【2018年2月5日(月)放送 ゆる〜り信州 「防災の話」より】


松本市寿台児童館の取り組み


去年(平成29年)の春からスタートしたこのコーナー、児童館の防災に関する取り組みをご紹介するのは初めてです。松本市の寿台児童館、竹内亜哉(たけうち・あや)さんにお話を伺います。
竹内さん、まず、寿台児童館についてご紹介ください。


竹内さん:寿台児童館は松本市の寿台団地の中にある小さな児童館です。児童館は「屋根のついた公園」と表現されることもありますが、0歳から18歳までのすべての子どもが利用できます。また、最近では、地域の人たちと協力して「寿台ハッピー食堂」という食堂を不定期で開いています。地域の誰もが利用できる食堂です。地域の子どもたちは無料、大人からは100円以上のカンパをいただいて運営しています。


Q:その寿台児童館で、去年(平成29年)11月、初めて、防災に関する行事を行ったそうですね?


竹内さん:はい、「防災ダンボールキャンプ」というイベントです。文字通り、子どもたちにダンボールの家を作ってもらい、防災について考える行事です。ふだん子どもたちが遊んでいるおよそ40畳の「遊戯室」で行いました。このイベントは、阪神淡路大震災を経験した、神戸市の六甲道児童館で行われているもので、今回、アドバイスを受けながら、松本市でも初めて行ったものです。災害が起きて、生活が安定するまでは、物資が少ない中でしのがなければならない場面もあると思います。子どもたちには、そういった状況の中で、自分の頭で考えること、仲間と協力することを学んでもらおうと企画しました。


Q:非常にユニークなイベントですね。何人くらいが参加したんでしょう?


竹内さん:小学生以下の子どもが3人、小学生が8人、そして、お父さんやお母さん、それから地域の人などが12人参加し、全員で23人が参加しました。ダンボールで家を作ったのは小学生の8人で、このイベントのクライマックスになりました。子どもたちには、事前にひとつ、宿題を出しました。


Q: どんな宿題ですか?


竹内さん: 児童館で一泊する前に、子どもたちに「児童館に避難するつもりで、防災バッグの中身を考えて持っておいで」と呼びかけました。1人で考えてもいいし、家族に相談してもいいよと言いました。ただ、さすがにダンボールだけで冬の信州の夜は過ごせませんので、毛布や布団は別にもってきてもらいました。


Q: 小学生たちにとって、防災バッグの中身を考えるのは、貴重な機会になったでしょうね。子どもたちはどんな物を持ってきましたか?


竹内さん: パジャマ、薬、ばんそうこう、懐中電灯、寝袋などを持ってきている子が多かったです。怖いマンガ本を持ってくる子どももいました。子どもたちには、@ダンボール、A紙のガムテープ、B新聞紙、C水だけを渡し、家を作ってもらいます。子どもたちが自分の頭で考えることを尊重するために、わたしたち大人は一切、口出ししませんでした。当日は、8人の小学生がいましたので、3つのグループに分け、それぞれのお家が完成しました。


Q: 子どもたちは、どんな風に、ダンボールの家を作っていきましたか?


竹内さん: まず、床を作り、壁を作っていきました。女子のグループは、ダンボールで屋根まで作っていました。また、あるグループは、壁を安定して立たせるために、ロープが必要と考えました。しかし、防災バッグにロープを入れてきた子どもはいませんでした。そこで、ガムテープを長く使って、それをよってロープを作る子どももいました。また、家に窓を作りたいと考える子どももいました。しかし、防災バッグにハサミを入れてきた子どもはいませんでした。そこで、ダンボールにペンで穴を開けて、その穴に指を入れて広げる子どももいました。


Q: 子どもたちは、限られた持ち物の中で、それそれがアイデアを出して、工夫して、ダンボールの家を作ったわけですね。


竹内さん: 実際に災害が起きた時に、必要な物がない、という状況も起きるわけです。こうした経験を通して、防災バッグの中には何を入れるべきなのか、自分にとって本当に必要な物は何なのかを考えるきっかけになると思います。子どもたちがダンボールの家を作っていくのを見て、仲間と協力すること、自分で考えて動くことの大切さを感じてもらえたかなと思い、うれしかったです。


Q: 大きな経験になりましたね。そのほか、夜の食事も、防災を意識したものにしたそうですが、どんなものでしょう?


竹内さん: 災害が起きた際、ライフラインが使えず水が足りなくなるケースもあると思います。そこで、最低限の水と調理器具を使ってカレーライスを作りました。ふたつの鍋と小分けの袋だけで作りました。ひとつめの鍋に、水とお米を入れた小分けの袋を人数分入れます。空気を抜いて、きちんと密閉したうえでゆでます。ふたつめの鍋には、水とカレールー、そして切った野菜を、同じく小分けの袋に入れてゆでます。それぞれがゆであがったらお米にカレーをかけて完成です。子どもたちには、お皿を汚さないように、ラップをして食べてもらいました。


Q: 参加者からはどんな声があがっていましたか?


竹内さん: 簡単なうえ、最低限の水で調理ができますので、特に、お母さんたちの反応がよかったです。子どもたちもおいしそうに食べてくれました。


Q: 使える水に限りがある状況になったとき、その調理方法を知っていると有効でしょうね。最後に、これからの防災・減災を考えるうえで、竹内さんはどんなことが大切だとお考えですか?


竹内さん: 私自身、初めての防災ダンボールキャンプでさまざまなことを感じました。まず、子どもたちは、必要な物がない状況の中、自分の頭で考えてアイデアを出しました。そして、仲間と協力してダンボールの家を立派に完成させました。今回の経験は、子どもたちにとって、実際に災害が起きた時に生きてくると思います。「子どもだから災害の時、何もできないだろう」と思うのではなくて、「子どもだって災害時に頼もしい活躍ができる」という意識を、私たち大人が持つことも大切だと感じました。寿台児童館では、これからも、防災を考えるきっかけになるようなイベントを企画したいと思っています。また、来年度の「第2回防災ダンボールキャンプ」では、より大きな規模で、地域の人たちも巻き込んでやってみたいと思います。


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