「坂道をゆく」⑪ 池田 耕一郎
2022年4月19日
こんにちは。
リレー日記「坂道をゆく」の第11回です。
この連載は長崎県内の坂道を全身で体感して、長崎の歴史や文化、自然の魅力を探っていく個人的な趣味の企画です。どうぞお付き合いください。
第11回 「多良の森の坂」後編
4月10日(日)長崎県大村市で行われたレース「多良の森トレイルランニング」出場記の後編をお届けします。
金泉寺を過ぎて次に向かったのが五家原岳。
パーマン1号さんたちに先んじて出発。水はたっぷり補給して満タンです。ちなみに水分補給ではハイドレーションという装備を使います。チューブをくわえて背中のパックから水をチューチューと吸うわけです。
疲れてくると足元ばかりを見ることになります。風雨にさらされて表面が滑らかになった岩。縦横に一生懸命に根を張る木々。長い時間かけて作られた自然の造形美を感じながら、一歩一歩、前へと進みます。
スタートから3時間50分後、19.6km地点の五家原岳に到着。
標高1057mの山頂付近にはNHKをはじめ様々な電波塔があります。長崎局の技術職員に聞いたところ、長崎県内にNHKのテレビ放送所は72もあるそうです。放送があまねく届くのはこうした設備で支えられているからなのですね。
私設エイドの方が提供してくれたコーラ(氷入り!)が染みるほど美味しかったです。ごちそう様でした。
しかし、この先は再び苦行。五家原岳からの下りはひたすら岩場が続きます。標高差800mのガレ場地獄。ヒザは痛いし、足の裏は痛いし、ベソをかきながら降りていきます。途中でマントをまとったパーマン1号さんにさっそうと抜かれていきました。
しんどくて写真を一枚も撮れませんでした…。
スタートから5時間15分後、大村市の黒木の集落に到着。吊り橋を渡ると2つ目の公式エイドステーション、26.1km地点の黒木地区砂防公園です。
ちなみに橋を渡るのが好きです。境界にある「橋」には、こちら側とあちら側を物理的につなぐ機能とともに、こちら側とあちら側の世界をつなぐ精神的なメタファが宿っている気がします。吊り橋を渡ると人間界に戻った感じがしました。ホッ。
エイドステーションでは大会スタッフの皆さんが声をかけて出迎えてくれます。「うーん、みんな大体、同じ顔しているね」と言われました。どんな顔かというとこんな顔です。
残りは13km近く。この先はもうエイドステーションがありません。ハイドレーションはほぼ空になっていたので水を1.5リットル補給。イチゴとオレンジ、そしてエナジードリンクを頂きました。どれも世界一美味いと思いました。おいしゅうございました。
黒木の集落では2kmほどアスファルトの舗装路を走ります。足の裏は痛まず、バランスをとる必要もなく、安心してステップを踏めます。アスファルト、ブラボー!文明の恩恵を感じます。
黒木地区はとても雰囲気の良い場所です。山間に棚田が広がり、大木に囲まれた神社があり、日本の里山の美しさを感じずにはいられません。
桜、菜の花、桃などたくさんの花が咲き誇り、花の香に包まれていました。
横から見ると斜面地の様子が良く分かりますね。
さて、舗装路に別れを告げて再び山に突入します。
序盤戦は岩のモニュメントが並ぶ静かなエリア。
そこを過ぎると標高差400mを一気に登ります。
壁のようなガレ場を登る途中に大会スタッフが応援していました。「あと何分、登りが続きますか?」と聞くと「20分がんばりましょう!」とのこと。15分くらいで到着したので心が折れずに済みました。それにしても、このレースでは「こんなところに!」という場所で大会スタッフに出会います(下の写真は往路のスタッフの方です)。
スタートから6時間10分後。ようやく経ヶ岳と郡岳の中間にある尾根に到着。ここから先は郡岳方面にはじめ来た道を戻ります。細かい峠が続くこの区間ではよく転びました。ほっぺたで土を感じながら地べたにうつ伏せ。休めて幸せ。しばらくそのまま横たわって眠りたくなります。
レース終盤は前も後ろも選手の気配はありません。郡岳を過ぎれば後は下りのみ。ということで、ここから先も写真はなくフィニッシュ。
8時間00分52秒で25位。
ちなみにパーマン1号さんは私よりずっと前の順位でした。速い!
さて「二度と走らない」と思ったパーマン1号さんが再び参加した理由。レースから1週間経った今では何だか分かります。レース翌日は坂道を見るだけで身体が拒否反応を示していました。でも、苦しさの記憶が昇華するとそこに残ったのは楽しさの結晶。山道や坂道を求めて身体がウズウズしています。
ということで来年の「多良の森トレイルランニング」でお会いしましょう!!
投稿者名:池田 耕一郎投稿時間:20:30