被爆地長崎から”ジャパネットたかた”創業者に聞くウクライナ
- 2022年04月26日
長崎放送局 記者 小島萌衣
平和にはすごい関心がある
ウクライナからは激しい戦闘と凄惨な状況が連日伝えられ、核兵器が使用される脅威も取り沙汰されています。
テレビ通販「ジャパネットたかた」の創業者、髙田明さんは長崎県外ではあまり知られていませんが、平和問題の発信に熱心に取り組む「もうひとつの顔」があります。
インタビューに応じた髙田さんが開口一番、口にしたのは
”率直な気持ち”でした。
この取材を受けるにあたり、お詫びしたいのは、戦後77年という中で、平和活動をしている方が長崎と広島を中心にたくさんいらっしゃる。僕自身がそうした平和活動に関わっているわけではないので、私が平和発信をしてよいのかどうかとも思います。
でも平和にはすごく関心があるので、取材を受けさせてもらいました
一刻も早く戦争を止めて欲しい
ウクライナ情勢についてどう思いますか?
この問いに対し髙田さんは、少し苦しそうな表情を見せながら次のように答えました。
戦闘が早く終わって欲しいですね。これ以上の犠牲は、戦闘が1日延びるだけで何百人という人が亡くなっていく。どれだけの人が亡くなっていくんだろうと、そこの部分を本気で、考えて欲しいと思います。さみしくなります。
僕は、プーチンさんがやってることは本当に戦争犯罪だと思います。首都キーウはきれいな町でしょう。それが今、全部破壊されてる姿を見たら、一刻も早く戦争を止めて欲しいと思います。
日本そして我々自身も、微力でも努力していかなきゃならないんじゃと思います
だんだん平和の尊さを感じるように
髙田さんはいつから”平和の問題”を
考えるようになったのでしょうか?
髙田さんは年齢を重ねるにつれて、意識が高まってきたと言います。
(平和の問題について)ずっと考えてきたかと言えば、答えはNOです。もっと若いときから平和の問題に関心を持っていくべきだったと本当に思います。
やっぱり25歳くらいでビジネスの世界に入って、だんだん30代、40代となった時に本当に平和の尊さを感じ、関心を持つようになりました
平和教育を本気でやるべき
それでは、平和の実現に向けて何が求められますか?
髙田さんが繰り返し強調したのは”平和教育”でした。
日本は”平和教育”を本気でやらなきゃいけない。「学校の教科書で習っている」と国は言うかもしれない。
でも長崎・広島には、合わせて50万人の”原爆関連死”の方がいる。
平和教育には子ども・お父さん・お母さんが参加する。戦争の歴史とか悲惨さ、核兵器の怖さを、小さい頃から教育していく。
たとえば選挙について、自分の1票がどれだけ政治を変えて、平和に寄与するかというところまで考えていくべきだと僕は思う。”平和教育”を本気で考えていくということが必要だ
愛と平和と一生懸命
髙田さんが自らの平和の考えを実践してきた場所があります。髙田さんは2020年の初めまで3年間、サッカーJ2「V・ファーレン長崎」の社長を務め、チームの活動コンセプトに「愛と平和と一生懸命」を掲げました。
スポーツのチームにどうして”愛と平和と一生懸命”のコンセプトを掲げたのですか?
お叱りを受ける場合もあるが、スポーツは勝たなきゃいけないが、勝つことが最終目的じゃない。スポーツは平和を大切にして人間の心を平和にするための手段だと思う。
僕が最近、ツイッターで『愛と平和と一生懸命』ということばをつぶやいたら「社長、愛と平和と一生懸命やったらサッカーなんか勝てないぞ」という意見も半分あった。
でも、僕はそのときに、そういう意見も真摯に受け止めるけど、『愛と平和と一生懸命』というのはどういうことかというのを分かってほしいと思った。
もっともっと、サッカーにしてもバスケットにしても、いろんなプロスポーツは目指すべき目標を掲げていかないと。ただ勝ち負けだけじゃ面白くない
「V・ファーレン長崎」は「愛と平和と一生懸命」を
平和祈念活動のコンセプトに被爆地の思いを発信すべく、平和活動を行ったり、原爆が投下された8月9日前後の試合では、平和の象徴ハトなどをあしらったユニフォームを着用しています。
「核共有」は攻撃ターゲットになる
ウクライナ情勢をきっかけに日本国内では核軍縮に逆風が吹いています。与野党の一部では「核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず」の非核三原則を議論することをタブー視せず、アメリカの核兵器を共有する「核共有」を議論しようという声をあげました。
「核共有」の議論についてはどう思いますか?
日本が「核共有」したときにはいろんな問題がある。核を持っていたら、基地があるところは攻撃されてきたでしょう。私は佐世保に住んでいる。基地がある佐世保や岩国は、敵からの攻撃の対象になってくる。長崎県にいたらその怖さがある。
だから「核兵器の共有」にしても「核保有」というのは攻撃のターゲットになるので、絶対にやってはいけないのではないか。「そんな悠長なことを言ってたら自分の国を守れないんだ」と言う人もいる。そのとおりかもしれないけれど、それ以外の方法を人間は知恵を出していけば、必ず合意できる、平和なやり方があるんじゃないかと僕は思う。だから「核共有」とか「核保有」とは僕は反対だ。
取材後記
髙田明さんといえば、テレビ通販時代のトレードマークでもあった”甲高い声”が印象的です。しかし、今回のインタビューで髙田さんは一貫して声のトーンを低く抑えていて、平和への真剣な思いを感じました。
ウクライナ情勢は、わたしたちの暮らしから日本の安全保障まで幅広く影響を与えています。みなさんもこの記事をきっかけに「平和」について考えてみませんか。