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木曽で酒蔵を守り続ける夫婦

  • 2024年05月23日
  •  

歴史ある酒蔵を守り続ける夫婦に伺いました。

酒造りを始めたのは江戸時代。県内で2番目の老舗酒蔵として374年の歴史を繋いできました。
16代当主、湯川(ゆがわ)尚子さんです。
この土地で先祖から託された蔵を守り続けています。

木祖村の薮原に酒蔵があることは絶対変わらないこと。
この土地の自然の環境をできるだけ生かして酒造りをしていくことが、この地でしかできないお酒になるんだろうと思っています。

受け継がれてきた伝統に、令和を生きる今の自分の感性を織り交ぜています。 
地域のみならず地球の未来を見据えた、持続可能な酒造りを目指しています。
去年夏からは、近くを流れる木曽川源流の水を生かした、先進的な取り組みを始めました。

長く続いていく中に、環境にやさしい日本酒でありたいという考えもあって。
仕込みに使っている井戸水が12度くらいで、その水を貯蔵庫に回すことで冷熱源として部屋の温度を下げる。 
冷やしすぎてしまっては、酒も冷やしすぎってこともありますし
長く貯蔵をするときにずっと冷蔵状態を保つというのは環境にとっても少し負荷が
大きいのではないかと思います。

貯蔵庫

伝統から脱皮して導き出した革新的で冷静な判断にきゅんとしました!


尚子さんから実家の酒造りを託されたのは、杜氏(とうじ)で夫の慎一さんです。
初夏、酒造りの終盤です。

すごい!タンクがたくさんありますね。

全部仕込みタンクです。

ブクブクしていますね。
何日くらい経ったものなんですか?

20日以上経っていて、もうすぐ搾ってもいい頃合いにさしかかります。

日本酒造りにおいて大切な酵母。
より良い酵母を作るには「寒さ」と「糖」、そして「酸」の3つの要素が鍵を握ります。 
その「酸」を生み出すために、この酒蔵では目に見えない自然の力に頼っています。

現代の酒造りでは、「速醸(そくじょう)」という乳酸の液体を加えて短期間で作り上げる方法が多い中、ここでは空気中に漂う乳酸菌が自然に入るのを待ちます。 
「きもと」と呼ばれる昔ながらの手法でも日本酒造りに励んでいます。 
蔵の魅力を届ける一つとなっています。

冬の間も長野県は寒いけど、ここはもっと寒い。寒ければ寒いほど
いろんな雑菌類とかが生きられなかったりする。
私たちが必要な菌だけが生きられるというところをメリットとして使えないかなというのもあります。

他の手法よりも難しいのはどんなところですか?

難しさは目に見えないことです。
「今(乳酸菌が)入ったかな」とか分からないですから。
冬の寒さっていうのも当然必要ですし、低温であることと衛生環境も必要です。 
目に見えないものをどう自分たちで視覚化して作業していくかというのが
一番大変だと思います。

地域がもたらす水、空気、そして気候を最大限に生かした酒造りにキュンとしました。


木祖村の自然の恩恵を受けつつ、長野県産の酒米で時間をかけて丹念に作った日本酒です。

おいしい!うまみがすごいです!
お米のうまみと甘みがふわっと広がっていって、飲んだ後の後味が結構すっきりしています。

今飲んでもらったときみたいにほっぺたがほころぶのがおいしく飲んでいただいたと感じられて、そういう反応してくださる方が多いなという風に思います。

尚子さんは地域を生かし、地域に生かされる酒蔵を目指しています。

“つなぐ・つながる”ということを常に意識しているんですけれども、
この地域に酒蔵がずっと続いていくということは、地域も元気に続いていかないと
いけないし、地域があるからこそ私たちの酒蔵も続いていけるので、この地域とともにまた向こう100年つなげていきたいと考えています。

人が暮らすことで人が自然を守り、その自然は巡り巡って人に潤いをもたらす。
変える勇気と変えない信念で地域の未来を見つめる姿にとってもきゅんとしました!

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