【2017年7月3日(月)放送 ゆる〜り信州 「防災の話」より】


栄村情報防災係の取り組み 


栄村の取り組みをご紹介します。平成23年3月12日、東日本大震災が発生した翌日、午前3時59分、長野県北部を震源とする地震がありました。栄村は、震度6強を観測し、700棟近い住宅に被害が出たほか、避難生活によるストレスなどで3人が死亡しました。あの地震から6年。栄村では、どのような防災活動が行われているのか、栄村役場・情報防災係 係長の広瀬忠一(ひろせ・ただかず)さん(52歳)です。
あの地震が起きたとき、広瀬さんは、消防の分団長を務めていらっしゃったそうですが、どんな記憶が残っていますか。


広瀬さん:栄村には3つの消防団があります。私は、当時、第1分団の分団長を務めていました。50人から60人ほどの消防団員が属し、4つの集落を担当していました。地震発生時は、正直、頭の中が真っ白になりました。私は、ヘルメットとハッピで、集落の消防ポンプ小屋へ向かいました。現地対策本部の消防団長と連絡を取ろうと、何度も無線で呼びかけました。ようやく消防団長と連絡が取れたとき、ほっとしたことを覚えています。消防団長からは、「各集落の安否確認」「火の元の確認」「ブレーカーを下ろすこと」「灯油タンクが倒れていないかの確認」など、次々に指示が出ました。私はその指示を受けて、消防団員に指示を出していきました。栄村全域での安否確認が終わったのは、地震の発生から4時間ほどがたった朝8時でした。


Q:6年前(平成23年)の経験から、どんなことを感じましたか?


広瀬さん:まず、「具体的な災害を想定した、住民・消防・行政が合同で行う防災訓練の必要性」を非常に強く感じました。また、「消防無線の重要性」を痛感しました。災害が起こった時、携帯電話での連絡には限界があります。複数の人間で同時に情報共有をするうえで、消防無線は、極めて有効でした。消防団員が、団長からの指示を確実に受け取れる環境、全員が情報を迅速に共有できる環境を整えることは、地域の防災・減災を考えるうえで、非常に大事なことだと改めて痛感しました。そのため栄村では、震災後、より、安定的に通話できる消防無線に切り替え、万が一の時に、確実に情報共有できる環境を整えました。


Q:災害への備えとして、具体的にどのような取り組みをしているのでしょうか?


広瀬さん:「防災マップ」や「洪水ハザードマップ」を整備し、随時更新するとともに、各家庭に対して、防災・減災を呼びかけています。また、災害は、地震のほかにも、さまざまな種類があります。特に、栄村は、冬には豪雪となります。去年(平成28年)には「防災マップ(雪対策編)」を作成し、全戸配布を行いました。内容的には雪に関わる注意報・警報の発表基準、除雪作業中の事故発生ケースの種類、雪崩危険箇所を示した地図などを盛り込みました。また、今後は、備蓄物品数や配置場所を記載した計画書の配布も計画しています。


Q:そのほか、防災訓練にも力を入れているそうですね。


広瀬さん:毎年10月に、住民・消防・行政が合同で行う防災訓練を行っています。去年(平成28年)は、「豪雨と地震が同時にきた」という具体的な想定で、100人ほどの村民と共に訓練をしました。煙を充満させた部屋の中で避難を体験したり、バケツリレーによる消火訓練をしたりしました。そのほか、非常食の食べ方の確認なども行いました。また、連絡系統をしっかりと確認するとともに、「情報が迅速かつ確実に届くか」を重視しました。区長からは、区民の避難が無事に済んだかどうかの連絡、消防からは、取り残された人がいないかどうかの連絡。これらの情報が本部にスムーズに届くかどうか、確実に訓練しました。


Q: 震災と復興を経験した栄村には、去年(平成28年)の春、震災復興祈念館「絆」が開館しましたね。


広瀬さん: はい、震災復興祈念館「絆」は、地震の被害や復興の取り組みを後世に伝えるために、栄村が整備したものです。地震が起きた午前4時直前を指したままの時計や、倒壊した住宅や避難所での生活の様子を記録した写真などが展示されています。そのほか、タッチパネルに触れると、当時の様子や復興に向けた思いなどを語る村民の証言を聞くことができます。これまでに5400人ほどが訪れました。また、地震の起きた3月12日には、復興を祈る催しを開いています。今年(平成29年)の3月には、地域の住民やボランティアなど200人ほどが集まり、亡くなった人たちに黙とうをささげました。


Q: 最後に、これからの防災・減災を考えるうえで、広瀬さんはどんなことが重要だとお考えでしょうか?


広瀬さん: 震度6強の地震を体験して感じたのは、想定していないレベルの災害に突然襲われると、本当に頭が真っ白になるということです。特に、一人でいると、何をしていいのか分からない、何から手をつけていいのか分からない。こういった状況になるのも理解できます。地域に暮らす一人ひとりが、地震・豪雨・豪雪・洪水など、それぞれの災害が本当に起きるんだという危機感を持つこと。そのうえで、それぞれの災害ごとに、自分はどう行動するのかシミュレーションし、備えること。これが大事だと思います。更に言えば、栄村で、震度6強の地震が起きたのは、午前3時59分です。多くの人が熟睡していた時間です。早朝・昼間・夕方・夜・深夜。災害はいつ起きるか分かりませんし、1日のうちの何時に起きるのかも分からないわけです。災害が起きる時間ごとの、具体的な行動イメージについても準備する必要があると思います。


<震災復興祈念館「絆」>
開館時間:午前9時から午後5時(入場無料)
定休日:毎週月曜日
お問い合わせ:0269−87−2200

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