インタビュー
2021/07/06

キャッシュカードがトランプに・・・
被害女性が語る「すり替え」の手口

キャッシュカードを入れたはずの封筒。しかし中から出てきたのは、トランプでした

「キャッシュカードが入っているものと信じ込んでいたから、とにかくびっくりして。腰が抜けてしまった」。

そう語るのは、盛岡市に住む80代の女性。

キャッシュカードをだまし取られ、詐欺の被害にあいました。

普段からこのような特殊詐欺の注意について耳にすることも多く、気をつけていたという女性。今回だまされたことのショックで、「人を信じられなくなった」といいます。
同じような目にあう人が1人でも減ればと、被害にあった経緯を詳しく話してくれました。

「気をつけていたのに、まさか自分が・・・」
被害女性は語る

午後1時ごろ。番号非通知で自宅に電話がかかってきました。
女性が応対すると、相手は市役所の職員を語る男。「還付金の案内は届いているか」と聞かれます。

女性が「届いていません」と答えると、確認のために必要だとして使っている金融機関を聞かれました。女性は男に使っている金融機関の名前を伝えました。

いったん電話が切れた後、再び番号非通知で電話がかかってきました。
今度は自分が使っている金融機関の職員を語る男からでした。

男は「他の人のところに案内がいっていたので、振り込みが遅くなった」と謝罪した上で、すぐにその場で振り込みの手続きを済ませたと女性に伝えました。

しかし、話はそこで終わらず・・・

金融機関職員を語る男

「キャッシュカードが古いため新しいカードに取り替える必要があります。4桁の番号が必要です」。

被害女性

「昔からお世話になっている金融機関なので、すっかり信用してしまって。ああ、(現金を)下ろす時のって、4桁言ってしまったんですよ」。

さらに・・・
電話の途中、「カードの確認に来ました」と中年の女が自宅を訪れます。

玄関先でキャッシュカード2枚を手渡すと、女はカードを封筒に入れました。

被害女性

「すごく親切な印象を受けました。わざわざ家に来てくれるんだなって。話し方もおだやかで、優しい感じで」。

そして、確認した証として必要なため、印鑑を持ってきてほしいと女は言います。
女性が印鑑を持って戻ってくると、女は封筒に印鑑を押したうえで、「大事にしまってて下さいね」と女性に手渡し、去って行きました。

しかし・・・
ほどなくして女性は、それまでのやりとりに違和感を感じ始めます。

被害女性

「キャッシュカードは他人に渡すもんじゃないって、家族に常々言われていることも思い出して、なんだかおかしいなと」。

そして家にいた義理の娘に一連の出来事を伝えます。義理の娘は、すぐに特殊詐欺を疑い、渡された封筒を開けるよう促しました。
開けてみると・・・

中から出てきたのは、キャッシュカードではなくトランプ。女性が印鑑を取りに玄関を離れた間に、封筒ごとすり替えられていたのです。

義理の娘はすぐにキャッシュカードの利用を止める手続きを行い、警察に相談。口座にあった現金9000円が引き出されていたことが分かりました。

被害女性

「頭が真っ白になった。年金の通帳で、額は微々たるものだけど、普段の生活費や孫へのおこづかいに使っている。年金でやりくりしている高齢者の財産をだまし取るなんて、許せない」。

当時自宅にいた義理の娘も、未然に防げなかったことを悔やみます。

義理の娘

「よく聞く手口で注意はしていたつもりなんですが、とうとう身近なところでやられたなって。家にいたのに気づいてあげられなかったことが悔やまれます」。

以来、女性は電話の音を聞くのも怖くなったといいます。

被害女性

「電話くれば身震いするっていうかな。なんとなく恐怖症になったっていうかね。ショックは大きかったです」。

「なぜだまされてしまうのか 詐欺グループの巧妙な手口

被害が後をたたない背景には、手口の巧妙化が指摘されています。
今回のケースでは、女性が最初の電話を受けてからキャッシュカードをだまし取られるまで1時間足らず。3人の人物が入れ代わり話を持ちかけ、家族に相談する余裕もなくカードがだまし取られました。
詐欺に気づくには、誰かに相談したり立ち止まって考えたりする時間が必要ですが、その時間を与えないようにするのも犯行グループの手口の一つです。

被害防ぐには 「自分もだまされるかも」という意識を持つことから

岩手県警察本部 厚楽英寿 特殊詐欺対策係長

「まず第一に、自分も騙されるかもしれないという意識を持ってほしい。相手は毎日のように詐欺の電話をかけているプロなので、相手のペースにすぐに持っていかれてしまう。ナンバーディスプレイで非通知のものは電話に出ないとか、留守番電話設定を常にしていることで、相手が誰であるかを確認してから電話に出るなどの物理的な対策をとっていただきたい」。

新たな手口について知っておくことも必要です。
最近では新型コロナウイルスのワクチンに便乗した不審な電話や訪問も確認されています。

ワクチンの接種や予約の代行にお金がかかることはありません。こういった話も、詐欺の予兆といえます。

特殊詐欺被害対策ポイント

☑ 非通知の電話には出ない 留守番電話設定にする

☑ 相手の語る機関(金融機関、自治体など)に直接問い合わせて確認する

☑ 家族や警察にすぐに相談する

☑ 最新の手口について知っておく

残念ながら、県内でキャッシュカードのすり替えをはじめとする特殊詐欺の被害は後を絶ちません。1人でも多くの人が「これは詐欺だ」とすぐに気づけるよう、今後も様々な手口や対策を取材していきます。

梅澤記者

盛岡放送局 記者

梅澤 美紀

2020年入局 警察・司法担当

岩手のホヤと日本酒の組み合わせが好きです