学生たちに愛され17年 食堂 最後の日
- 2023年09月01日

8月31日、盛岡市内のある一軒の食堂が最後の営業日を迎えました。
岩手大学のキャンパスの近くにあって、昼も夜も学生たちが列を作るほどの人気の店。
長く親しまれてきましたが、食材などの値上がりを理由に店主は店を閉めることを決断。
最後の営業日。開店直後から多くの学生たちが訪れ、店との別れを惜しみました。

人気の食堂
ごはんは普通盛りで、1合半。大盛りは、2合半。
厨房ではいつもと変わらず店主がどんぶりに白米をよそっていました。
岩手大学の近くにある食堂「味工房 きくや」。
かつどんや唐揚げ定食などのメニューを1000円以下の格安で提供。しかもボリューム満点。
店は多くの大学生たちに親しまれてきました。
訪れた学生は…
「安くておいしくて学生の味方だと思います」
「多いときは週5とかで来てます」
「きょうは、とり天丼。この店で初めて食べたメニューで自分にとっては思い出の一品です」

営業最終日となった8月31日。店の前には開店前から行列。
別れを惜しむ学生たちでいっぱいとなりました。
この店を一人で切り盛りしてきた店主の菊池義見さん。
注文を受けると、厨房の中で手際よく料理を作り上げていきます。
おかずを並べ、ごはんはてんこもり。
それが次々に学生たちの胃袋に吸い込まれていきました。

菊池さんが、レジで学生と話をしていました。
最終日なのに、学生はポイントカードにスタンプを押してもらおうとしたのです。
菊池さん「もう、カード使わないだろう」
学生「いやいや、きょうの夜にまた来ます」
最終日、多くの学生が訪れたことについて聞いてみると菊池さんは、盛り付けの手を休めず、短く話してくれました。
「感無量です」

菊池さんが、店を始めたのは17年前。
客の8割、9割が学生だから、できるだけ盛りをよくして、価格も抑えてきたそうです。
しかし、このところ物価高で経営は厳しさを増しました。
電気代や燃料代、そして食材なども高騰。
悩んだすえ、閉店することを決断しました。
店主 菊池義見さん
「価格を上げようという気にはならなかった。学生たちは“貧乏”だからね」
「学生たちには、やめないでとは言われているけど、しょうがない」
最終日のお昼の営業。食べ終えた学生たちが、菊池さんと記念撮影をはじめました。
少し照れくさそうに撮影に応じていた菊池さん。その表情がどことなく寂しそうにも見えました。

学生「また、あした来ますね」
菊池さん「あしたはねえよ。ばーか」
お昼の営業が終わって菊池さんが話してくれました。

「夜の営業が終わったら、最後はやりきったって感じになるかもしれないね」
夕方からはじまった最後の夜の営業。店の前には再び学生たちが列を作っていました。
多くの学生たちを食事で笑顔にしてきた小さな食堂。
閉店は残念ですが、菊池さん、本当にお疲れ様でした。
(取材 NHK盛岡 キャスター 関根和子)