【2017年4月17日(月)放送 ゆる〜り信州 「防災の話」より】


伊那市狐島地区の取り組み 


伊那市の狐島(きつねじま)自主防災会をご紹介します。狐島自主防災会 専門部隊長 北原正義(きたはら・まさよし)さん(69歳)です。
まず、伊那市の狐島地区についてご紹介下さい。


北原さん:伊那市中心部と天竜川を挟んで反対側の竜東地区にある、市内では中規模の地区です。人口は、およそ1600人、世帯数はおよそ700戸です。天竜川と三峰川に挟まれた市内でも低い土地に位置しています。古く からの建物と新しいアパートが混在しているので、大規模地震では古い建物が倒壊するのではと心配しています。また、天竜川と三峰川の氾濫被害にも対処していかなければならないと、防災活動に取り組んでいます。


Q:北原さんの所属する狐島自主防災会についてご紹介下さい。


北原さん:全区民から構成されているので、会員は人口と同じ、およそ1600人です。区内の各種団体の役員が自主防災会の役員を兼ねています。この他に、看護師、重機オペレーター、車の整備士、消防団OBなどから成る専門部隊員がいます。年一回の防災訓練を4月に開催しています。防災講演会や防災に関するアンケート調査なども実施しています。また、年3回、防災会ニュースを発行して、防災知識の啓発にも努めています。


Q:狐島自主防災会の皆さんは、自主的に様々な防災活動をしていることで知られています。平成28年に、大規模なアンケート調査を行ったんですよね?


北原さん:平成28年の7月に、700世帯全てを対象に実施しました。大規模地震が起きる前、起きた時、起きた後の、3つに分けて質問をしました。まず、大規模地震に対する備えとして「日頃の備蓄内容」、「家具の転倒防止の有無」、「自宅の耐震補強」を聞きました。そして二つ目に、「大揺れに遭遇した時にとるべき行動」と「揺れの隙間に行うべき行動」を聞きました。三つめは、「揺れが収まった後の家族の安否を確認する方法」、そして、狐島地区では、5世帯から15世帯がグループとなって、お互いを助け合う“隣組”を形成しているのですが、「隣組がとりあえず身を寄せる一時集合場所での対応方法」、「隣組内で災害弱者の存在の認知」などについて聞きました。


Q:回答結果はどうだったんでしょうか。


北原さん:アンケートの対象は区民全体で回答はおおむね54パーセントでした。まず、備蓄する物の種類が不十 分な世帯が多い印象を受けました。また、4割の世帯が、家具転倒防止の対策をとっていませんでした。さらに、およそ半分の世帯が耐震補強の対策をとっていませんでした。そして、およそ4割の方は大きな揺れがあったときの対応を正しく理解していませんでした。また、家族の安否確認である災害情報伝言ダイヤルを7割以上が知らなかったという結果にも驚きました。


Q: 北原さんはどんな感想を抱き、どんな行動をとりましたか?


北原さん: 訓練を繰り返し行ってきた事柄についてはその成果が現れていると感じました。一方で、訓練になじまない、事前対策や事後の安否確認方法などが低い認識でした。このため、アンケートに続いて行った防災講演会で、必要な知識、対応方法等を繰り返し勉強しました。私自身、アンケートと防災講座を組み合わせて実施することは、効果的と感じました。さらに言えば、地区の防災を真剣に考える上で、訓練にしてもアンケートにしても、多くの区民が参加せざるを得ない手法をとることが必要であるとも感じました。


Q: 防災を呼びかける活動をする中で、大変だなと感じたり、難しさを感じたりすることはありますか?


北原さん: 難しいなあと感じることが2つあります。ひとつは、「アパートに住んでいる人の防災活動への不理解」です。何度もアパートの管理者に対し、居住者の参加を呼び掛けたり、地元防災会へ継続して留まるのかの意思 確認も行ってきましたが、難しい側面があります。もう一つは、いわゆる「災害弱者の問題」です。今の時代、個人のプライバシーの問題などもありますので、防災会が、災害弱者を弱者としてリストアップすることは難しいです。そこで、私は、5軒から15軒で形成される「隣組」の力を信頼したいと思っています。狐島地区には、隣組が70あまりあります。隣組は、言葉に出さずともどこの家庭にどんな災害弱者が住まわれているかをあうんの呼吸で知っています。そんな隣組に、お任せすることが良い結果につながると思い、訓練でも、励まし合いや安否確認をお任せしています。


Q: 最後に、これからの防災・減災を考える上で、北原さんはどんなことが重要だとお考えですか?


北原さん: 「防災リーダーの育成」です。リーダーの判断で何十名もの尊い命が救われたこともあります。行政が主導して「防災リーダー育成学級」みたいなものを作っていただき、県内各地にリーダーを育て強い防災組織が存在する強じんな県土となることを願っています。



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