【2018年2月26日(月)放送 ゆる〜り信州 「防災の話」より】


雪崩について


雪害を考えるうえで、大きなテーマである「雪崩」について学んでいきます。長野県庁砂防課地すべり係の山口有理(やまぐち・ゆうり)さんにお話を伺います。
まず、「雪崩」には2種類あるそうですね。


山口さん:はい、「雪崩」は、斜面に積もった雪が、すべり落ち、流れ下る現象です。2つの種類があります。まず、急激にたくさんの雪が降り積もり、“表面”の雪がすべる雪崩のことを「表層雪崩」といいます。一方、地面までの積もった雪が“一体”となってすべり落ちる雪崩のことを「全層雪崩」といいます。「全層雪崩」は、長野県では「底雪崩」と呼ぶこともあります。


Q:「積もった雪の上に更にたくさんの雪が積もったとき、上に積もった新しい雪が崩れ落ちるケース」と「古い雪も新しい雪も一緒になって崩れ落ちるケース」があるわけですね。山口さん、雪が崩れ落ちる時、大変な速度になるそうですね。


山口さん:まず、「全層雪崩」は、時速40キロから80キロですべり落ちます。一方、「表層雪崩」は、時速100キロから200キロというものすごいスピードで流れ下ってきます。雪崩の力は、木々をなぎ倒し、鉄筋コンクリートの建物さえ押し倒してしまうほどの威力があります。昭和36年2月に、栄村の青倉で発生した雪崩では、4軒の家が全壊し、11人が犠牲になりました。


Q:雪崩の発生前には、その兆候、目印があるそうですね。


山口さん:一つ目は、「雪しわ」と言うのですが、雪の表面に、ふやけた指先のようなしわ状の模様が入るケースです。積もっていた雪がゆるみ、少しずつ動き出そうとしている恐れがあります。二つ目は、斜面上に雪の玉がたくさん発生するケースです。三つ目は、雪の表面にヒビが入るケースです。これらの現象は、雪崩が発生する危険性が高まっている目印です。このようなものが見られるときには、斜面にむやみに近づかないなど、警戒が必要です。もし発見したときには、市町村や県の建設事務所への通報をお願いします。


Q: 雪崩が起きやすい時期はいつでしょうか?


山口さん: 国土交通省によると、1年のうち、最も雪崩が多いのが2月、続いて、1月、3月、4月の順に多くなっています。より具体的に言いますと、気温が低く、降雪の多い1月から2月には、新しい雪がすべり落ちる「表層雪崩」が多く発生します。また、気温が上がる春先には、古い雪と新しい雪が一体となって崩れる「全層雪崩」が発生しやすくなります。


Q: まさに、これから春先にかけて要注意なわけですね。雪崩が起きるのはどんな場所なんでしょうか?


山口さん: 角度の急な斜面で大きな木が少ない場所、背丈の低い林や、まばらに木が生えた斜面で起きやすいと言われています。より具体的には勾配が30度から45度の斜面が危険とされています。ただ、過去には30度よりもゆるい斜面でも発生している事例がありますので、注意が必要です。


Q: 山口さん、長野県には、危険な場所はどれくらいあるのでしょうか?


山口さん: 雪崩に特に気をつけてもらいたい場所を「雪崩危険箇所」と言います。斜面の角度が18度以上で、高さの差が10メートル以上の場合で、人家などに被害を与える恐れがある場所です。この「雪崩危険箇所」が全国におよそ2万あります。長野県内には1292箇所あります。どこが雪崩危険箇所かについては、建設事務所や砂防事務所で確認することができますので、ぜひ、ご確認ください。


Q: 長野県では、どのような雪崩対策を進めていますか?


山口さん: これまで、長野県では雪崩の被害を防ぐための施設整備を中心に進めてきました。雪崩対策施設には2種類あります。雪崩の発生を予防する「雪崩予防施設」と、発生した雪崩を受け止めたり、流れの方向を変える「雪崩防護施設」です。雪崩予防施設は、主に雪崩予防柵と呼ばれるもので、小谷・白馬・志賀高原などのスキー場の山頂付近の斜面で見ることができます。雪崩防護施設は、主に防護柵と呼ばれるもので、雪崩の衝撃に耐えられるように鉄骨で作られています。これらは栄村青倉地区など、県内の豪雪地域で見ることができます。他にも、山岳地域の道路で見られるスノーシェッドも雪崩防護施設の一つです。
雪崩対策施設と言うとあまり馴染みのないように聞こえますが、実は皆さんの身の回りにたくさんあるのです。ぜひ一度、意識してみてください。そして、これからは施設整備だけでなく、防災に関する啓発活動も重要と考え、特に子供たちへの防災教育を充実させたいと思っています。


Q: 最後に、ラジオをお聴きのみなさんに、メッセージをお願いします。


山口さん: 長野県内では、平成22年2月に、山ノ内町で雪崩が発生し、負傷者が2人出たほか、宿泊施設が一部損壊しました。また、平成29年3月には、栃木県で登山講習会に参加した高校生8人が雪崩による被害にあっています。また、近年は、バックカントリースキーなどで山岳の非日常的なエリアを楽しむ方が増え、雪崩に遭遇するケースも増えています。豪雪地帯を抱える長野県には、雪崩発生の危険性が多く潜んでいます。気象庁の発表する雪崩や融雪に関する気象情報を気に留めていただくとともに、長野県、国土交通省、政府広報オンラインなどでも雪崩に関する情報を発信していますので、ぜひ、雪崩に対する正しい知識を深め、安全に雪と親しんでほしいと思います。


↑ ページの先頭へ