川口アナが聞く!採用担当者のホンネ
- 2023年03月13日

「福利厚生は充実している?」「希望の部署には配属されるの?」3回シリーズでお伝えしている信州就活座談会。最終回は就活生のこうした不安や疑問を、県内に本社を置く大手企業5社の採用担当にぶつけました。
(聞き手:長野放送局アナウンサー 川口由梨香)
2月下旬、NHK長野放送局が開いた初の就活座談会。信州の経済界をリードする北野建設、キッセイ薬品工業、セイコーエプソン、八十二銀行、ホクトの20代から30代の採用担当者が参加しました。

王滝村出身。東京の大学を卒業後、2009年に入社。
海外工事の担当部署などをへて人事部に。
大学時代は学園祭の実行委員会に所属。

大町市出身。京都の大学を卒業後、2015年に入社。
MR(医薬品の営業)職で北海道で勤務後、人事部に。
大学時代はスキー部に所属。

松本市出身。東京の大学を卒業後、2020年に入社。
入社時から人事部でインターンシップの企画など新卒採用業務を担当。
大学時代は国際交流サークルに所属、留学も経験。

長野市出身。茨城の大学を卒業後、2015年に入行。
飯田・諏訪の支店などをへて人事部に。
中学校から大学までバレーボールに取り組む。

須坂市出身。宮崎の大学を卒業後、航空関係の仕事をへて、
2016年に中途入社。大学時代の半年間カナダに留学。
福利厚生は充実?働きやすい職場?


就活生が企業を決める際の大きな判断材料の1つとなっているのが、福利厚生が充実しているか、働きやすい職場環境が整っているかです。売手市場の様相が強まる中、優秀な人材を確保するためにも私たちはこんな独自の取り組みを進めているという話があれば教えてください。八十二銀行・峯村さんいかがでしょうか?

峯村さん
「5営業日連続の休暇」が取得できます。このため、土日をくっつければ最大9連休は取得できる仕組みがあります。奨学金の無利子への借り換えも行っています。
それに「服装の自由化」も進めているんです。銀行は堅いイメージがあって、行員はスーツ、ワイシャツ、ネクタイのイメージですが、八十二銀行は去年から服装の自由化が始まっています。あくまで失礼のないものが前提ですが、新しい取り組みを行うことで新しい発想を生み出せる職場にしていこうと考えています。

銀行のイメージが変わりました。
谷本さん、北野建設は?

谷本さん
特に「男性の育休(育児休暇)の取得」に積極的に取り組んでいます。今年度はまだ途中ですが35%くらいの取得率になっています。
また、社内の雰囲気に関しても、若手の意見を取り入れて風土改革をしていこうとしています。具体的には今年度から役職で社員を呼ばないという取り組みを始めました。今までは○○部長とか○○役員と呼んでいましたが、全員「さん付け」で大丈夫です。社長のことも「北野さん」と呼んでいます。

それは面白いですね。ちなみに女性の比率はどれくらいですか?

谷本さん
当社は20%いかないくらいです。ほかの業種と比べるとやや少ないですが、建設業界ではまだ10パーセントくらいのところもありますので、業界内では女性比率が多いほうだと思います。

なるほど。男性の育休取得の推進に取り組んでいる社も多いと思いますが、いかがでしょうか?エプソン・押元さん。

男性の育休取得100パーセントを目指しています。このため上司から部下に対して「積極的に育休をどのくらい取得する?」と話しかけています。また、子育てしている男性社員の写真を募集して投票してもらうフォトコンテストも実施しています。

フォトコンテストは面白いですね。優勝すると何かもらえるんですか?

押元さん
優勝すると弊社のプロジェクターがもらえます(笑)。今年度は男性の育休の取得率が50パーセント以上になる見込みです。

市川さん
ホクトもメリハリのあるワークライフバランスに取り組んでいます。
有休の取りやすさに加えて、密度高く働けるようにと、社内教育や研修にも力を入れています。有休の取得日数は7、8年前から比べると倍になっていて、休みは取りやすいです。

キッセイ薬品工業・清水さんはいかがでしょうか?

キッセイ薬品工業では医療費の一部を助成するという福利厚生があります。
製薬業界は人の命や健康に携わる企業です。まずは社員1人1人が心身共に健康でなくては、ということで、健康保険の適用となるけがや病気になった場合は、通常の3割の負担のうち、さらに7割を共済会に負担してもらう制度があります。

そんな仕組みがあるんですね。
清水さんも使っていますか?

清水さん
そうですね。実際に病院に行ったら使っています。ほとんどの社員が使っていますよ。使わなかった社員は「健康優良者表彰」でちょっとした商品がもらえます(笑)
“配属ガチャ”は?


福利厚生に加えて、気になるのが「希望の部署に配属されるか」。
新入社員がどの部署に配属されるかわからない不安な心境を表した「配属ガチャ」ということばも生まれていますよね。皆さんの会社では配属の希望は通るのでしょうか?

市川さん
ホクトでは入社前にアンケートをとります。勤務をしたい場所や希望をしっかり書いてもらい、入社時の配属先はできるだけ希望に添う形にしています。

入社後の異動はどうですか?

市川さん
入社後は基本的に転勤を伴います。全国に拠点がある営業部門とか生産部門は、転勤の可能性があります。ただ、しっかり事前に上司と面談して会社が判断します。

清水さん
キッセイ薬品工業では、新卒採用は最初から職種を細分化しています。研究職は配属先がどこになるか明示していて、研究技術系の職種は、ほとんどが募集要項の配属先に配属されます。MR職(医薬品の営業職)は全国の主要都市が配属先なので、研修期間中に人事部がヒアリングします。全員が希望通りとはいかないですが、大体の社員が第3希望以内には配属されます。

谷本さん
北野建設では、入社後半年間は長野勤務です。半年がたつ前に社員と人事・役員が面談をして、長野か東京、どこの勤務地がいいのかヒアリングして決まります。社員が働きたい環境で長く働けるよう会社も動いているので、自身の希望が通るような環境にしていこうと考えています。

押元さん
エプソンでは、職種については学生の希望と適性、会社のニーズをうまく当てはめていくことになります。もちろん学生から面談中や内定後に希望は聞きますが、100パーセント希望通りの職種につけるとは限りません。配属の勤務地は、長野県中心に全国の事業所配属になりますが、9割方が長野県中部の配属となります。

峯村さん
新卒者はアンケートをとっています。「自宅から通える範囲にして欲しい」か「自宅ではなく引っ越しを伴う配属がいい」か聞いています。入社後に関しても希望はとりますが、3000人を超える職員全員の希望をかなえるのは正直難しいです。ただ、転勤でどこでもいくコースと自宅から通える範囲で転勤するコースとを選べるようにしているので、後者のコースの場合は自宅から絶対に通える範囲で配属先を決めています。

峯村さんの初任地は飯田市と伺いましたが、希望だったのでしょうか?

峯村さん
私が入った時はそのアンケートがなかったんです(笑)。ただ私は行ったことのない地域に行くほうが楽しいと思えるので、楽しかったですよ。
なぜUターン就職を決断?

大学進学などに伴って県外に出る学生も多くいます。Uターンで長野県に戻ってきてもらうことを望んでいる企業も多いと思います。皆さん(採用担当5人)は長野県出身ということですが、やはり地元で働きたいという思いからそれぞれの企業に就職されたんでしょうか。

押元さん
私は長野県で働きたいというよりも自分が成長できるかなと思ってこの会社に入りました。幅広くいろいろなことが経験できて海外ともつながりがもてる仕事ができる。その上でふるさとでもある長野県の企業。好きな場所で働けるなと思いました。長野県は自然豊かだし、充実した社会人生活が送れるなと思いました。

ただ、長野県出身ではない学生にとっては、長野で働くイメージが持ちづらいのではないでしょうか。

押元さん
はい、そこでエプソンでは、そういった学生向けに「長野ツアー」と題したイベントを実施しています。
エプソンへの就職を考えている学生にまず松本市に集合してもらい、そこからバスに乗って、長野県の風景をみながら塩尻市の事業所に来て見学してもらいます。道中では長野のおすすめスポットも伝えたり、入社したら住むことにもなる独身アパートも見て頂いたりしています。

学生からの評判はどうですか?

押元さん
働くイメージがついたと言われています。長野県は田んぼばかりというイメージがあるかもしれませんが、魅力的な場所があることを実感してもらっていますよ。

ちなみにUターン就職してもらえるよう工夫している会社はありますか?

清水さん
長野県で数少ない新薬開発に注力している企業です、という所を伝えています。自然豊かな場所に研究所もありますので、自然豊かな場所で研究できるよと。研究職の内定者には研究所の見学で安曇野の研究現場にも来てもらい研究風景や町並みの景色もみてもらっています。

谷本さん
長野県への貢献度は積極的にアピールしています。当社が施工した物件の紹介とか。インフラ整備以外でも「北野建設はこんな技術を持っているよ」ということなども積極的に伝えています。
就活生への応援メッセージ

ありがとうございます。
3回にわたってお送りしてきた就職座談会も今回が最後。ぜひ、就活生に応援メッセージをお願いします。

清水さん
就職活動の中で一番大切なことは、自信をもって選考を受けることです。自分の武器となるアピールポイントを見つけて自信をもって選考に臨んで下さい。就職活動頑張って下さい。

谷本さん
就職活動で悩んだとき、いったん立ち止まることも必要かもしれません。マイペースに進めたり就職活動の仲間やご家族に相談したり、いろいろな話をして自分の気持ちを楽にしてもらうといいと思います。まずは健康第一で就職活動を乗り越えてもらいたいと思っています。頑張って下さい。

峯村さん
就職活動は大変ですが体力と時間とお金が許す限り、たくさん遊んで頂きたいと思います。学生時代のさまざまな経験がビジネスにつながることがよくあります。大変だと思いますがたくさん遊ぶことを忘れずにいて頂きたいと思います。

押元さん
就職活動は辛いこと、苦しいことがたくさんあると思います。ですが、そういった中でもなりたい自分、未来の自分のために、ぜひ頑張って欲しいと思います。自分とあった企業と出会えるように心から応援しています。

市川さん
企業研究をしっかりして、働くイメージを持ってからぜひ選考を受けて頂きたいと思います。面接などでは、自分の言葉で、自分の気持ちを正直に話して頂けるとうれしいです。一緒に働ける日が来ることを祈っています。
まとめ

谷本さん
男性の育児休暇の取得に積極的に取り組んでいます。今年度はまだ途中ですが35%くらいの取得率になっています。このほか、今年度から役職で社員を呼ばないという取り組みを始めました。今までは○○部長とか○○役員と呼んでいましたが、全員「さん付け」で大丈夫です。

清水さん
キッセイ薬品工業では医療費の一部を助成するという福利厚生があります。製薬業界は人の命や健康に携わる企業です。健康保険の適用となるけがや病気になった場合は、通常の3割の負担のうち、さらに7割を共済会に負担してもらう制度があります。

押元さん
男性の育休取得100パーセントを目指しています。
このため上司から部下に対して「積極的に育休をどのくらい取得する?」と話しかけています。また、子育てしている男性社員の写真を募集して投票してもらうフォトコンテストも実施しています。

峯村さん
休暇ですが5営業日連続の休暇が取得できます。このため、土日をくっつければ最大9連休は取得できる仕組みがあります。服装の自由化も進めているんです。あくまで失礼のないものが前提ですが、そういう新しい取り組みをすることで新しい発想を生み出せる職場にしていこうと考えています。

市川さん
有休のとりやすさに加えて、密度高く働けるようにと、社内教育や研修にも力を入れています。有休の取得日数は7、8年前から比べると2倍になっていて、休みは取りやすくなっていますね。
参加企業の紹介

本社は長野市と東京。国内外の建設工事の企画や設計、施工管理などを行う。2024年卒は建築施工管理職、事務営業職など30人程度を採用予定。

本社は松本市。医療用医薬品の研究、開発、販売などを行う。2024年卒は研究職、開発職、MR職など50人程度を採用予定。

本社は諏訪市。インクジェットプリンターやプロジェクターなど精密機器を製造・販売。2024年卒は事務職・技術職で400人程度を採用予定。

本店は長野市。国内外に153店舗を展開。コンサルティング業務などにも力を入れる。2024年卒はスタンダードコース(旧総合職)で100人程度を採用予定。

本社は長野市。きのこの研究、生産、販売までを一貫して手がける。営業拠点は全国9か所。2024年卒は営業、研究など20人程度を採用予定。