いわてEYE
2021/06/01

"コメ余り"で価格下落 県内の農家は

「コメ余り」がいま全国で深刻になっています。
国内の主食用米の需要は、食生活の変化や人口減少の影響で右肩下がりとなっていますが、コロナ禍で外食需要が落ち込み、追い打ちをかける事態になっています。
こうした中、国は今年“過去最大の減産”を全国の農家に求めることになりました。
コロナ禍で岐路に立たされている県内のコメ農家を取材しました。

消費が落ち込むコメ

滝沢市にあるJA全農いわての倉庫です。
5月に訪れた際には、去年秋に収穫された1万トン近くのコメが出荷されないまま積み上げられていました。
この倉庫で保管しているコメの量は、外食需要の落ち込みで去年の同じ時期から1000トンあまり増えていて、コメの価格の大幅な下落が懸念されています。

JA全農いわて米穀部 杉村靖次長

「例年であればもっと順調に、この倉庫からどんどんお客さんのほうに出荷されていくんですけど、コロナの影響でそこの出も少し鈍いような感じで、在庫がなかなか減っていかない状況です」。

需要に見合った生産へ 手厚い転作支援

国はコメの減産を進めようと、農家に作物の転換を求めてきました。
その引き替えとして17年前から支給されてきたのが助成金です。
緑は販売価格、赤は国の助成金を示しています。
10アール以上転作に協力した農家に支給され、中でも飼料用米は、最大で販売価格の10倍ほど出ています。
加えて今年度から岩手県は、5000円の補助を新設(黄色)。
国も同額を支給することになり、飼料用米は主食用米よりも高い収入を得られるようにしました。
岩手県内では今年、コメの価格を維持するために1200ヘクタールの減産が必要とされていて、国は農家にこの制度を活用するよう促しています。

美味しい岩手のお米 作り続けた農家は

雫石町の農家、畑武巳さんです。
半世紀以上にわたってコメを育てています。これまで国の要請にしたがって飼料用米の生産に取り組んできました。
「銀河のしずく」をはじめ、岩手のブランド米を食卓に届けてきた畑さん。
家畜のえさとなる飼料用米を作ることには、もどかしさを感じているといいます。

雫石町の農家、畑武巳さんです。
半世紀以上にわたってコメを育てています。これまで国の要請にしたがって飼料用米の生産に取り組んできました。
「銀河のしずく」をはじめ、岩手のブランド米を食卓に届けてきた畑さん。
家畜のえさとなる飼料用米を作ることには、もどかしさを感じているといいます。

雫石町の米農家 畑武巳さん

「飼料用米を作れ、転作しろというのに対して、抵抗がないと言えばうそになるわけです。今年は特に、飼料用米の作付面積を増やしてくれと言われて生産に取り組んでいます」。

畑さんが代表を務める農業法人のことしの作付計画です。
60ヘクタール近くある水田のうち、主食用のコメは半分の33ヘクタールにとどまり、これまでで最も少なくなっています。
国が継続して作付転換を呼びかける中で、補助がいつまで続くのか、畑さんは不安を感じています。

雫石町の米農家 畑武巳さん

「以前からすると非常に飼料用米の割合が大きくて、でも今のコメ余りの中では転作をやらなくちゃならないと思っています。国が飼料用米に対して補てんをしていますが、それをこのまま続けてくれればと思います。それがなくなったときには、農家は大変だなと思います」。

転作農家の取り組み

一方で、転作に前向きに取り組む農家もいます。
花巻市の戸来邦次さんです。田植えはすでに終え、野菜の栽培に取りかかっています。

力を入れているのはピーマンです。17年前に転作し、栽培を始めました。
単価が高い反面、ピーマンへの転作には資金も人手もかかるため、近隣の農家に呼びかけ、共同で生産することにしました。

花巻市の米農家 戸来邦次さん

「生産の規模が小さいと大型機械を導入しても経費倒れで意味がないんです。コメの需要が下がり続ける中で、転作として野菜と大豆をやろう。野菜は若干の経験があるので、まず1年2年やってみて、よかったら取り組むという考え方ではどうかと言って、近隣の農家の皆さんに協力を仰いだんです」。

年々、野菜の生産割合は拡大。コメよりも単価が高い野菜は、貴重な収入源になっています。
戸来さんは、経済の情勢に左右されずに収入を確保できる作物を育てることが重要だと感じています。

花巻市の米農家 戸来邦次さん

「コメを多く作ると安くなる、そういう今の経済の状況ですから、みんなで力を合わせなきゃならないと思います。いまやコメはなくてもいいような感じにも受け止められますが、そのうちコメが大事になるときがまた来るだろうと思うので、私も継続してコメと野菜の両方を作っていきたいと思います」。

転作ありきではなく収益性の確保を

農業政策を担う県の担当者は、コメ農家の経営を安定させるには転作への助成金だけでなく、販路の拡大などコメの収益性そのものを改善する取り組みも必要だと考えています。

岩手県農林水産部 藤代克彦農政担当技監

「新型コロナの影響でコメの作る量を考えなきゃいけないというのは、非常に残念だと考えていますが、家庭での消費をいくらかでも伸ばせるように、インターネットを通じたPRや県内での消費拡大、また、国内だけでなくて海外への輸出といったように、マーケットの拡大を進めていきたいと考えています」。

矢野記者

盛岡放送局 記者

矢野裕一朗

平成30年入局。県政を担当。

パン派ではなく圧倒的にコメ派です。
好きなおにぎりは塩むすび。