「坂道をゆく」⑤ 池田 耕一郎
2021年9月10日
こんにちは。リレー日記「坂道をゆく」の第5回です。この連載は坂道を全身で体感して、長崎の歴史や文化、自然の魅力を探っていこうという、まったく個人的な趣味の企画です。どうぞ、お付き合いください。
第5回 「ルルドの坂」
長崎にはルルドLourdesと呼ばれている、奇跡の泉が湧くとされている場所があります。
そのうちの一つが本河内のルルドです。ここに行くには、聖母の騎士高校の横にある細い路地の坂道を上っていきます。
「ルルドの坂」は長崎らしい階段と坂道が組み合わさった私好みの道です。道幅が狭いため行き交う人と自然と挨拶をかわすのが良いですね。この道を標識に従いながら、ひたすら上っていきます。
そして、それなりの勾配の坂道を100mほど上っていくと…。
突如として、木々に囲まれて開けた場所が現れます。
こちらがルルドです。
小さな泉があり、その上にはいつもきれいな花が飾られていて、さらに上には岩のくぼみに聖母マリア像があります。私自身は特定の信仰する宗教がないのですが、学生時代には「海の星学寮」という学生寮で過ごしましたので、久しぶりに見るマリア像に懐かしさも感じます。
実は、このルルドはある有名な方が関係しています。
それはポーランド人のコルベ神父Maksymilian Maria Kolbeです。
本河内のルルドはコルベ神父が1931年に長崎に開いた修道院がルーツになっています。
コルベ神父については長崎を離れた後、壮絶な人生を送ります。第2次世界大戦中、アウシュビッツ・ビルケナウ(Auschwitz Birkenau)強制収容所に収容されます。そこで、ある日、脱走者が出たことにより、無作為に選ばれた収容者10人が餓死刑を宣告されました。そのとき、コルベ神父は子どものいる男性の身代わりを志願して処刑され、殉教者となりました。
以前、アウシュビッツ・ビルケナウ博物館の日本人ガイドである中谷剛さんの「ホロコーストを次世代に伝える」を読んでコルベ神父について知りました。そのときは、まさか長崎局に赴任するとは思っていなかったので、その巡りあわせに驚きました。
ときおり、ランニングをしながら本河内のルルドを訪れます。とても静謐(せいひつ)な場所で心が安らかになります。そして、コルベ神父の人生を振り返りながら、他者のために生きる善についても考えさせられるのでした。
長崎の「上り坂、下り坂、まさか」。
次の坂道で会いましょう!
投稿者名:池田 耕一郎投稿時間:10:00