【2017年4月10日(月)放送 ゆる〜り信州 「防災の話」より】


飯田市危機管理室の取り組み


新コーナー「防災の話」。県内各地の自治体や自主防災組織の方と電話をつなぎ、それぞれの地域の防災の取り組みや、防災に役立つ知識をご紹介するコーナーです。
初回は、飯田市の防災の最新状況について、飯田市危機管理室の後藤武志さんにお話を伺います。
飯田市の取り組みを伺う前に、平成28年12月、新潟県糸魚川市で起きた大規模火災についておたずねします。後藤さんは、これまでに2度、防災面での協力のため、糸魚川市に訪れたそうですね。


後藤さん:大規模火災が起きた5日後に、市長からの指示がありまして、見舞金と今後のまちの復興への協力を申 し出る文書を持って駆けつけました。というのも、飯田市は、昭和22年の4月20日に戦後日本三大大火のひとつと呼ばれる「飯田大火」を経験しています。226万坪が消失し、3500棟あまりが消失しました。今年、70年を迎えます。飯田大火からの復興で培った知見や経験を生かしてもらおうと、糸魚川市の現場を視察し、関係者と懇談しました。


Q:糸魚川の現場の様子はどうでしたか。


後藤さん:強い南風による飛び火により、1万坪を超える範囲が消失していました。臭いも鼻につくもので、衝撃的でした。そうした中でも銀行は営業を再開していたり、一般住宅も2棟はほとんど無傷で残っていたり、構造の違いや事前の備えをしていたか否かで状況が異なることには驚きました。また、住民の皆さんが「とにかく何もできなかった」と言っておられたことも印象に残りました。


Q:そういった大きな災害、更にはそこからの復興を経験した飯田市では、近年、「防災ハザードマップ説明会」を市内各地の集会所で開いています。後藤さん、ハザードマップとは、改めて、どんな地図なのか、教えてください。


後藤さん:ハザードマップは「災害予測地図」とも呼びます。飯田市でお配りしているマップは、大きさが新聞2 ページ分で、飯田市内の地区別地図が印刷されています。災害リスクごとに色分けしています。たとえば、「土石流」や「がけ崩れ」「地滑り」などの土砂災害のおそれがある区域は黄色、人命の大きな被害が生じるおそれがある区域は赤で囲まれています。また、浸水が想定される区域なども、想定される水深がわかるよう水色や薄紫などで色分けしています。


Q:スタジオにも、後藤さんに飯田市のハザードマップを送って頂きました。災害のおそれがある区域が一目瞭然。更に、地図上の至る所に、様々なマークがありますね。


後藤さん:災害時に利用できる資源として、避難施設や病院、消防や警察、ヘリポートなどがどこにあるかを記しています。また、避難施設や避難地には番号をつけて、電話番号も記載しています。


Q: まさに、もしものときに、欲しい情報がこの1枚に凝縮されているわけですね。後藤さんは、市民の皆さんにこのハザードマップを説明するとき、どういったことを強調されていますか?


後藤さん: 自分のまわりは、何に気をつけなければいけないのか。そこを読み取ってほしいと思います。そして、災害時の資源は周りに何があるのか、そうしたことも学んでほしいと思います。


Q: もうひとつ、ご紹介したいことがあります。実は、このハザードマップの裏に、「わが家の避難計画づくり」という、自分で作れるシートがついているんです。これは、飯田市が平成27年度に独自に開発したものです。まず、私の方からちょっとご説明します。1行目に「わが家の避難計画づくり 災害の種類ごとに、 いつ、どこへ、どこを通って避難したらよいか家族で話し合ってみよう」と書かれています。話し合う項目は、4つ。一つ目「避けるべき“難”は何?」二つ目「いつ?」三つ目「どこへ?」四つ目「何に注意して?どこを通って?」。4項目全てに、シールを貼るスペースがあります。シールは50種類以上用意されていて、世帯ごとに、もしものときの選択肢を選ぶことができるわけです。後藤さん、どんな思いからこのシールを作ったんでしょうか?


後藤さん: 人命に大きな被害が生じるおそれがある区域だけでも3000人以上が居住していて、マップづくりだけでは追いつかない現状があります。また、同一集落でも、飯田市は山や谷、川、用水路などに囲まれていますからに世帯によってリスクが異なるというのが現実です。世帯ごとに、命を守るための事前の避難計画づくりを簡 単に作成できる新しいツールが必要だと思っていたんです。


Q: 50種類以上あるシールの中から選ぶだけで、簡単に作成できるわけです。たとえば、「どこへ?」という項目に対する選択肢は、近くの公民館・学校・親戚宅・隣の〇〇さん宅・高台の駐車場・〇〇集会所・高さがあり水がこない場所・ひらけた、斜面に囲まれていない場所・息子や娘の家・旅館ホテルと、多岐に渡っています。実際に、このシートを作成した市民の方からは、どんな声が上がっていますか?


後藤さん: 避難するときは、みんなでまとまって学校の体育館に行くものという固定観念があったのが、そうではなく、自分自身の判断でもっと早く、行きやすいところへ逃げれば良いことがわかったというお声をいただいています。説明会をやっても、分かる人は、どんどんシールを貼りたくて説明する前に貼り終える人もいるくらいです。


Q: このシートは、飯田市以外の地域でも、広く利用できそうですね。欲しいという方はどうすればよいですか?


後藤さん: ハザードマップの更新を行った地区については、平成29年4月から約1時間の説明会を開催いたします。前半30分はハザードマップの説明、後半の30分は、わが家の避難計画づくりの説明を行います。他の地区や市外の方でご興味のある方は、お手数ですが飯田市役所危機管理室までご連絡ください。個別に送付させていただきます。また、飯田市のWebサイトにも掲載します(平成29年5月12日現在)。


Q: 今年(平成29年)は飯田大火から70年。これからの防災・減災を考える上で、後藤さんはどんなことが重要だとお考えですか?


後藤さん: 各自のまわりに、どのようなリスクがあるか考えて、家族や周囲の人とそれを共有し、事前に何ができるかを考え、訓練をしておくこと。これに尽きます。それも、人に言われてやるのではなく、自らが主体的に取り組むことが重要です。行政は、自助、共助の黒子です。住民の皆さん、地域の皆さんの取り組みがより一層進むよう支援をすることが仕事です。今後も、わが家の避難計画づくりなどのアイテムを開発し、活用することで、地域の防災力を高めていきたいと思います。


※ ご紹介した、ハザードマップと、わが家の避難計画づくりについてのお問い合わせは、飯田市危機管理室0265−22−4511までお問い合わせ下さい。


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