信州のトップ企業が集結!就活座談会~①本当に求める学生像
- 2023年03月01日

2024年春に卒業する大学生などの就職活動が3月から本格的にスタートしました。
まさに人生の転機となる一大イベント。何から始めればいいのか、どんな準備をすればいいのか、悩みも深いと思います。そんな就活生のさまざまな疑問や悩みを長野県内に本社を置く大手企業5社の採用担当者にぶつけてみました。
(聞き手:長野放送局アナウンサー 川口由梨香)
2月下旬、NHK長野放送局に、信州の経済界をリードする5つの企業の20代から30代の採用担当者が集まりました。北野建設、キッセイ薬品工業、セイコーエプソン、八十二銀行、ホクトによる初の就活座談会です。

王滝村出身。東京の大学を卒業後、2009年に入社。
海外工事の担当部署をへて人事部に。大学時代は学園祭の実行委員会に所属。

大町市出身。京都の大学を卒業後、2015年に入社。
MR(医薬品の営業)職で北海道で勤務後、人事部に。大学時代はスキー部に所属。

松本市出身。東京の大学を卒業後、2020年に入社。
入社時から人事部でインターンシップの企画など新卒採用業務を担当。
大学時代は国際交流サークルに所属、留学も経験。

長野市出身。茨城の大学を卒業後、2015年に入行。
飯田・諏訪の支店などをへて人事部に。中学校から大学までバレーボールに取り組む。

須坂市出身。宮崎の大学を卒業後、航空関係の仕事をへて、2016年に中途入社。
大学時代の半年間カナダに留学。
求める学生像とは?
最初のテーマは「本当に求める学生像」。キーワードとして挙がったのは、「主体性」、「自分らしさ」、そして「周囲への意識」といったことばでした。


早速ですが、最初の質問です。これは就活生が一番気になっていることだと思いますが、各社が本当に求める学生像ってずばりどんなものでしょうか?

建設業でもゼネコンの会社は、オーケストラの指揮者のような気持ちで物事を進めていきます。多くの関係会社さんと一緒に仕事を進めていくので、いろんな人とコミュニケーションをとりながら最後のゴールに向かっていく。そんな主体的に物事を進めていける学生を求めています。

キッセイ薬品工業は“研究開発なくして製薬企業にあらず”という信念をとても大切にしています。新薬開発するんだとか、今ある薬をさらにいいものに育てていきたいという熱意をとても重要視しています。また、薬を作りあげるのはとても困難な作業です。そのため、独自性、オリジナリティがとても大切です。自分らしさあふれる人がキッセイ薬品の求める人材像ですね。

エプソンはものづくり企業ですが、ものをお客様に届けるだけではなくて、社会課題の解決をゴールとしています。例えば、環境負荷の低減とか労働環境の改善などといった目標にも取り組んでいます。その目的を達成するために自ら考えて、当事者意識をもって行動できる学生に来ていただきたいです。

八十二銀行の職員は、長野を中心に地方を盛り上げていきたい、おもしろくしたいという思いで日々仕事をしています。ここに共感していただかないと、仕事を始めた時にミスマッチなどがおきてしまいますので、「長野県をおもしろくしたい」と考えている学生を求めています。

ホクトはきのこを取り扱う会社ですが、営業・研究・生産などさまざまな職種が協力して仕事をしています。自分のことだけではなくて周りの人も気持ちよく仕事ができるように、他者の目線からも考えることがとても大切になります。周囲との関わりを意識して行動できる人がずばり求める学生ですね。
それって具体的にどんな人なの?

ホクトの市川さん、「周囲との関わりを意識した行動」をできるかどうか、具体的にどう見抜くのですか?

市川さん
例えばエントリーシートとかにご自身の体験を書くことがあると思いますが、「こういうことをしました」「こういうことで成功しました」というような自分視点だけではなく、周りの人とこんな関わりがあって、だからこそなしえましたといった、周りの目線が入っているかは選考で見ていますね。

キッセイの清水さん、熱意や自分らしさを選考で伝えるのは難しい気もします。

清水さん
例えば、研究活動だったら、こんな失敗したりこんな困難があったけれども、こんな工夫をしたとか。部活動だったらまとまりのないチームをこんな役割で強いチームに変えていった、といったことをアピールしてもらえたらなと思います。自分の経験してきたことを情熱的にアピールしてほしいです。

私は学生時代、部活にも入っていなくて、何かを成し遂げた経験があまりないのですが、そういった学生はどうしたらいいのでしょうか。

清水さん
その中でも自分が1つ打ち込んだことが絶対にあると思うので、自己分析する中で長所を見つけてほしいなと思います。

北野建設の谷本さん、主体性というのは、リーダー経験などが必要なのでしょうか?

谷本さん
サブリーダーみたいな役割でも全く問題ないです。失敗したけれどこんな風に改善したとか、周りからこう思われて自分は主体的に動くことができたんだとか。成功体験だけでなく、失敗から学んだことも話していただくことも多いかもしれないですね。

エプソンの押元さん、自分で考えて行動というのは、北野建設の谷本さんが答えた主体性と似ていますね。

押元さん
はい。ただ、リーダーでなくても、細かな所に気がついてフォローしていく役割とか、とにかく自分がはまるような役割で周りのために何かを変えていこうという人にぜひ来てほしいなと思います。

八十二銀行の峯村さん、「長野をおもしろく」というのは、具体的にはどういうことですか?

峯村さん
実は、八十二銀行に応募いただく学生のほとんどが「長野県のために」と話すんです。でもその中で、なぜ長野県が好きなのか。なぜ長野県をおもしろくしたいのか、自分の体験を交えて話してくれたらな、と思います。こういう体験があったから長野県で働いてみたいとか、その学生にしかないエピソードを聞きたいんです。
印象に残った学生は?

これまでみなさんいろいろな学生を見てきたと思いますが、中でも印象に残った学生はいますか?どうすれば採用担当者の印象に残るのでしょうか?

峯村さん
長野県をおもしろくしたいという学生で、自分なりに仮説を立てて、こういうところが問題点で長野県はこうしたらおもしろくなるんじゃないかということをぶつけてきた学生もいました。自分の中で課題を見つけて、改善案を実際に社会人にぶつける学生は印象に残っています。

清水さん
何かでナンバーワンを目指してきた学生は印象に残っていますね。私自身も学生時代、スキー部でナンバーワンを目指してきましたから。といってもナンバーワンは何でもよくて、研究室で一番研究を頑張ってきましたとか、学園祭で一番目立つ行動をしてきましたとか、そういう何かナンバーワンがある学生は印象に残っていますね。

押元さん
研究活動のことを話してくれた人がいました。普通の学生は先輩の論文を引き継いで研究を進めるそうですが、その学生は前例のない研究で、設備もノウハウもない中で周囲と協力してプロジェクトを立ち上げたと話していて、行動力があるなと印象に残っています。

谷本さん
私も研究のことを話してくれた子で、地元の方とか役所の人とコミュニケーションをとって地域のまちづくりを進めたと言っていました。いろいろな年齢層とも関わったり、物怖じせずに発言したりしていて、入社しても活躍してくれるんじゃないかと思いましたね。

市川さん
逆に悪い印象に残った例ですが、覚えているのが、グループディスカッションでうまくいかず、終わったあと、社員に「私はこうしたかったがだめだった」と話していた学生です。その学生は「自分は自分は」という視点が中心だったので、自分がこうしたいだけではなく、周りと協力したことを評価しているんだよと伝えました。「自分が自分が」というのは残念だなと思いました。
県内と県外学生で有利不利はある?

少し気になったのですが、皆さん長野県が本社の企業ということで、選考にあたって、県内出身の学生と県外出身の学生で有利不利はありますか?
一同)ないですね

押元さん
県内県外どちらの学生により来てほしいとかではなく、どちらにも同じだけ来てほしいです。エプソンだと新入社員の7割程度が県外出身の方なんですよね。長野に魅力を感じている県外の方、長野の良さを知っている長野県内の学生さんにも同じくらい来てもらいたいなと思っています。

谷本さん
当社も結果的にみると、9割程度が長野県出身、もしくは進学で長野に来てそのまま就職しようという人であるのは事実です。ただ、出身地をチェックしているわけでもなく、こだわりがあるわけでもないんですよ。
取っておいた方がいい資格とかはある?

もう1つ気になったのですが、みなさん建設や製薬、金融と、専門的な知識を身につけて仕事をされていると思いますが、そうした知識は学生の時から身につけておいた方が有利でしょうか?

峯村さん
全く有利ではありません。銀行の知識は入行後に身につけられるので、勉強するくらいなら遊んでほしいなと個人的には思っています。

清水さん
MR職(医薬品の営業職)は入社後に4月から8月までみっちり専門的な疾患の知識とか薬の知識を学んでもらえるので、大学時代に学んでもらう必要はないです。ただ、継続して学ぶ習慣だけは忘れないでもらいたいですね。

みなさん、ありがとうございました。第1回では、【ずばりどんな学生を求める?】について伺ってきました。次回は、【採用選考で学生のどこを見るのか?】をテーマに、各社の本音を探っていきます。
就活座談会~①本当に求める学生像【まとめ】

谷本さん
「主体性のある学生」
多くの関係会社と仕事を進めるため。リーダー経験がなくても、失敗から学んだことや、周りからどう思われているかなどアピールしてほしい。

清水さん
「創薬・育薬への熱意、自分らしさのある人」
薬を作り上げるのは困難な作業で、独自性、オリジナリティが必要だから。研究、部活動など取り組んできたことを情熱的にアピールしてほしい。

押元さん
「自ら考え、行動できる人」
ものづくりだけではなく、社会課題の解決がゴールで、それを達成するために当事者意識をもって行動してほしいから。周りのために何かを変えようとした経験を話してほしい。

峯村さん
「長野県をおもしろくしたい学生」
“長野を盛り上げたい”という気持ちで仕事に取り組む企業だから。なぜ長野が好きなのか、自分の体験交えて話してほしい。

市川さん
「周囲との関わりを意識して行動できる人」
さまざまな職種が協力して仕事をしているから。面接で自分の体験を話すときは、自分視点だけでなく、周りとどんな関わりがあって成し遂げたかを話してほしい。
座談会参加企業の概要

本社は長野市と東京。国内外の建設工事の企画や設計、施工管理などを行う。2024年卒は建築施工管理職、事務営業職など30人程度を採用予定。

本社は松本市。医療用医薬品の研究、開発、販売などを行う。2024年卒は研究職、開発職、MR職など50人程度を採用予定。

本社は諏訪市。インクジェットプリンターやプロジェクターなど精密機器を製造・販売。2024年卒は事務職・技術職で400人程度を採用予定。

本店は長野市。国内外に153店舗を展開。コンサルティング業務などにも力を入れる。2024年卒はスタンダードコース(旧総合職)で100人程度を採用予定。

本社は長野市。きのこの研究、生産、販売までを一貫して手がける。営業拠点は全国9か所。2024年卒は営業、研究など20人程度を採用予定。