坂道をゆく⑫ 池田 耕一郎
2022年5月25日
第12回 「橘湾岸スーパーマラニックの坂」
こんにちは。リレー日記「坂道をゆく」の第12回です。
この連載は長崎県内の坂道を全身で体感して、長崎の歴史や文化、自然の魅力を探っていく、まったく個人的な趣味の企画です。どうぞお付き合いください。
さて、5月3日(火)に行われた「橘湾岸スーパーマラニック」に出場しました。マラニックとはマラソンとピクニックを合わせた言葉で、ゆっくり楽しみながらゴールを目指すものです。
「橘湾岸スーパーマラニック」の春の大会には、S(55km)、M(80km)、L(173km)そしてE(217km)部門がありますが、欲張ってL部門にエントリーしました。
L部門は長崎市内の稲佐山などを登った後に野母崎へと向かい、長崎半島の東海岸を北上して橘湾岸沿いに雲仙・小浜に至るというものです。公式HPの地図で見るとこんな感じです。
「長崎に全国から参加者が集まるスポーツイベントを!」と2006年に誕生した橘湾岸スーパーマラニック。今では全国各地から熱心なファンが参加する大会に成長して、今年は4つの部門に北海道から鹿児島まで約450人のランナーが出場しました(レース中に偶然、北海道の知り合いに出会ってびっくり)。
レースは長崎市の出島表門橋をスタートします。長丁場ですので出発時間が分かれています。私は夕方4時にスタート。スタッフの方々に拍手で見送られながら出発しました。ザワザワザワと武者震いしながら走り始めました。
まず、向かうのは稲佐山。標高333mの長崎のシンボルです。
「こどもの日」の前だったのであちこちに鯉のぼりが見られました。マラニックはレースとは違い、ゆっくりしたスピードで日常の風景を見ながら移動することに面白さがあります。
こうした長崎らしい風景を撮影しながら巡るのもマラニックの醍醐味です。
こちらは稲佐山の頂上から。
この後、坂をいったん降りて街に戻ります。
ニシノハテにある長崎。だからこそ美しいのが夕暮れ時です。
そこで、西日に照らされた街の表情をご紹介しましょう。
西日に揺れる、鯉のぼりたち。
西日を浴びた長崎県営野球場です。
西日を受ける路面電車。
しばらく北上してから再び上り坂へ。滑石の坂を「あぐりの丘」方面へ登って行きます。
途中で壁の落書きを発見。上りは歩くようなスピードですので、いろいろなものを発見できます。
日が少しずつ暮れるなか、山の間からは東シナ海が見えてきました。美しいですね!
このあたりは高所をつなぐ橋が多く、うさぎ橋、ラグビー橋などユニークな名前が多いです。
スタートから25km地点、「あぐりの丘」エイドステーションに到着。
マラニックの楽しみの一つがエイドステーションでの食事です。こちらでは炊き込みご飯とお吸い物を頂きました。優しい味付けで胃袋に染みわたります。美味しかったので、おかわりまで頂きました。ごちそうさまでした!
「あぐりの丘」のエイドステーションを後にして西海岸へ坂道を下っていきます。西の空はマジックアワー、逢魔が時といった美しさを感じますね。
山を越えて長崎市の西海岸、式見の町に下りると日がとっぷり暮れました。
それでも水平線にわずかに明かりが残っていて幻想的な光景が広がります。心の中では、ラジオ番組「ジェットストリーム」の音楽とナレーションが流れていました。「遠い地平線が消えて 深々とした夜の闇に心を休めるとき…」。ちなみに私は伊武雅刀さん世代です。
さて、「深々とした夜の闇」に入ってからはヘッドライトを灯して走ります。
女神大橋を西から東へ渡ります。ブレていてすみません。
午後9時すぎ、スタートから45km地点、「女神大橋」エイドステーションに到着。
こちらでは本日2度目の晩ご飯。五島うどんです。つるっとした喉ごしが最高でした。ごちそうさまでした!
女神大橋に別れを告げて、国道499号線を野母崎方面へと向かいます。
真夜中を走る感覚は不思議です。自分と周りのランナーの足音だけがシンクロして聞こえます。まさに「夜の静寂のなんと饒舌なことでしょう」というナレーションの世界です。
深夜0時前、65km地点の「野母崎体育館」エイドステーションに到着。本日、3度目の晩ご飯です。
エイドステーションごとにメニューはバリエーションに溢れていて、トルティーヤを頂きました。
デザートは茂木のびわ。旬のびわを食べられるレースは橘湾岸スーパーマラニックくらいではないでしょうか。ごちそうさまでした!
さて、日付が代わって5月4日(木)。野母崎にある標高198mの権現山に登ります。
そして、樺島へと渡ります。しかし、このあたりで脚が売り切れ。走れなくなってしまい、制限時間をタイムオーバー。残念ながらリタイアとなりました。
午前2時、樺島公民館「エイドステーション」で頂いた4度目の晩ご飯。リタイアの無念と安堵を感じながら、ほんのり辛いカレーライスを食べました。
それにしても、こんな遅くにまで食事を提供して頂き、スタッフの皆様には感謝しきりです。ごちそうさまでした!
結局、173kmのうち半分にも満たない77kmでのリタイア。橘湾岸スーパーマラニックという名前なのに、橘湾にようやく到着したばかりでした。今回のレースで173kmを完踏した皆さん、本当に敬服致します。そして徹夜で支えてくれたスタッフの皆様に感謝致します。
ということで、今回の橘湾岸スーパーマラニック編は未完。来年春、再び参加しようと誓うのでした。
長崎の上り坂、下り坂、まさか。
それでは、また次の坂道でお会いしましょう。
投稿者名:池田 耕一郎投稿時間:14:00