「おいしいおじさん」鳥羽周作シェフが行く 長野県のおいしい巡り
- 2023年04月27日

作ったものがどう食べられているのか知りたい

まず訪れたのは、長野市大岡にある米や野菜の栽培を行う農場です。
代表の遠藤夏緒さんは、農家民泊を営んでいます。
遠藤さんは、アルプスの風景とおいしい湧き水を求めて、20年前に埼玉県から移住してきました。
観光客が少なく、昔ながらの暮らしが保たれていることが魅力の一つだといいます。
遠藤夏緒さん
自然の中で暮らしているとさみしくないです。花々が咲き、野鳥がさえずる。やることもたくさんあります。都会のほうが、人の中で人としか生きられず孤独感を感じていたと思う。自然の中で生かされていて、土の上で生きていることを尊く感じています。

年間10組ほどの民泊を受け入れながら農業を営む遠藤さん。
自身の畑でとれた米や山菜を使った料理をふるまい、生産者としての思いを鳥羽シェフに伝えました。
遠藤夏緒さん
生産者も、自分が作った食材がどう料理されお店で出されているか見たいと思います。自分が出したものがどこでどうなっているのかわからないのはむなしいので、土から口まで、作ったものがどうなるのか見たいという思いがあります。

遠藤さんが作ったふきのとうの炒め物を食べた鳥羽シェフは、「レストランで出すメインのお肉の付け合わせなど色々な料理に合いそう」と感想を述べた上で、生産者にも見える形で地元食材を使っていきたいと話しました。
鳥羽周作シェフ
作っている人が食材の出口まで知ることができないのは不毛だと思います。一部の有名な生産者だけがそれができる、そうじゃない人はハードルが高いというのも違うと思います。地元の食材を出しながら、例えば月1回レストランを開放するなど生産者たちと交流の場を作りたいです。

「食材が地元で消費されないのが悔しい」
鳥羽シェフが長野の食を巡るにあたって頼ったのが、長野在住の編集者・徳谷柿次郎さん。
県内の食や生産者を多く取材しています。

徳谷さんの案内で訪れたのは、長野市内のハンバーグ店。
長野県内で2店舗を構え、子ども連れから1人で訪れる人まで地元の人で連日賑わっています。
売りは、つなぎを使用しない俵型のハンバーグ。多くのお客さんがレアで食べるそうです。
なるべく県産の肉を使い、提供する日の朝ひき肉にし、注文が入ってから成形します。

さっそくハンバーグを食べた鳥羽シェフは…

鳥羽周作シェフ
これはヤバい!!…このクオリティを1000円以下で出し続けられるのがすごいです。 店主の並々ならぬ覚悟がうかがえます。

店主の大日方勇さんは、40年以上前から長野で営業を続けてきました。
誘いはあるものの長野県外に出店する予定はなく、地元の食材を使うことにこだわりたいと語ります。
大日方勇さん
長野は生産者が多い県です。それなのに、他の県に食材が出荷され、県内での消費が少ないのです。だから、自分のお店ではできるだけ県内の食材を使い、地元の方に利用して頂けるお店でありたいと思っています。

徳谷さんは、自身がハブとなり、今後も魅力的な生産者や長野の食を発信したいと考える人たちをつないでいきたいと言います。
「おいしいおじさん」の挑戦

今回、小谷村、そして長野の方々を訪ね、生産者や飲食店関係者と交流を重ねた鳥羽シェフ。
自身を「おいしいおじさん」と自称する鳥羽シェフは、現場を見る中で、思いを強くしたことがありました。

鳥羽周作シェフ
今回、「これを見たい、あれを見たい」と希望せずに長野に来ました。地元の人が見てもらいたい長野の食の現場を見たいと思ったからです。結果、その純度の高い思いに接し、自分は外から来た人間として、レストランという場所を持ちながら新しいコミュニティを形成していきたいです。そこから、小谷村、長野の魅力を発信していきたいと改めて思いました。