運用が始まった特別警報

【2013年9月3日(火)放送 ラジオ「防災特集」より】

2013年8月30日から、これまでの警報より緊急性の高い防災情報として、「特別警報」の運用が始まりました。

Q:「特別警報」とこれまでの警報との一番の違いは何でしょうか?

A:「特別警報」は、これまでの警報の基準をはるかに超えるような、重大な災害の危険性が非常に高いときに、より強く警戒を呼びかけるため、導入されました。ひとことで言うと多くの命にかかわる非常事態になっていること、深刻な状態になる可能性が高いことを端的に伝えるために発信される情報です。

Q:非常事態、深刻な状態というのは具体的にはどんな状況を想定しているのですか?

2006/07岡谷市
A気象庁では、その地域にとって50年に一度あるかないかの現象が起きている場合、または発生が予想された場合としています。

Q:どんなケースが挙げられるのでしょうか?

A▽2013年7月28日に山口県と島根県で降った大雨、▽8月9日の秋田県と岩手県での豪雨、▽それに8月24日に島根県で降った記録的な大雨が「特別警報」に相当します。

Q:導入直前に、「特別警報」級の大雨が立て続けにあったんですね。

A:気象庁ではいずれも記者会見を開き、「経験したことのないような大雨になっている」
「命を守る行動をただちにとって下さい」と呼びかけました。

Q:いままでの警報だけではだめなのでしょうか?

2011/9和歌山県新宮市
A:はい。少しさかのぼりますが、▽平成23年9月に紀伊半島をおそった豪雨も「特別警報」に相当します。このときも「大雨警報」などが出されましたが、速やかな住民の避難に結びつかなかったのです。

ほかにもここ数年の大きな災害の際「大雨警報」や「記録的短時間大雨情報」といった防災情報を繰り返し発表したにもかかわらず避難や被害防止には結びつきませんでした。
そこで気象庁は、強い危機感をわかりやすく伝え、身を守ってもらうために、「特別警報」の導入を決めました。

Q:一人ひとりに身を守る行動をとってもらうために、より強く、災害の危険性を伝えようということですね。その「特別警報」にはどんな種類があるのでしょうか?

特別警報
A:気象分野では「大雨」と「大雪」、「暴風」、「暴風雪」、「波浪」、それに「高潮」の6種類です。

ただ、例えば大雨の場合は、まず「大雨注意報」や「大雨警報」などの情報が出ます。
そのうえで「大雨特別警報」が発表されることが考えられます。場合によっては、予想を超える大雨で急に状況が悪化し、すでに避難することが難しい状況になってから、「特別警報」が発表されるケースも考えられるのです。

Q:そうした場合、私たちはどのように行動したらいいのでしょうか?

A:その時置かれている環境の中で「できる限り安全を確保する」ことが必要になります。例えば、▽大雨で浸水が広がっている地域では、無理に外を歩くよりも建物の2階以上に上がるとか、▽裏山が崩れる危険性がある地域では、近所の頑丈な建物に逃げるか、家の上の階のできるだけ斜面から離れた部屋に移るとか、できるかぎり安全なスペースを探して身を守ることが必要となります。

Q:避難するのが難しくなる前に、早めの行動を心がけたいものですね。

A:これまで通り、警報や避難勧告・指示が発表された段階から、早めに安全な場所に避難しておくことが、身を守る上で最も有効なのです。

Q:では、「特別警報」はどのような形で伝えられるのでしょうか?

A:「特別警報」は、行政機関やさまざまなメディアを通じて伝えられます。

画面の例
特別警報が発表された場合、NHKのラジオではラジオ第1とFM放送で場合によってはラジオ第2でも速報します。またテレビの字幕では▽数十年に一度しかないような災害の発生が迫っていることを伝えた上で、▽大雨や暴風といった特別警報の内容と▽対象の市町村を速やかに伝えます。

訓練用の画面
さらに、ホームページやデータ放送を通じて「特別警報」の情報をお伝えすることにしているので、そうした情報も参考にしてほしいと思います。

「特別警報」ができるからと言って、これまでの警報が軽くなるわけではありません。「特別」じゃないから大丈夫、という誤解は非常に危険です。

身を守るために、警報が出るような状況になったらこれまでと同様、早めの避難や行動を心がけてください。