いわてEYE
2021/06/08

進む“水福連携”その背景は

「水福連携」という言葉をご存じでしょうか。
「水」は水産業で「福」は福祉を意味します。
人手不足に悩む水産業の現場で障害のある人たちに働いてもらおうという取り組みで、岩手県は2年前から始めました。
どういった背景があるのか取材しました。

アワビ

養殖用の水槽に所狭しと、くっつくあわび。
その数はおよそ300万匹にもなります。

大船渡市の養殖業者「北日本水産」は40年前からあわびの養殖を始め、国内最大級の規模にまで成長しました。
業務の拡大につれて水槽が増え、260にも及びます。
その水槽を掃除するための人手に頭を悩ませていました。

古川翔太

古川翔太 取締役営業部長

「水槽が汚れているとアワビが成長しなかったり死んでしまったりするので、月に2回は全部の水槽を掃除することになっている。
現場の社員で掃除を行っていたが、徐々にあわびの生産量が上がるにつれて逆に掃除のペースが遅くなった。
求人を出したが、なかなか応募をかけても人は来なかった」。

岩手県内で漁業や養殖業に取り組む人の数は減少の一途をたどっています。
平成30年の就業者数は6327人と20年前の半数にまで減り、慢性的な人手不足となっています。
古川さんが頼ったのは市内にある障害者の就労支援事業所「かたつむり」。
週に3日、1日あたり3人程度が水槽の掃除に取り組みます。
水槽にたまった餌の食べ残しや「ふん」などを男性たちが黙々と吸い取ります。
あわびの品質に関わる大事な仕事です。
最初は心配なこともありましたが、古川さんは、真面目に仕事を続ける姿に信頼を寄せるようになったと言います。

古川翔太 取締役営業部長

「地道な作業ですが、かなり丁寧さが必要な仕事です。
彼らには非常に適性があるのではないかと思っています。
作業に慣れて、どんどん掃除の時間が早くなっているので、非常に頼もしく感じています」。

水福連携

「水産」と「福祉」の連携、いわば「水福連携」の取り組みは2年前から始まりました。
岩手県が福祉分野に人脈のある社会福祉協議会に委託して「コーディネーター」を配置。
人手が欲しい水産と雇用の場を確保したい福祉、それぞれの需要を掘り起こし、間を取り持つ役割を果たしました。

その成果を、「マニュアル」にまとめ、成功例を紹介することにしました。
工賃や就業時間の設定方法など具体的な疑問に答えるとともに、障害を持つ人の特性も掲載し、事業者側に配慮を促しています。

岩手県復興くらし再建課 藤島 修 産業再生担当課長

「就労までの流れや障害の特性なども含めて載せている。
お互いにとってウィンウィンの関係になるような取り組みをしていきたい」。

芯抜き

障害者の就労支援事業所にとっても「マッチング」は大きな後押しとなりました。

大船渡市の事業所「星雲工房」はマッチングによって地元の水産加工会社からわかめの「芯抜き」の作業を任されました。

「芯抜き」はわかめを「葉」と「茎」の部分に分ける作業です。
1本1本、手作業で行うため、根気強さが求められます。

この事業所では、1日あたり10人ほどが作業に参加し、働く喜びや地域とつながる幸せを感じているといいます。

星雲工房では運営する喫茶店の利用客の落ち込みなど新型コロナの影響によって売り上げが2割減少。

影響が出始めた去年の春にスタートしたわかめの「芯抜き」は売り上げの減少をカバーしてくれました。

星雲工房 戸羽幸枝 施設長

「なんとか、ほかの仕事でカバーしたいと思っていたけれど、去年1年間は厳しい状況だったので、本当に助かるし、ありがたい。
みんな集中して芯抜きをやっていて、すごく性に合っていると思う。
これは「私たちの作業だ」と思って頑張っているのだろう」。

水産と福祉を結びつける「水福連携」の取組み。
互いの苦境を乗り越える新たな一手として注目を集めそうです。

大山記者

盛岡放送局 記者

大山 徹

平成21年入局。県政を担当。

3児の父。

趣味は剣道と読書。