【2017年5月8日(月)放送 ゆる〜り信州 「防災の話」より】


長野市長沼地区の取り組み 


長野市長沼地区の取り組みをご紹介します。長沼地区住民自治協議会 会長の竹腰尚男(たけこし・たかお)さんです。
まず、長野市の長沼地区についてご紹介下さい。


竹腰さん:長沼地区は、長野市の北東部にあります。地域人口はおよそ2400人、およそ900世帯が暮らしています。千曲川と浅川に挟まれている地域で、さらに当地域のすぐ下流には「立ケ花狭窄部(きょうさくぶ)」と呼ばれる千曲川のボトルネックとなる土地があり、上流で大雨が降ると長沼周辺に流水がたまってしまうという 特色があります。そのため古くから常に“水害の恐怖”と闘ってきた歴史を持つ地域です。1982年から3年連続で千曲川が増水し堤防決壊の危機にさらされました。古くは、1742年に、千曲川が氾濫し、168人の命が失われ、およそ300戸の家屋が流出したという記録も残っています。そういった特性があるため、豪雨による被害、千曲川や浅川の氾濫、堤防の決壊、家屋への浸水といった災害を想定し、防災活動に力を入れています。


Q:竹腰さんたちは、災害に備えて、「避難のルールブック」も作成したそうですね。


竹腰さん:平成25年に、内閣府の「地域防災計画策定モデル地区」の募集に応募し、承認を得ました。平成25年から2年がかりで検討編集を繰り返して作り上げました。およそ30ページの冊子ですが、長沼地区の防災マップと水害・地震の際の避難ルールをまとめたものです。より具体的にご紹介すると、避難情報の伝達経路、 避難情報発令の目安となる水位、防災情報の入手、洪水避難の心得、より適切な避難に向けて(命を守るには)、被害を減らすポイントといった項目をまとめています。


Q:「避難のルールブック」の中で、どういったことを、住民に、特に強く呼びかけていますか?


竹腰さん:たとえば、“より適切な避難に向けて(命を守るには)”と題して、避難の方法、万が一逃げ遅れた場合の避難、そして避難支援をする時の注意点などが書かれています。避難は徒歩が原則ですので、自力の避難でも2時間程度の避難時間が必要と思われます。早めの避難を呼びかけています。更に、要支援者への助け合いにつ いても呼びかけています。また、“被害を減らすポイント”と題して、畳の移動、衣類の移動、アルバム等の記念物の移動などについてまで書かれています。逃げ遅れた場合の留意点として、「万が一水の中を歩いて避難しなければいけない場合」などの留意点の説明も記載しています。


Q:長沼地区では、水害をはじめとする災害に備えて、大規模な防災訓練を行っているそうですね?


竹腰さん:長沼地区では、毎年6月29日に、防災訓練を実施しています。自主防災会、消防団、赤十字奉仕団、防災指導員・交通安全協会・小学校・保育園・無線クラブなど、300人以上が参加する訓練です。災害に備えて、情報収集・伝達・避難・水防・初期消火・救護などの訓練を実施しています。具体的には、水害に備えた土のう作り、土のう積みの訓練、けが人を手当てし運ぶ練習、臨時のタンカを作る練習などを繰り返しています。また、連絡網の確認と伝達の確認、放水の練習やバケツリレー、炊き出しの練習もこの訓練の中で行います。


Q: 竹腰さんは、毎年の防災訓練をどんな気持ちで臨んでいらっしゃいますか?


竹腰さん: まず、地域住民には我々の地域は水害の大きなリスクを背負っていることを再認識してほしいと思っています。そして、万が一の場合には、命を守ることを第一に考えていただきたいと考えています。その中で、この防災訓練が、自らを守る“自助”、互いに助け合う“共助”を再確認する場となればと考えています。


Q: 最後に、これからの防災・減災を考える上で、竹腰さんはどんなことが重要だとお考えですか?


竹腰さん: 災害そして避難の想定は常に変化しておりまして、何が安全なのか、どこまでやれば安心なのか際限がないように感じられます。申し上げたように、危険性を決して忘れることなく、かといって決してネガティブにならず、過去何百年にも渡って闘い乗り越えてきた先人たちの知恵やがんばりに、敬意を表しつつ、長沼地域の明るい未来をめざして前向きに進んでいきたいと思います。



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