【2017年10月23日(月)放送 ゆる〜り信州 「防災の話」より】


駒ヶ根市福岡区の取り組み


駒ヶ根市の動きをご紹介します。駒ヶ根市の福岡区自主防災会総務部部長で、防災士の武田忠(たけだ・ただし)さん(48歳)です。
まず、駒ヶ根市の福岡区についてご紹介ください。


武田さん:駒ヶ根市の中心から南に1〜2キロほどにある地区で、およそ1500世帯、3600人ほどが暮らしています。福岡区自主防災会では、主に地震に備えた防災活動に取り組んでいます。南海トラフ巨大地震の発生確率が高まっていることはもちろん、福岡区内にある「十二天(じゅうにてん)の森」で活断層が見つかっており、大昔に大地震が発生した記録もあります。防災・減災について、意識の高い住民が多いと思っています。


Q:1500世帯、人口3600という規模で防災活動をするうえで大切にしていることは、どんなことでしょう?


武田さん:福岡区自主防災会には、まず、「自治組合」が8つあります。それぞれの自治組合が集会所を持っています。その下に「隣組」が145グループあります。5戸から十数戸によって形成されるグループです。1500世帯、3600人という規模の地区で防災活動をする際、トップダウンで、指示を出すような防災活動には限界があると考えています。各自治組合、それぞれに異なる事情を抱えていますので、「自治組合」、更に言えば「隣組」などの小さなグループで機動的に動くことを大切にしています。


Q:武田さんは、防災士でもいらっしゃいますが、「隣組」が機動的に動くためにどのようなことを呼びかけていますか?


武田さん:災害が起きた時、「どの家に、どんな人が何人住んでいるかを把握していること」が重要だと思います。近所で暮らしているのはどんな人なのか、どの家に高齢者が暮らしていて、どの家に病人がいて、どの家に子どもがいるのか。そういったことを把握しましょうと呼びかけています。よく、防災のために「住民名簿」を作成することもありますが、作ることで安心してしまう側面もあると思うんです。いざ災害が起きたら、「住民名簿どこにある?」なんて言ってる余裕もないと思うんです。住民名簿を作るにしても、作ることが目的ではない。どの家に、どんな人が何人住んでいるのかを把握すること、更新していくことが大切だと呼びかけています。


Q:武田さんはそういった呼びかけを続けるとともに、福岡区独自で防災マップを作成し、随時、更新しているそうですね?


武田さん:はい、駒ヶ根市が作成しているものとは別に、福岡区独自のマップを作成しています。土砂災害のおそれがある土砂災害警戒区域、断層が通っている場所を示すほか、医療機関や湧き水、AED設置事業所等を誰でも分かるようにイラストで表示しています。この防災マップは、随時、更新しているほか、区内の8つの自治組合の集会所に掲示し、活用してもらっています。


Q: 今年(平成29年)の8月には、その8つの集会所を舞台に、初めて「避難所開設訓練」を行ったそうですね?


武田さん: 駒ヶ根市全体で行われた地震総合防災訓練に合わせ、福岡区内にある各集会場を避難所として開設する訓練を初めて行いました。実際に災害が起きたら、集会所が避難所になる可能性があります。集会所に常備してある非常食の作り方をみんなで確認するほか、避難してくる人をいかに受け入れるかを確認しました。また、住民の間で「病人や高齢者が避難してきた場合にどのようにケアするか」といった具体的な議論も始まりました。


Q: 訓練を行う中で、どんなことを感じましたか?


武田さん: 事前に訓練を行うことは非常に有意義でした。簡単なところで言えば、集会所にある非常食の賞味期限が切れていて、備品の定期的な確認と補充が必要だということを皆さん認識されました。意外なところで言えば、集会所のカギです。自治組合の組合長が持っているケースがほとんどですが、万が一、組合長が災害に見舞われて集会所に来られないというケースも想定しなければなりません。その場合どうするか、スペアのキーを作るか、どう管理するかといった議論が起きました。また、実際に災害が起きた場合、電気や、ガス、水道が止まるケースも考えられます。そういうケースを想定して、たとえば、夜に同じ条件で訓練を行う必要もあるのではないかといった声も出ていました。


Q: 最後に、これからの防災・減災を考えるうえで、防災士でもいらっしゃる武田さんは、どんなことが重要だとお考えですか?


武田さん: 東日本大震災や栄村での地震、神城断層地震などで何が大事だったのかを学んできました。私は、「広く浅い防災」よりも「せまく深い防災」の方が有効なのではないか、と思っています。「せまく深い防災」というのは、「なるべく近い所から助け合う防災」です。そのためにも、日頃からのコミュニケーションで、隣近所や顔見知りとの交流を続ける必要があると考えます。もうひとつは、「防災訓練やりました」「住民名簿作りました」で、安心してはならないということです。当然のことですが、「形式的な備え」ではなく、中身のある備えが必要だと思っています。


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