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恒例の「菜の花畑」 公開中止の理由は・・・暖冬?

  • 2024年04月08日

 

チューリップにサクラに菜の花・・・。春と言えば皆さんはどんな花を思い浮かべますか?長く厳しい冬を乗り越えて咲き誇る春の花々。岩手県内にも春の花の名所がたくさんあります。そのうちの1つ、盛岡市下厨川にある農研機構東北農業研究センターの「菜の花畑」。毎年5月に一般公開が行われ、数千人の人たちが訪れる人気のイベントですが・・・なんとことしは菜の花がほとんど育っておらず一般公開は見送ることになりました。ことしの盛岡市は雪が少なく例年にない“暖冬”でした。暖かい日が続くと春の花なら早く育って開花も早いのでは?と思ってしまいますが、なぜ生育不足になってしまったのでしょうか?取材を進めると、ここにも異常とも言える今の気象状況が影響していました。
(NHK盛岡放送局 記者 渡邊貴大)

地面がむき出しの菜の花畑

畑の土がむき出しの菜の花畑

その知らせは新年度が始まってすぐにもたらされました。4月4日、菜の花畑の一般公開の中止の知らせる通知を受け取った私。なぜ?という疑問が頭をめぐったため、すぐに農研機構東北農業研究センターに「現場を見て原因を教えてほしい」と取材を申し込みました。翌5日、私は毎年、多くの人を幸せな気分にさせてくれる黄色い絨毯となる菜の花畑を訪れました。菜の花が育っていなければならない場所で目に飛び込んできたのは、むき出しとなった黒い土と、一部の区画にまばらに育つナタネの姿でした。

2021年4月上旬の菜の花畑(撮影:農研機構)

本来であればこの時期は、写真のように土が見えないくらいにナタネが育っているそうで、30年ほどここで働く担当者も、こうした光景は目にした記憶がないと話していました。

農研機構 東北農業研究センター 田村徳寿さん
今くらいであれば一面に緑が敷き詰められたようにナタネが育っていて、土が見えることはないはずです。私もここに勤めて長いですが、こんな状態は見たことがない、異常です。

農研機構によりますと、ことしの菜の花畑ではおよそ400アールの面積のうち、実に85%に上る340アールで菜の花が育たず黒い土がむき出しになってしまっているということです。毎年多くの人の目を楽しませてきた菜の花畑に何が起こったというのでしょうか。

暖冬で生育不良?春の花なのに?

農研機構によると、原因は今シーズンの暖冬にあるとのこと。しかし、春の花であるナタネが、なぜ冬に暖かいと育たないという事態になってしまうのでしょうか。そこには、暖冬といえど厳しい寒さを誇る盛岡市ならではの理由があったのです。

例年の冬の菜の花畑(撮影:農研機構)

岩手県では例年、9月ごろに種まきを行って無事に発芽したナタネは、12月ごろからは積もった雪の下で春目前まで過ごします。雪の下というとかなり冷たそうにも思えますが、ナタネに覆いかぶさった雪が秋田県横手市の名物「かまくら」のように、厳しい外気から守ってくれる役割を果たしてくれるお陰で、冬場には氷点下10度を下回ることもある厳しい寒さの盛岡市での冬を越すことができるのです。

ところが、暖冬となったこの冬は、12月中に降った雪は早々に溶けてなくなってしまい、せっかく出た芽がむき出しの状態で寒空の下にさらされることになりました。一方、”暖冬”と言えどそこは東北の冬。3月に入って厳しい寒さが戻り、氷点下5度や6度の冷気をもろに受けてしまい、寒さに強いと言われるナタネもさすがに耐えきれず、ほとんどが枯れてしまったということです。

食害の原因の害虫

農研機構によりますと、今シーズンはこうした暖冬の影響に加えて、種をまいた9月以降に例年よりも暖かい時期が長く続いたため、害虫による食害も深刻だったということです。暖冬と害虫のダブルパンチが、前例のない生育不良を引き起こす原因となったのです。

どうなる未来の菜の花畑

菜の花畑の一般公開

およそ四半世紀の歴史を持つ菜の花畑の一般公開。農研機構によりますと、その歴史の中で暖冬による生育不良での中止は初めてのことだと言います。果たして来年こそはいつも通りの一面の菜の花畑を楽しむことができるのでしょうか。担当者に聞いてみると…?

農研機構 東北農業研究センター 田村徳寿さん
どうにかいつも通りの冬の寒さが戻ってくれることを祈るしかないのが実情です…

生育不良を防ぐためには、害虫を防ぐ農薬をまいたり、寒さから守る対策を取ったりする必要があります。しかし、菜の花畑があるのは農研機構東北農業研究センターの敷地内。菜の花の栽培はあくまで試験農場での研究のためのものであるため、農地の条件が変わってしまう農薬の散布や、費用がかかる寒さ対策などを取ることが難しいのです。

この冬は雪が少なくて雪かきの回数の少なさに安堵していた私。そのいっぽうで毎年恒例だった菜の花畑の一般公開は異常ともいえるような暖冬の影響で中止となってしまいました。「異常気象」や「温暖化」という言葉が、もはや当たり前のように使われる昨今、東北の春は今後どうなってしまうのだろうかと・・・さまざまな不安も頭をよぎる新年度となりました。

  • 渡邊貴大

    NHK盛岡放送局

    渡邊貴大

    平成25年入局
    東日本大震災を仙台で経験し記者を志す。
    生まれは秋田で毎年の冬は雪かきで積まれた雪山でかまくらを作るのが楽しみでした。

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