【2017年9月4日(月)放送 ゆる〜り信州 「防災の話」より】


松本市 源池防災キャンプ 


去年(平成28年)10月に、松本市立源池(げんち)小学校で「源池防災キャンプ」というユニークなイベントが開かれました。主催したのは、源池小学校に通う子どもたちのお父さん、お母さんたち。一体どんなイベントだったのか、前PTA会長の長田崇(ながた・たかし)さん(42歳)にお話を聞きます。
去年10月に開いた「源池防災キャンプ」。350人ほどが集まったということですが、どんなイベントだったんでしょうか?


長田さん:源池小学校の体育館と校舎に、防災を学べる6つのブースを作りました。具体的には、「がれきの中に置いた人形を助け出すブース」「簡易トイレ・避難袋などの防災グッズの展示ブース」「煙が充満するスペースの中を避難体験できるブース」それから、「消火器の使い方を学ぶブース」「炊き出し体験ブース」そして、「ロープの解けない結び方を学べるブース」などを用意しました。


Q:幅広いイベントですね。子どもたちが楽しみながら学べるように、仕掛けも用意したそうですね?


長田さん:はい、やはり、長時間のイベントになりますので、子どもたちが飽きずに取り組めることが大事だと考えました。そこで、スタンプラリーを取り入れました。ブースをひとつ回ったら、スタンプをひとつ押してあげます。全部で6つのブースがありますので、スタンプを6つ全部集めたら、ピカピカのカッパのシールをプレゼントしました。カッパは源池小学校のシンボルなんです。この仕掛けが功を奏し、多くの子どもたちが全てのブースを回ってくれました。


Q:子どもたちが楽しめるよう工夫されたわけですね。そもそも長田さんが、この防災イベントをやろうと思われたきっかけは何だったんでしょうか?


長田さん:私たちの暮らす松本市も、地震や火災の不安がある地域です。4人の子どもを持つ父として、子どもたちに、防災について学んで欲しいといつも思っていました。子どもが家にいるときに災害が起きれば親が守れます。子どもが学校にいるときなら、先生方が守ってくださいます。ただ、たとえば、登下校の途中や外で遊んでいるときに災害が起きたら、子どもたち自身で、自分の身を守らなければならないわけです。そういうことを想像する度に、防災イベントをやらなくてはならないと思うようになったわけです。


Q:今、ラジオをお聴きの小さなお子さんを持つお父さん、お母さんも同じ気持ちでしょうね。長田さんは、以前から、防災に関する知識はお持ちだったんですか?


長田さん:いや、実は、全然詳しくなかったんです。イベントを開くにあたり、防災に詳しい地域の先輩方のところを回って、防災について私たちも勉強しました。松本市防災連合会、松本広域消防局、松本市の消防団の第3分団など、多くの先輩方にアドバイスいただきました。「子どもたちに防災を学ばせたい」という趣旨に、皆さん、前向きに協力して下さいました。それなら、こういうこともできるよ、とか、ああいうこともあるよ、といった感じに、多岐に渡るアドバイスとお力添えをいただき、ありがたかったです。


Q: 心強いですね。長田さんたちはそこで学んだ知識を生かして、防災ハンドブックも作成されたそうですね?


長田さん: そうなんです。子どもが外でひとりでいるときや、子どもたちだけで遊んでいるときに、災害が起きた。万が一、そういった状況になったときに必要な情報を1枚にまとめました。避難場所、連絡先、家族の集合場所を記入できるようにしました。この防災ハンドブックをPTAで作成し、子どもたちに配りました。源池小学校の子どもたちは、みんなランドセルに入れています。家庭でも、「何かあったら、ランドセルの中から防災ハンドブックを取り出すんだよ」と呼びかけています。


Q: その防災ハンドブックは、地域のお父さん、お母さんにとっても、力強い存在ですね。長田さん、今年の夏は、保護者の皆さんを対象に、防災にまつわるアンケートもとったそうですね?


長田さん: はい、実は、今年(平成29年)は「防災キャンプ」を開催しないんです。その代わり、今年は、防災アンケートをとり、お父さん、お母さんたちの不安を聞きました。アンケートをとるだけでも、防災についての意識が高まると思ったからです。その中で、非常に関心が高かったのが、災害の際の「車中泊、車の中で泊まること」、そして、トイレに関する不安でした。熊本の地震の報道などを見て、我々も真剣に車中泊について正しい知識を身につける必要があるのではないか、といった声です。こういった声を受けて、源池小学校PTAでは、また来年、準備を整えた上で、2回目の「防災キャンプ」を開きたいと思っています。特に、車中泊については、車を並べて、実際に車中泊を子どもたちにも体験してもらって、正しい知識を学びたいと思っています。


Q: 最後に、長田さん、これからの防災・減災を考えるうえで、どんなことが重要だと思いますか?


長田さん: 今の世の中は、インターネットの発達などもあって、隣近所とのコミュニケーションが薄くなっているところがあると思います。そんな中で、今回、子どもを持つ私たちは、防災イベントの必要性を感じ、防災に詳しい地域の先輩方に実際に会いに行きました。防災についてさまざまなことを教えていただきました。その中で、改めて、「地に足のついた地域のつながり」を感じました。万が一、この地域で災害が起きた時、今回の経験と「地域のつながり」がきっと生きてくるだろうと信じています。また、私と同じように、小さな子どもがいらっしゃって、防災に関するイベントを開きたいと思われているお父さん、お母さんもいらっしゃるかもしれません。正直、ゼロから立ち上げるのは、最初は周囲の理解も含めて苦労があると思いますが、思い切って開催することをおすすめしたいです。子どもも、お父さんも、お母さんも、皆の防災に対する意識が高まります。地域の諸先輩方も、きっと喜んでサポートして下さると思います。


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