【2014年9月3日(水)放送 イブニング信州より】
「土砂災害警戒情報」が出された際には、警戒を強める必要があるのはもちろんですが、土砂災害の発生は予測するのが難しいと言われています。
こうした中、インターネット上の「つぶやき」を調べて、土砂災害などの「兆候」の察知につなげようとする研究が始まっています。
2014年7月、長野県南木曽町を大規模な土石流が襲いました。
男子中学生が巻き込まれて亡くなったほか、住宅など43棟が全半壊するなどの被害が出ました。
土石流発生の20分前。
実は、こんなつぶやきが発信されていました。
「雨が雨がすごいです。川も濁流です・・・」。
投稿したのは、南木曽町に住む伊藤恵理さんです。
伊藤さん:「当時は車で外に出ていたが、白い雨が降っていて雨量も多い。これはやばいなと」。
土砂災害の前兆とも考えられる現象でしたが、伊藤さんは、ただ何気なくコメントしたといいます。
こうした無意識のつぶやきに潜む情報を、防災に生かそうという研究が始まっています。
国土交通省と民間の研究所の合同チームです。
土砂災害の前兆現象をつぶやきから見つけるシステムの開発を目指しています。
研究チームメンバー:「本当にこんなときよくつぶやいたなというタイミングでのつぶやきも入っている」。
「危機感や切迫感を共有するのに使えれば」。
研究チームでは、まず、実際、どんなつぶやきが投稿されているのかを調べることから始めました。
題材に選んだのは、2年前に熊本県の阿蘇地域で発生した「九州北部豪雨」です。
災害当日のつぶやきの数々。
その中には、前兆現象と考えられる「地響き」という言葉が含まれていました。
国土技術政策総合研究所 國友 優 室長:
「住民への聞き取り調査の中で地鳴り、地響きがしたという証言が得られているのとほぼ同じ時間帯に、地鳴りや地響きがして怖いというツイートがなされている。地鳴りみたいなものについては、前兆現象だと捉えて避難につなげていただくのは有効でないかと考えている」。
開発を目指しているシステムです。
ツイッターのつぶやきを集めて民間の研究所のコンピューターに取り込みます。
その中から土砂災害の前兆現象を「地響き」といったキーワードから自動的に捜し出し、
自治体の担当者や一般の人に提供する仕組みです。
さらに、こうしたキ−ワードを多く見つけることが課題になっています。
注目しているのは、「ヤバイ」という言葉です。
ネット上で災害があった時によく使われています。
ネット上のつぶやきには、信頼性などの面で課題も残されています。
その上で、専門家は、災害の情報をいちはやく把握できる大きな可能性を秘めていると指摘します。
東京大学総合防災情報研究センター 田中 淳 センター長:
「災害が実際に発生しているという情報を収集する系統が弱かった。どこで何が起きていて何が危なそうだという情報を確認するためのトリガー(引き金)として非常に有効」。
ネット上の無数のつぶやきの中からリアルタイムで、前兆現象を表している言葉を効率よく見つけ出すのは簡単ではないと言うことですが、人の命を守ることにもつながる情報ですので一刻も早い開発が期待されます。