いちのせき推し
2022/01/14

北欧がルーツ
一関市“矢越”の伝統野菜

「食物繊維やビタミンが豊富で美肌効果大」。

「ホクホクの食感は和食にも洋食にも最適」。

「北欧ルーツのちょっとおしゃれな伝統野菜」

そんなお得感満載の食材が岩手県一関市のとある地域で生産されているのを皆さんはご存じでしょうか。

北欧と一関 共通するのは···

一関市の東端に位置する、室根町矢越地区。
標高895メートルの室根山の麓近くのこの地域で、その食材は作られています。
生産者の小野寺寛さん(72)に案内してもらいました。
取材したのは1月上旬。畑は雪で一面真っ白に覆われ、何が植えられているのか分かりません。

雪を取り除いていくと緑の葉っぱが。
土の中に埋まっていたのは「矢越かぶ」という伝統野菜です。

一般的なかぶと比べると、大ぶりでごつごつしています。
やまぶき色に似た色合いも特徴的です。
食物繊維やビタミン、ミネラルなど栄養豊富。

スウェーデンなど北欧が原産の「ルタバガ」という西洋かぶがルーツなのだといいます。

この地区で「矢越かぶ」の生産が始まったのは明治時代にさかのぼります。
種売りの行商人によって持ち込まれたのだと伝えられています。

北欧にも似た冷涼な気候の一関市。

糖分があり雪の中でも成長を続けることから盛んに栽培されるようになり、ご飯のかさ増しやおやつに重宝されてきました。

しかし、戦後、食糧事情の変化で、生産が途絶えてしまいます。

その「矢越かぶ」の生産を復活させたのが、この地区で生まれ育った農家の小野寺さんでした。地域おこしの特産品にしようと、27年前、宮城県内で栽培が続けられていたことを突き止め、種を分けてもらい、自ら生産を始めたのです。

小野寺 寛さん 「一時途絶えたと言うことで、“幻のかぶ”とも言われていました。感動ですよね。この地ならではのものを特産品にしたいという要望になんとかして応えたいと思っていたときの発見でしたので、この機会をいかさない手はないなと思い、復活に取り組みました」。

極寒の地で手間暇かけて

収穫された「矢越かぶ」は、深さ数十センチに掘った「土室」で2週間ほど寝かせます。
この工程によって熟成され、くさみがとれ甘みも強くなるのだといいます。
そして、断面も鮮やかな黄色に変化します。

手間暇かけた「矢越かぶ」は、堪能できるレシピも様々です。

最も伝統的な料理は「かぶぶかし」。

矢越かぶともち米と小豆を混ぜ込んで蒸し上げる昔ながらのおこわです。
加熱することで、かぶの色味が鮮やかになり、食欲をそそります。
千切りと角切りの2種類に切り分けるのは、彩りや食感を楽しんでもらうための工夫です。
栽培が途絶える前を知る小野寺さんのお母さんが教えてくれたという秘伝のレシピです。
できたてをいただいてみると、かぶの香りと甘さがじわっと口の中に広がります。

煮崩れしにくいのも特徴で、「煮しめ」にも最適です。
ほくほくと、おいものような食感で、甘さもとても感じられます。

さらに洋食との相性も良いことも少しずつ知られるようになりました。
一関市内のフレンチレストランではチャウダーグラタンなどを提供しています。
ポテトサラダに混ぜるのもおすすめだと言います。

小野寺さんも新商品を開発中です。色合いと風味を生かしたスープです。さらにアイスクリームも試作中だといいます。

小野寺 寛さん 「ヨーロッパではルタバガがいまも重宝されているという事実があります。「矢越かぶ」も明治の頃から食されていたかぶぶかしだけじゃなくて、洋食としての食べ方も普及さえすればもっともっと需要が増えると思いますので、それに応えて行きたいです。私にとって大事なもので何にも代えがたいものなので、今後も栽培や普及に関わりを持っていきたいです」。

一時は途絶えた「矢越かぶ」ですが、いまでは、市内のほか首都圏などへ年間200キロが出荷されています。
出荷されるのは12月から3月ごろまでで、地元の「道の駅むろね」では秘伝のレシピで作られたかぶぶかしも販売されています。
北欧がルーツ、一関市でしか味わえない伝統野菜、皆さんも是非味わってみてはいかがでしょうか。

(NHK盛岡放送局 ディレクター 及川麻紀)