TEMAE MISO ~「失恋をKIRINJIで」煮込む！

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NHKの若手職員が、自分のラブやライクを煮込みます。NHKの番組に触れながらなので
ちょっと手前味噌…かもしれませんがNABEの具材に添えるMISOだと思って、お気軽にご賞味ください。
第12弾は大阪放送局所属・ホモサピエンスA/B（ペンネーム）の記事です！ =================================================================

ホモサピエンスAの失恋

失恋した。辛い。ダサい自分を消し去りたい。
鍵を開ける。靴を脱ぎ捨てる。トイレへ駆け込む。
何もかも吐いてしまいたいのに何も出てこない。
お酒で記憶は消えないタイプ。
ベッドに転がり込む。
ため息は吐ける。

こんな時は音楽を聴きたくなる。
音楽でも聴かないとやってられない。

憧れの人にフラれて爆泣きしてたあの子は
aikoを聴いてた。

遠距離恋愛でさよならした先輩は
オザケンを聴いてた。

「あんたつまんない」の一言で毎回別れる友だちは
Awichを聴いてた。

私の場合はKIRINJI / キリンジに限る。
憧れの美しさに浸るためでもなく、
ラブリーな言葉で自分を慰めるためでもなく、
相手に中指を立てるためでもなく、
1人失恋に酔いしれてごまかすために。

1曲目はこれ。

お洒落でクサい言葉使うくせに嫌味がなくて、
でも天邪鬼で大事なことは私に言わせて。
最後の最後までそうだった。

今日のドラマの主役は私だ。
失恋を演じさせれば右に出る者はいない。
回想シーンにかかるような曲を探す。

「最後に何か飲む？」
「ちょっと甘くて重くて、でも明日に残らないのを」
「ブランデーベースでそんなのがあったな」

頬杖ついて物憂げな顔で窓の外を見てるような、
そんな影のある、大人な人だと思ってた。

もっとクールに失恋したい。
別れをお互いに感じて、
こんな言葉のやりとりをして、
そこに木枯らしが吹いて、
お互いにお互いの孤独を愛せるような、
そんな別れ方をしたい。

でもそこまで大人にもなりきれない。
ティースプーンに角砂糖を置いてブランデーを注ぐ。
火を灯し、溶け合うまで待ってから紅茶に加える。
これがティーロワイヤルの作り方。
頬を少し赤らめながら私に教えるあなたを見て、
背伸びしてるのは同じかって思ったんだった。

明日も早い。
私がどれだけ酔ってようが狂ってようが
社会は回ってる。

だからもうちょっと酔わせてほしい。
私の失恋の供養は私にしかできない。

あなたは私のこと強い人だっていうけど、
私は孤独を愛せてなんかいない。
溢れてしまいそうだから、蓋を被せているだけ。
時間が解決する？たぶんそうなんだろうね。
あなたのキザな言葉なんて聞かなければよかった。
思い出すことはやり過ごすしかないのに。

私もキリンジが好きだったけど、
あなたがこの曲を好きだって言うのは嫌だった。
別れに酔いしれるような曲を好きになりたくなかった。

今ごろあっちで、あなたも聴いてるんでしょう。
無駄に高いウイスキー飲みながら。

酔いが醒めていく。
あなたくらい酔えたら幸せだったかな。
私はどれだけ飲んでもシャワーも浴びるし、
歯磨きもするし、
朝も早起きするよ。
そうやってきちんと日常と向き合ってやり過ごす。

私たちは孤独になれる。
私よりあなたは苦手そうだけど、
私の孤独を大事にできるあなたなら、たぶん大丈夫。
知らんけど。

明け方に起きられたから、海岸まで走ってみた。
今日は私の孤独記念日。

人間たちが街に出てくる。
サル目ヒト科のヒト属、ホモサピエンスたちの朝。

ホモサピエンスAの失恋。
さよなら、ホモサピエンスB。



【マチスコープ】NHK Eテレ　毎週金曜　午前7時
「地下鉄なのにトンネルを出ちゃった。なぜ？」
「ビルの根本はどうなっているの？」など、
街で出会う様々な“？”。
「マチスコープ」は、そんな疑問にタイムワープ機能や
透視機能で謎を解いてくれる秘密のゴーグル。

出演:佐藤二朗

音楽:KIRINJI
われら サルもく ヒトか の ヒトぞく
かりして ドングリひろって マチつくる

（大阪放送局・ホモサピエンスA/B）