「坂道をゆく」⑦ 池田 耕一郎
2021年11月26日
こんにちは。リレー日記「坂道をゆく」の第7回です。この連載は長崎県内の坂道を全身で体感して、長崎の歴史や文化、自然の魅力を探っていこうという、まったく個人的な趣味の企画です。どうぞ、お付き合いください。
第7回 「トトロのバス停の坂」
長崎に来て1年あまり、相も変わらず長崎の坂をあちこち探索する日々を送っています。
さて、今回ご紹介するのは東長崎にある坂です。東長崎には「滝の観音」として親しまれている有名なお寺があるのですが、この近くに何と「トトロのバス停」があるんです。
森の中の坂道を登っていくと、さっそく趣のあるバス停を発見!こちらは長崎バスの「滝の観音」バス停です。トトロのアニメに出てきそうな雰囲気で良いですね。(現在、屋根や壁は取り外されています)。
さて、「トトロのバス停」を探しに進みます。「滝の観音」バス停を超えて坂道を登り、森を抜けると家屋や田んぼが現れます。
そこで見えてくるのがこちら。
田んぼの脇にポツンと佇むトトロ!
近づいてみると…。
立派なトトロです。背丈は私と同じくらいの高さ。隣にはサツキとメイもいます。疲れ切ったメイをおぶって到着するバスを待つ有名なシーンですよね。そう、ここが「トトロのバス停」です。
そして、この「トトロのバス停」が面白いのは訪れる度に次々に新しいものが増えていることです。ちなみに上でご紹介した写真は去年2020年12月のもの。それが、2021年3月に訪れたときはこのようになっていました。
なんとネコバスが加わっています!しかも、このネコバス、実際に乗れるようになっているんです。よく家族連れの方々がお子さんをネコバスに乗せて写真を撮っているのですが、とても微笑ましい光景です。みんなに愛されています。
ちなみに、ネコバスの時刻表にも注目。
7時台は「寒い時運休」、12時台は「お昼で運休」、14時台は「暑い時運休」、19時台は「眠い時運休」。運休、多いですね。そして、その他の時間帯は「おまかせ」。さすがネコバスならではの気まぐれ運行です。それにしても、とてもウィットに富んだ時刻表ですね。
その「トトロのバス停」ですが、今年2021年11月に訪れたときはこうなっていました。
トトロたちの手前に飾られているのは「まっくろくろすけ」です!星飾りもあってクリスマス仕様となっています。あちこちに忍び込む「まっくろくろすけ」。松ぼっくりの中にも紛れこんでいました。
さて、ここまで読んで下さった皆さんは、一体どのような経緯で「トトロのバス停」ができたのか気になるかと思います。
そこで、制作した方に取材を行いました。
制作者はお近くにお住まいの藤本利政さんです。トトロ制作のきっかけは2019年に孫が生まれたこと。孫の誕生を祝うとともに、トトロをきっかけに孫に遊びに来てもらいたいという思いからだそうです。
そして、驚くのがなんと藤本さん一人で作り上げたということです。大トトロ、小トトロ、サツキとメイ、バス停、ネコバスをです。元々、近所の方から要らない角材を大量に譲ってもらった経緯がありました。そこで、藤本さんは一念発起。その角材や金網などを利用して形を作り、自家製のコンクリートを混ぜ合わせて塗り上げたそうです。
特にこだわったのはトトロの表情。トトロらしい表情にするために目の位置を何度も何度も工夫したそうです。ボーっとしているなかに優しさが感じられますね。
時はコロナ禍。外出が制限されて時間には余裕があったということです。去年2020年8月、藤本さんが情熱を傾けたトトロは4か月ほどかけて完成しました。
藤本さんの活動の輪は広がります。サツキとメイやネコバスを作り上げた後、近所の方が好意で手伝ってくれるようになりました。花を植えたり、まっくろくろすけを飾り付けたりしてくれるようになりました。
今ではたくさんの人たちがこの場所を訪れて、写真を撮ったり、子どもを遊ばせたりして過ごしています。藤本さんは「コロナ禍の中ですが、通りがかった人が少しでも和んでくれれば」とお話していました。
コロナ禍で生まれたトトロ。そして、コロナ禍で人と人をつなぐトトロ。この場所に来ると素朴な温かさを感じることができます。来年3月下旬~4月にはたくさんのチューリップの花に囲まれるということです。
さて、この「トトロのバス停の坂」を超えると九十九折りの本格的な坂があります。坂の中腹から見下ろすとこんな感じです。本当にトトロが住んでいそうな素敵な場所ですね。
ちなみに「トトロのバス停」を訪れるときはいつも走って訪れています。往復30キロくらいですが、峠があり山があり坂道好きにはたまらないコースです。
ということで、長崎の「上り坂、下り坂、まさか」。
次の坂道で会いましょう!
投稿者名:池田 耕一郎投稿時間:10:00