市では墓作りに対して熱心だと言います。

    松田社長

    長崎市、島原半島、諫早市あたりの方がお金はかけているかもしれませんね。こちら(県北部)よりも。特に長崎市の場合は、もともと非常に熱心ですね。お墓で花火を上げたりとか。長崎県の中でも長崎市は熱心だから、ちょっとだけお墓に隣より見栄えよくとか、傾向はもしかしたらあったかも知れません。

    長崎市 墓と人の距離

    それで、ここで当初から感じていた疑問です。坂道の多い長崎市では墓参りは大変なのではないだろうか?特に、最近は人口流出が顕著で高齢者の割合が増える中、お年寄りにとって墓参りは大変な負担では?

    松田社長

    長崎市の人は熱心ですよ。まだまだ。きれいにしているじゃないですか。特に寺町界隈のお墓はきれいにお掃除して。お参りしているじゃないですか。お墓参りをせんといかんという文化は長崎市の人たちは間違いなく強いと思いますよ。じゃないとあんな風にきれいになってないと思います。

    そして、松田さんは、長崎の人たちが墓を大切にする、その背景について「墓との距離感」を指摘します。

    松田社長

    特に、寺町界隈お住まいになっていたら、住宅とお墓が入り交じっている。生活道路になっていますからね。その点でもきれいになっているということはあるかもしれませんね

    松田さんは、長崎市での“家と墓の近さ”が墓を大切にする心につながっているのではないかといいます。これを聞いていて私が思い出したのは、以前聞いた別の指摘でした。「長崎はお隣さんみたいな感じで墓地が隣にあって、住民は墓・霊園にすごく親しみを感じているのではないか」というもの。言い換えれば「生者と死者の距離の近さ」があるということかなと思います。

    これについて、松田さんは「近い」と同意してくれた上で、長崎市の独自性を示す例として、墓参りで花火をすることやお盆の行事「精霊流し」といった長崎独特の伝統を挙げてくれました。また、松田さんは「長崎市は中規模程度の地方都市の中で冠婚葬祭について熱心な街だと思っています。その熱心さが今でも伝統や風習が存続されている理由かなと思います」と付け加えてくれました。

    長崎市の人たちは、もしかしたらほかの地域に比べて、亡くなった人たちやお墓に対して、より親しみを感じているのかもしれません。

    長崎市内 住宅街にある墓

    墓参りが難しくなったときは

    とは言っても、今後も人口減少や高齢化が進み、高齢者が坂の上などの墓参りを行うのが大変になっていったり、県外に出てしまった人は墓参りが難しくなっていたりするのは、長崎もほかの地域と同様です。墓参りが難しくなったとき、どうれすればいいんでしょうか?

    松田社長

    お墓参り代行サービスというのがありますね。私どももご依頼があればやっておりますし。代行してお墓参りをしようということ。あとは今、お墓の改葬が増えています。

    松田さんは「墓参り代行サービス」と「改葬」という方法を教えてくれました。まず、「お墓参り代行サービス」は、依頼主に代わり、墓参りや墓の掃除や手入れなどを行ってくれるサービスです。石材店などで行ってくれます。また、「改葬」は、いわば“墓の引っ越し”です。所定の手続きを行って、今、埋葬されているところからほかの霊園などに移すものです。実は、長崎市や佐世保市などのホームページでも「改葬」の手続きについて説明しているので、関心のある方は一度、参考にしてみるのもいいかもしれません。

    長崎県北部の墓

    松田さんにお話をうかがったのは、佐々町にある会社の墓石の展示場でした。最後に県北部の特徴的な墓を紹介してもらいました。

    平戸段

    こちらの写真。高さ3.5メートルほどの墓。松田さんによると、県北部の墓の特徴を備えていて、「平戸段」と呼ばれているそうです。こちらの写真の墓は、その高級デザインで、価格は700万円。庵治石や大島石と並んで、国産で高級とされる天山石が使用されています。笠の部分の四方がわらびのように見えることから、「蕨手笠」と呼ばれているそうです。最近は洋型や新たなデザインの墓石の需要が高まっているほか、「蕨手笠」などの制作にはコストがかかるため、こうした伝統的な墓を建立する人は少なくなっているそうです。

    ステンドグラスの墓

    そして、こちらはステンドグラスの入った墓石。松田さんによると、カトリック信者の方が県北部、特に,松浦半島の海沿いに多くいて親しみやすいことや、仏教の方でも1つのデザインとして購入されるため、人気があるそうです。

    取材後記

    久しぶりに墓を取材し、記事を書いてみると、やはり一筋縄ではいかないなと感じました。それぞれの地方にそれぞれの形、習わし、考え方があり、当然のことながら、断定的なことはなかなか言いがたいな、ということを改めて感じました。一方で、取材を通して長崎の墓の特徴とその背景が少し垣間見えたと感じました。

    ここで1つ申し添えると、今回記事を書くにあたって、メインのテーマは「墓石」に絞りました。ご存じの通り埋葬については多様化が進み、樹木の周りに遺骨を埋葬する「樹木葬」や屋内の施設などに収蔵する「納骨堂」などを選ぶ人が多くなっています。今回は、長崎でやはり墓石の存在が気になったため、テーマを絞りました。今後、「樹木葬」や「納骨堂」について取材も進めてみたいと思っています。

     

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