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ネットで読む2021年3月1日(月)放送
『ライチョウ復活に挑む 鳥類学者 中村浩志さん』 若竹明日香

今回のゲストは、中央アルプスでのライチョウ復活計画に取り組んでいる中村浩志さんです。



坂城町出身の74歳。信州大学名誉教授で50年以上鳥の研究を続けています。

ライチョウの復活計画の新年度の方針が2月に発表され、今シーズンがいよいよ始まる時期です。
取り組みの中心である中村さんに、ライチョウ復活への思いを長野市内の研究室でお聞きしました。




鳥との遊びから得たもの

 ━ 先生は坂城町のご出身。

そうなんです。

 ━ やっぱり小さい頃から鳥がお好きだったんですか?

家のすぐ近くに千曲川が流れていましてね、まわりは山で囲まれていましたから。
身近な鳥はほとんど捕まえたんじゃないですかね。

 ━ 本当ですか!?

スズメから始まって、ムクドリとか。

 ━ スズメって捕まえられるものなんですか(笑)

ええ、僕の子どものころはですね。みんな捕まえていました。遊びでした。
遊びを通してですね、野外で、野外での勘ですね。勘とかですね、直感力とかね、そういう能力。
目に見えない能力を、子どものころの遊びを通して身につけた。
それがね、鳥の研究にも本当に役立ったと思っています。





ライチョウとの出会い

 ━ 小さいころの遊びだった鳥との接し方が、だんだん研究になっていたきっかけがあったんですか。

鳥の研究を始めたのが信州大学に入ってからです。
ライチョウの研究は信州大学の恩師の羽田健三先生(信州大学名誉教授)のライフワークの研究テーマ。
ですから私は学生のころからね。羽田先生と一緒にライチョウの調査に参加しました。





本来の研究はカッコウ!?

私の本来の研究はですね、カッコウの研究なんです。

 ━ どうしてカッコウの研究を始められたのですか。

カッコウのたく卵についてね。

 ━ たく卵?

たく卵ですね。ほかの鳥の巣にこっそり卵を産みこんで育てさせる。

 ━ そうなんですか。

非常にずる賢い鳥なんです。

 ━ えー。

なぜこんなずる賢いことがね、できるのか。なぜこんなずる賢さが進化し得たのかという。それがね、魅力でね。
100年以上かけて世界の研究者がね、解明できなかったカッコウのたく卵の謎を次々に解明してね。
50歳の頃にネイチャー誌とかサイエンス誌に発表したんですよね。





恩師からのバトン 再びライチョウへ

 ━ それだけ研究されていたカッコウから今ライチョウに力を入れていらっしゃる、そのきっかけはどこにあったんですか。

カッコウの研究でね、ようやく大成できた。世界トップレベルの研究ができたからという。
ようやく余裕ができてきたということですね。
それからもう一つはですね、50歳を過ぎたころ、羽田先生が亡くなってしまってね。
ライチョウの研究する人がいなくなって。いろんな理由が重なってね、
若いころ羽田先生と一緒に調査したライチョウが、今どうなっているんだろうということでね、調査を始めたんです。
それで、調べてみたら羽田先生と調査したころには考えてもみなかったいろんな問題が起きていることに気がついたんです。


ライチョウに迫る危機

本来、高山にいなかったシカとかサルとか、それから捕食者がどんどんあがってきてライチョウを補食しているということ。
さらに地球温暖化の問題に気がつきましたからね。




このままいったらライチョウは確実にね、絶滅することを知ってしまったからですね。
それをね、知ってしまった以上ね、絶滅から救えるのは自分しかないという意識が芽生えてきたんですね。


ライチョウ復活へ 経験が生むアイデア

 ━ ライチョウの復活計画については改めて今どういうふうに進んでいるか教えていただけますか。

今から3年ほど前にですね、絶滅した中央アルプスに50年ぶりにメス1羽が北アルプスの方から飛んできたんですね。
で、それを観察していますと、春になると巣をつくって卵を産むんです。
でもメス1羽ですから無精卵。ですからその無精卵はですね、有精卵にこっそり入れ替えるということをしたんです。
カッコウのたく卵と同じことをしたんです。


 

 ━ これはカッコウのたく卵を研究されていたから思いついたのですか。

そうそうそう(笑)ただ入れ替えるだけではね、冷たい卵を入れ替えたらだめですからね。
事前に卵をね、温めたり、いろんな工夫をしているから、親が気づかないんです。

 ━ 長年のカッコウのたく卵であったり、いろんな研究、そういったところがあって実現していたと。

はい、そうです。

 ━ 成功したときは「よし」というお気持ちでしたか?

ただしね、2年間ともね、ふ化までは成功したんだけど、ふ化したひなが、そのままだめになっちゃったんですね。
去年の場合ですね、丁度ふ化した当日にね、サルの群れがあがってきて、サルが巣をのぞいてしまった。
それでびっくりしてね、ひなが、ふ化したばかりのひなが、巣から飛び出しちゃった。
そして冷えてしまって、死んでしまったんですね。
せっかくね、2年間ともひなが無事ふ化したんだけど、その後だめになっちゃったのは非常に残念でしたね。

昨年はですね、乗鞍岳で1か月間ケージ保護した3家族をね、ヘリコプターで絶滅した中央アルプスに運んで。
その後さらに1週間くらいケージ保護して現地に慣らした後、放鳥したんです。


 



 ━ ちなみにどれくらい山にいらっしゃるんですか。

昨年は合計95日間。

 ━ 95日!?

山で過ごしました。おそらく、ことしもね。
あるいは今まで以上に山で過ごす時間が多くなると思います。


ライチョウは日本文化の象徴

 ━ どうしてここまで熱意を持って取り組むことができるんでしょうか。

日本文化の象徴ともいえるライチョウが絶滅してしまう。
そのことに気づきましたからね。日本では古くからですね、山岳信仰というものがありました。
高い山には神が住むというね。その神の領域の一番高い所にいるのがライチョウでしたから。
日本人はですね、ずっとね、ライチョウをとって捕まえることをしてこなかった。
日本の文化がすばらしいのはですね、自然に対して畏敬の念を持っているんですね。
そして自然と一緒に生きているんだという文化ですよね。




 ━ ライチョウを失ってしまうことは日本の文化を失ってしまうことでもあると。

日本の文化の大事な部分を失ってしまうという。
やはり今、僕が手をつけなかったらね、絶滅してしまう。
しかし今やったらまだ間に合うということですね。
中央アルプスにライチョウを復活させる。
その最後の夢をね、実現させようっていうのが、今、僕をつき動かしている原動力です。




 ━ 中村さんはこの日本文化について、日本だけではなく、21世紀の世界に必要なものだともおっしゃっていました。
自然とともに生きていくという考え方を失い、自分のことばかり考えていては、
結果的に人間も生きていけない環境につながってしまうかもしれないと思いました。

 ━ 中村さんに、この道を極める上で大切にしている言葉を色紙に書いていただきました。




「飽くなき探究心」。
まだ誰も解明したことがない謎を解いていくこと、まだ誰も成し遂げていない課題を達成していくことがおもしろいそうです。
「研究にゴールはない、体が動く限り研究を続けたい」とお話されていました。

 ━ ことしもまもなく本格的な活動が始まります。
去年、山に放して冬を越したライチョウからことしの繁殖期に順調にひなが生まれれば、
1度動物園に移してさらに繁殖を試み、中央アルプスに返す計画です。
そうして数を増やしていきたいとしています。


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