【2017年11月6日(月)放送 ゆる〜り信州 「防災の話」より】


南木曽町総務課の取り組み


南木曽町の取り組みをご紹介します。平成26年7月9日、南木曽町読書(よみかき)地区の梨子沢(なしざわ)で大規模な土石流が発生しました。当時12歳の男子中学生が犠牲になったほか、住宅が壊れたり、橋が流されたりするなど、大きな被害が出ました。その後、南木曽町ではどのような取り組みが行われているのか。南木曽町総務課の課長補佐で防災を担当されている、松下幸一(まつした・こういち)さんにお話を伺います。
平成26年7月9日、どのような記憶が残っていますか。


松下さん:私は当時、産業観光課に所属していて、直接、対応に当たる立場ではなかったのですが、あの日のことはよく覚えています。午後4時頃から降った雨は、1時間で70mmを記録するという、まさに豪雨でした。南木曽町は年間降水量が多い町で、こういう土砂降りの雨を「白い雨」と呼びます。被災時には、子どもが土砂の下敷きになっているとのことで、現場へ向かえとの指示により梨子沢へ行きましたが、土石流にえぐられた護岸に衝撃を受けた記憶があります。


Q:改めて、町内で、どういった被害がでたのかお伝え下さい。


松下さん:人的被害としては、死者1名、負傷者3名、建物被害では、全壊10棟を含む44棟が被害を受けました。また、県道や町道に架かる4つの橋りょうが流失・破損し、砂防えん堤等も土石により大きな被害を受けました。また、JR中央線も線路上に大量の土砂が堆積し、およそ1か月にわたり不通となりました。


Q:あの日から、町ではどういった復旧工事が進んでいるのでしょうか?


松下さん:砂防えん堤は新たに4基が新設され、補修されたものを含めると全部で10基となりました。流失・破損した橋りょうも4つとも復旧されました。被災地周辺の復旧工事の進行とともに町は以前の生活を取り戻してきています。また、この災害を後世に伝えるため、「平成じゃぬけの碑」という碑を梨子沢の空き地に設置しました。この「じゃぬけ」というのは、地元でよく言う言葉で、「蛇が抜ける」と書いて「じゃぬけ」と読みます。土石流の跡は、蛇が山を降り下ったように見えるため、「じゃぬけ」と言うわけです。


Q:土石流災害の翌年から、南木曽町では、新たな取り組みも始めているそうですね?


松下さん:南木曽町では、近年、ゲリラ豪雨と言われる局地的な大雨が発生していることや、平成26年の災害を経験したことにより、過去に作成した冊子の防災地図・ハザードマップを、もぞう紙大に拡大したものを町内60の行政区に配布し、住民の皆さんに地域の点検を行っていただく取り組みを始めました。その際、赤・青・黒の水性ペンも配布し、地図に情報を書き込んでもらっています。これは、住民自らが日頃から地域の危険箇所や安全場所などを確認することにより、いざというときに速やかな避難行動がとれることを目指すものです。


Q: 住民の皆さんには、どのようなことを呼びかけていますか?


松下さん: 国・県・町といった行政機関が被災地対応するには、一定の時間がかかります。「自分の命は自分で守る。地域の命は地域で守る」という思いを持っていただきたいと思います。


Q: 最後に、これからの防災・減災を考えるうえで、松下さんはどんなことが重要だとお考えでしょうか?


松下さん: 南木曽町のような山に囲まれた地域は、大雨などによる土砂災害に悩まされてきました。これまでは、土砂災害はコンクリートで固められたえん堤などのハードで抑えるという考え方が基本でしたが、これからは、危険を感じたらまず逃げる、避難するというソフト的な対応が重要になってくると考えています。人は、危険が身近に迫っていても、なかなか避難行動がとれないと言われています。今後もハザードマップを使った取り組みなど、早め早めの避難行動につながる活動を進めていきたいと思います。


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