NHK長崎放送局 アナウンサー・キャスター リレー日記

どうして子どもが交通安全ポスターを描かないといけないの?  WEB特集

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皆さんは、こんな経験ありませんか?子どもから、何気なく聞かれた質問に即答できなかったこと。NHK長崎放送局は長崎県内の子どもたちから、日頃の疑問や質問に答える新コーナー「長崎のギモン それ知っとっと?」をスタートさせました。すると、いくつかの疑問や質問が寄せられました。この中で、ある質問に目がとまりました。

「どうして子どもが交通安全のポスターを描かないといけないの?」

これは、長崎市内の小学校に通う小学4年生の女の子の質問です。みなさんは答えられますか?答えを探して、さっそく調べてみました。(長崎放送局記者 郡義之)

 

確かに言われてみたら…

「あまり絵を描くのが好きじゃなくって…」こう話すのは、交通安全ポスターの質問を出してくれた長崎市立手熊小学校の4年生の女の子です。学校で描いた友人の交通安全ポスターがコンクールに選ばれたのを見て、ふと、ある疑問を感じたといいます。

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「子どもより大人が描いた方が上手だし、メッセージが伝わるんじゃないのかなと思って。どうして、子どもが交通安全のポスターを描かないといけないの?

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そう言われてみると、私自身、子どもの頃に交通安全のポスターを描かされましたが、当時はなんの疑問も持たずに取り組んでいました。でも、確かにそう尋ねられると答えが浮かびません。なぜなのか…。

街の人は…

「三人寄れば文殊の知恵」。
ことわざにならって、答えの手がかりを探ろうと、街の人に聞いてみることに。すると…。

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「えー、わかんない」 

「うーん、難しい」

女の子の質問をぶつけてみると、大人たちは次々に苦悶の表情を浮かべました。残念ながらヒントは得られず…。

 

長崎県庁に行ってみた

ならば交通安全ポスターコンクールの主催者に直接聞いてみよう!調べてみると主催者は「長崎県交通安全推進県民協議会」という団体です。私は、団体の事務局がある長崎県庁に行ってみることにしました。

話を聞かせてもらったのは、交通・地域安全課で課長補佐を務める島森利幸さん。実は、長崎県警から出向している警察官でもあります。これは、すぐに答えが分かるかも、期待に胸を膨らませました。

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すると、「けっこう難しい質問ですねぇ」と島森さんの第一声。ガーン、またしても空振りか。そんなことを思っていると、次につながるヒントをもらうことができました。

 (長崎県交通・地域安全課 島森利幸さん)
「ただ、交通安全ポスターコンクールの歴史から調べてみてはどうでしょう」 

 

歴史を調べてみた

歴史か…。
「よっしゃ、急がば回れだ!」という思いで、交通安全ポスターコンクールの歴史調査に着手。全国各地の交通安全協会に電話をかけたり、インターネットを通じて調べたりしてみました。

うーん。日本でいつからコンクールが始まったのか、はっきりしたことはわかりません。それでも、昭和23年に福岡県で交通安全ポスターのコンクールが始まったという記録があり、少なくとも終戦直後から行っていたようです。

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昭和60年代の長崎市内の渋滞

一方、わたしたちの長崎県は、昭和48年に「交通安全啓発図画コンクール」が始まっていました。長崎県内では当時、現在の2倍近い7400件余りの交通事故が発生。県内での交通事故で亡くなった人は、現在の約5倍にあたる150人余りに上っていました。

確かに昭和40年代は、交通死亡事故が多かったため「交通戦争」という言葉もありました。こうした当時の社会状況を背景に、交通事故を減らそうと、交通安全運動の機運が高まり、その一環で交通安全ポスターのコンクールが生まれたのでしょう。

 

アートディレクターにも聞いてみた

とは言え、なぜ交通安全の呼びかけ手段がポスターなのだろう。小学4年生の疑問にしっかり答えねば…と、次は交通安全ポスターコンクールの審査員長を務める多摩美術大学の名誉教授で、アートディレクターの中島祥文さんに話を聞いてみました。

中島さんは、ポスターという手段で交通安全を呼びかける意義について、目で見ることで得られる「視覚効果」を強調します。

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(多摩美術大名誉教授・中島祥文さん)
「交通標語は『ことば』だけですが、ポスターならば絵で描かれるので、ことばよりイメージが広がります。交通安全で何に気をつけなければいけないのか、ポスターを見ることで一層“思い”が伝わります」

また、中島さんは女の子の質問に、こんなことも話していました。

(多摩美術大名誉教授・中島祥文さん)
「質問はとてもすてきだと思います。こうした質問から、大人たちが交通安全を考えるきっかけにもなりますしね」

 

ただ、なぜ子どもが描くのか…

これまでの取材で、交通安全ポスターは交通事故が多かった時代を反映し、目で見る「視覚効果」からポスターとして描かれることになったのではないかというところまでは分かってきました。

ところが、肝心の「なぜ子どもが描くのか」という謎は解けていません。ただ、長崎県交通・地域安全課の島森利幸さんは個人的な考えと前置きをしたうえで、次のように話してくれました。

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令和3年度の長崎県交通安全啓発図画コンクールの優秀作品

(長崎県交通・地域安全課 島森利幸さん)
「やはり子どもたちが一生懸命、交通安全について考えて描いていますので、それを見る大人たちが『子どものお手本にならんといかんな』『安全運転をしなきゃいけない』という気持ちになるパワーが子どもたちの絵にはあるんじゃないでしょうか」。

 

かゆいところに手が届く取材を

今回の小学4年生の女の子の疑問は、日々の生活の中でふと思ったものです。しかし、国語や算数などの勉強と違って、「これが正解」という絶対的な答えはありませんでした。

だから、大人たちも「うーん」と悩んでしまいます。でも、知りたいと思う気持ちに応えようと、こうした素朴な子どもたちの疑問にも、真正面から真剣に答える人間が1人くらいいてもいいかなと思います。 

今回の取材を放送したあと、学校の先生や女の子、教育委員会の人から「おもしろかった」「勉強になった」という温かい言葉を頂きました。

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「かゆいところに手が届く取材」。そんな取材を目指して、NHK長崎放送局はきょうも長崎の町を駆け巡り、答えを探っていきたいと思います。

長崎の小中学生のみなさん、ふと感じた疑問をぜひお寄せください! 取材の結果は、夕方6時10分からのイブニング長崎「長崎のギモン それ知っとっと?」や、こちらのサイトでお伝えしていきます。

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投稿者名:WEB特集投稿時間:14:30

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