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“わたしたちは どう備えるか“

東日本大震災 能登半島地震を受けて
  • 2024年03月12日

2024年1月に起きた能登半島地震では、改めて災害への備えがクローズアップされました。
NHK盛岡放送局では「わたしたちは どう備えるか」と題して、2月に防災の専門家などに集まっていだき座談会を開催しました。13年前の東日本大震災、そして能登半島地震を踏まえた課題などについて    意見を交わしました。

参加されたのは

防災について詳しい岩手大学の齋藤徳美名誉教授。
岩手県立大学看護学部の福島裕子教授。
宮古市の防災士、佐々木重光さん。
NPO法人「フードバンク岩手」の阿部知幸事務局長の4人です。
はじめは能登半島地震から見えた課題について意見を交わしました。

2024年1月1日 能登半島地震

2024年1月1日午後4時10分に発生した能登半島地震。
地震の規模を示すマグニチュードは7.6で1995年に阪神・淡路大震災を引き起こした地震や、2016年の熊本地震より規模の大きな地震でした。
石川県では最大震度7の揺れを観測。東日本大震災以来初めてとなる大津波警報も発表され、沿岸を津波が襲いました。

3月1日時点で、石川県内で死亡が確認された人の数は、災害関連死を含めて241人。
石川県内で被害が確認された住宅の数は、7万6000棟余りに上っています。
能登半島では多くの道路で陥没や崩壊などの被害が出て、孤立する集落も相次ぎました。停電のほか
地下の水道管にも大きな被害があり、広範囲で断水しました。
また3月1日時点で、避難所での生活を余儀なくされていている人は1万1000人以上。
住み慣れた自治体を離れて避難生活を送っている人も多くいます。

能登半島地震の受け止め

Q 齋藤さんに伺います。能登半島地震を受けて、感じたことは?

岩手大学
齋藤徳美
名誉教授

山間部の震度7という地震で、中越地震の山古志村とか、いろんな事例があるんですが、どうも今回は政府のほうに、そういうイメージがすぐ湧かなかったのかなと。
発生後すぐに情報が入ってこないのは、それだけ被害が大きいからです。
即、自衛隊なり、あるいは道路網を管轄する国交省とかの動員なり対応を図ってくれれば、少しはよかったのかなと思います。

Q佐々木さんは、防災士の視点で今回の地震をどうみているか。

防災士
佐々木重光さん

初動対応見ますと、今回は各地で孤立が起きた。
自衛隊・警察・消防というのは、すぐそこに行けないのが事実です。
その中にあってやっぱり、地域防災力をいかに高めていくかが必要と感じました。
われわれ自身が、行政の限界というのを知りながら、われわれ自身が災害に対する自立の精神をもっと持っていかなければ、きたる災害には対応できないのかなとは思っています。

Q現地で食糧支援をしている阿部さんは、何を感じたか。

フードバンク岩手
阿部知幸事務局長

現地では「ミスマッチ」がすごい起きていた。例えば、高齢化率が高くて子どもがいない所に、ミルクがどんどん届いてしまうということがあった。
平時からどういう災害が起きたときに、どういうふうな支援をする。どういう優先順位で支援するかが決められていないので、毎回こう場当たり的に、あれが足りない、これが足りないというのが、ずっと続いているなというのを、今回現地に入った時に 第一印象で思いました。

Q福島さんは、長期化している避難生活についてどんなことを感じているか。

岩手県立大学
福島裕子
教授

東日本大震災のときに起こっていたことが、まさに同じような状況で能登でもあったというところを聞きました。
奥能登の方の避難所などでは、段ボールベッドがなかったり、テントが備蓄されていなかったということで、結局は男女問わず雑魚寝状態で、女性が隣にすぐ男性がいるところで休まなければならないことに「怖い」といった声とか、あと支援物資もなかなか届かない中で、女性たちが寒い思いをしていたといった声。後は支援物資ではないんでが、やはり女性は身体的な構造の特徴、生理学的な構造の特徴から、プライベートゾーンが見えないところにあり、清潔保持が難しい状況が続くと、かぶれとか、かゆみの原因になってしまいます。清潔保持が難しく、でも誰にも言えなくてどうしていいか分からないという女性たちが多かったと聞いています。
やはり、いち早く女性の健康支援に特化した相談窓口などがあれば、女性たちのニーズに早く答えられるのかなというふうに感じました。

Q能登半島地震から見えた課題として、「地域の防災力をどう高めていくか」についてどう考えますか。

フードバンク岩手 阿部知幸事務局長
「大きい災害が起きたときに、今の制度は行政が支援するってなっているので、例えば不得意な、ふだんやった事がないような、避難所の運営だったり物資の管理だったりを、真新しい作業着を着てやらなくちゃいけないというふうになっている。
ぜひ制度のところでも、最初から官民連携する。得意なところは得意な人たち、例えば物資支援だったら運送屋さんだったり、宅配業者だったり、避難所運営だったら、例えばアウトドア用品メーカーさんとかだったら上手にやってくれたりとか。そういった棲み分けが最初からできていれば 毎回、毎回現場で同じような、女性がトイレに行くところがないとか、授乳する場所がないとか、そういったことは
最低でも防げるんじゃないかなと思います」

岩手県立大学 福島裕子教授
「避難所の運営というのは、ほとんどが男性が中心となってやっていってしまうという現状があり、女性はどうしても、掃除とか炊き出しとか、それから高齢者や障害のある人たちを支援するのが役割で、いろんな取りしきりをやるのは男性の役割というふうに、どうしてもなりがちです。
日頃の防災の中に女性たちの視点を取り入れて、例えば避難所のシミュレーションをするときにも、女性が洗濯物を干せる場所、そして赤ちゃんを連れた女性が授乳ができる場所、安心して胸を出して授乳ができる場所の確保って、実はとても大切。いろいろ女性の目線に立ってのシミュレーション等ができるような体制づくりが、非常に求められると思います」

防災士 佐々木重光さん
「阪神淡路大震災の時、いかにして生存者を助けたかっていうことですが、住民による救出が9割でした。発災当初の3日間の部分においては 地域の防災力が生死を左右するといっても私は過言ではないと思います。災害対応の主人公は誰かということなんです。
われわれ地域住民そのものも、行政の限界を知って、いわゆる地域防災力の限界までとはいかないですけれども、そこまで行くように努力はしていく必要があと思います」

岩手大学 齋藤徳美 名誉教授
「地域の方に大きな災害が来るから、備えろといっても、それは明日来るものでもないので、なかなか自覚を持ってもらうのは難しい。だからこそ、佐々木さんのように防災士の方が、1つの集落なり、あるいは町内の中で啓発にあたることが大切。そしてそういう活動を、市なり町や村の行政が動きやすいようフォローするとか、体制づくりをする。相互にそれをかみ合わせていって、最終的に自分の命は自分で守るという認識も深めていき防災の意識を持ってもらう。そういった工夫を相互にしていかなければいけないと思います」

能登半島地震からの教訓

Q今回の能登半島地震では指定避難所ではなく、自主避難所のようなものも多かった。阿部さんが現地に入って何を感じましたか。

フードバンク岩手
阿部知幸
事務局長

今回に関しては、以前よりも指定外避難所でも支援は届きやすくなってるかなというのは感じました。ただ炊き出しをするときに、例えば自衛隊とかはマンパワーが限られているので、炊き出しする場所は指定避難所でしかできない。ただ、指定外のところの人の分まで作ることは可能なので、取りに来てくれれば作れるよというところまでしかまだできていない。
現状、指定内と指定外には少し差があって、そのあたりを、どう解消していくのかというのは今後の課題と思います。

Q佐々木さんは地域で自分たちの身を守るために、今どういったことを考えてどういう取り組みをしているのか。

防災士
佐々木重光さん

地域住民が災害に対する意識をどのぐらい持ってくかが、これから勝負かなと私は思ってました。いちばんのポイントは、やっぱり子供たちだと思います。
小学生、中学生にも授業の一環で、(追悼式などで飛ばす)はと風船に(メッセージ)を書いてもらう、中学生には現地に来て歌を歌ってもらうなどして意識を少しでも高めてもらう。そうして意識を高める中でも、少しでも防災の知識にたけている防災士の仲間作りをしたいということで、宮古市崎山地区の防災士、今のところ33名の賛同者いますけれども、その33名の賛同者で地区の「防災士会」を立ち上げて、 これからいろいろ活動していきたいなと思っています。
先にリーダーですね。(地域の防災の)リーダーを作っていきたいなと思っていました。そういう組織があちらこちらにできて、意識の醸成ができればいいかなと思います。

岩手大学
齋藤徳美
名誉教授

今大きな課題になっているのは 津波を想定してですが、高齢者・災害弱者をどう守るかということ。災害弱者の方は、歩いて避難できません。高い避難ビルを避難場所に指定したって、タワーを作ったって、停電になれば、そこに上がれない。
そうなると車避難しかない、ということになる。
ですので、集落なり、町内なり、うちの所だったら災害時にこういう対応をする。人数が7、80人しかおらず、車を10何台出して、お年寄りも運転して近くの高台へ行けば避難できるようなところは、車避難をしてくださいとか、いろんな地域の特性を考えて工夫するしかない。
それをやってくためには、行政がその地域に状況を説明し、この地域だったらどうしようということについて互いに知恵を絞って模索していくしかないと思います。

岩手県立大学
福島裕子
教授

 佐々木さんが先ほど話された、若い人たち、子どもたちへの意識啓発とても大切で、そして仲間を増やしていくことで「自助の力」を強めていくといけるということに非常に共感しています。
岩手県は本当にどんどん若者が流出していってしまっているということと、わたし自身、大学で災害看護学という授業を担当していて、そこで学生たちに、もし自然災害が起きたときのために備えをしていますかと聞くと、ほとんど学生は手を上げないんです。災害を自分ごとだと思っていない。
そういう若い人たちに、やっぱり災害の意識づけ、そして東日本大震災を経験した岩手県だからこそ、分かってもらいたいという思いがある。
やはり(震災を)忘れないっていう事がすごく大事かと思っていますし、特に命と直結するというところを、私なんかは看護学部で教えていますので、防災を考える、あるいは、災害を考えるということは「命を考えること」なんだということを伝えたいと思っているので非常に参考になりました。

わたしたちは どう備えるか

Q今、まず何に取り組むべきかと考えていますか。

フードバンク岩手 阿部知幸 事務局長
「行政もNPOも、そうですけども大きい災害が起きたときに、こう活動が止まるというよりは、思考が止まるみたいになってしまうので、大きい災害でなかなか動けなくても、こういう順番でやっていかなくちゃいけないというのが、まず決まっているべきだろうと思います。
それによって、被災地だったり被災者の生活再建がよりよくなるんじゃないかなと。そのためには、いま例えば岩手県でも、地域にどんな資源があって、どういう役割を担っていて、どれぐらいできるのかというのが、官民、互いにちゃんと知っているということが大事かなと。
そうする事で、この部分はこの人たちがやってる。ただこの部分は、もしかしたら支援が行っていないとか。そういうことがしっかりと、分かってくるんじゃないかなと思っています」

防災士 佐々木重光さん
「ふだんから挨拶をするとか。そういった部分が必要。私は民生委員もやってますけれども 例えば、1人暮らしの老人の方がいらっしゃると、姿が見えないときに隣の人に聞けば、こういう状況だとか旅行に行ったとかっていう情報を知る事ができるんですよね。
そういった部分でいえば、やはり向こう3軒両隣の部分がふだんから、こうコミュニティーを醸成しておくことが大事と思います。
それが全然連絡していないというのが現実なんで、そうした関係を作っていくっていうのがいちばん近くの災害対応かなと私は思っています」

岩手県立大学 福島裕子 教授
「やはり防災対策の場に女性の声を届けられるような改善をしていくということと、それから女性自身がやはり防災意識を高めるための意識啓発の研修等を積み上げていくというところが 大事なのかなと
思っています。
それからやはりこの3.11を経験した岩手県であるからこそ、岩手県の県民全員がその3.11を風化させない、忘れないという意識を持っていくことが大切と思っています。
若い人たちに向けてメッセージを、被災を経験した私たち大人側が伝えていきながら防災を考える、災害を考えるということがいかに人の生きる事を考えることなのか、命を考えることなのかということを 伝え続けていくということも、大切かなと思っております」

岩手大学 齋藤徳美 名誉教授
「生活に、あるいは暮らしにゆとりがないと災害にどう備えようかという意識は生まれないし、日常、大きな災害が来るかもしれないと、いつも備えて考えていったら安らかに生きてはいられないという現実もあります。
ですので明確にこれをすればいいということは、恐らく回答はありません。
なので先を考えると私は子どもたちの教育が大切と思います。
学校で子どもたちにどう命を守るか。読み書きそろばんが大事と言われてきましたけれども それ以上に、自分の命をどう守るかということが大事。それは生きる上での基本です。そういう教育に力を入れて、そして、そういう子たちが大人になってそしてそれぞれの立場になれば、社会も変わっていくし、防災についての取り組みといったものも浸透していくんではないかと思います。長期的には、子どもたちの教育、それが最後は命をつなぐことにつながるというふうに最近強く感じています」

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