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岩手取材ノート

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消防ホースのつなぎ方って知ってますか?

阪神・淡路大震災からの教訓
  • 2023年02月09日

消防車に積んであるホース、街中に設置されている消火栓。見かける機会は多くても、実際に使っている現場には立ち会ったことがない人も多いのではないでしょうか。ホースと消火栓をつなぐ金具に込められた、火災現場で1秒を削り出すための工夫と、全国で規格の統一が進んでいった背景を取材しました。(盛岡放送局 渡邊・大北)

▽持ってきたホースがつながらない!?

1995年1月17日、阪神・淡路地方を襲った巨大地震は、死者6434名、全半壊家屋24万9180棟、避難者30万人以上の被害を引き起こした大災害となりました。この時、全国各地から消防車が応援に駆け付けましたが、中には消防ホースをつなぐ金具の種類が合わず連携がうまくいかなかったケースがあったのです。

この時の反省を生かし、その後、全国的に消防用のホースについては、消防ホースの結合金具や緊急消防援助隊用の積載ホースの太さの統一など、規格の統一化が進められてきました。

今回、岩手県内の12消防本部に問い合わせて、消防ホースと消火栓の規格がどうなっているのか取材しました。ホースと消火栓をつなぐ結合金具には、
▼ぐっと押し込むだけでつなげる「差込式」と、
▼ぐるぐると回してつなげる「ねじ式」 の2種類があります。

取材の結果、ほぼすべての消火栓で、「差込式」が採用されていることが分かりました。
しかも、県内では阪神・淡路大震災よりも前から「差込式」に統一されていて、消防学校でも長年、差込式の消化ホースの使い方を指導しているということでした。

▽「差込式」と「ねじ式」の違いって?

北上消防署大堤分署

では、実際にどうやって消防ホースをつなぐのか。
北上消防署に協力してもらい、2種類の結合金具の使い方を実際に見せてもらいました。

差込式

こちらが、現在、岩手県内で統一の規格となっている「差込式」の結合金具。
北上地区消防本部の管内でもすべての消火栓がこの「差込式」になっています。
消火栓のふたを外してワンタッチで差し込んでつなぐことができる形になっています。

ねじ式

一方、防火水槽から水を吸い上げるための吐出管(としゅつかん)という設備を見てみると…。
らせん状の溝が入った結合金具を発見!
これが「ねじ式」と呼ばれるもので、吸管という放水用の固いホースを回してねじ込んで結合します。
どうして防火水槽には「ねじ式」が使われているのでしょうか。

北上地区消防本部警防課 昆野美継課長
消火栓と違い、防火水槽からは消防車のポンプを使って水を吸い上げる必要があるのですが、結合部分から空気の漏れがあると水が上がってきませんので、気密性を高めるためにねじ式を採用しています。

「気密性が保てるなら、規格の統一はねじ式でもよかったんじゃ…。」
ついそんな素人質問をしてしまった私に、隊員の皆さんが2種類の結合金具につなぐ様子を実際に見せてその疑問を払しょくしてくれました。

最大の違いは、接続にかかる手間の違いでした。
同じ隊員が実演してくれましたが、
▽「ねじ式」は持ち手を握って3度ほど回して回して締めて…。
 つなぐのにかかった時間は、およそ15秒でした。
それに対し、
▽「差込式」は消火栓のふたを開いてホースをぐっと押し込むだけ!
 つなぐのにかかった時間は、わずか5秒でした!

およそ3分の1の時間でホースをつなぐことができる「差込式」。
1分1秒を争う火災現場では、このわずかな違いが命にかかわるため、「差込式」への統一が進んでいったことが分かりました。

北上地区消防本部警防課 昆野美継課長
 ねじ式だと焦っていると入らなかったりすることもあるので、特に火災は1分1秒を争うことですので、つないですぐに水が出せるようにということでは差し込み式の方がいいと思います。全県的にも全国的にも、同じ規格で統一されているため応援に行っても応援に来てもらっても活動がしやすい状況が整っています。

12年前の東日本大震災でも、岩手県内に全国各地から消防車が応援に駆け付けましたが、こうした規格の統一化が進んでいたこともあり、活動するうえで大きなトラブルは発生しなかったということです。

過去の大災害からの教訓が、その後の災害にもしっかりといかされているのを知ることができたとともに、消防の隊員の皆さんが、命を救うための1秒を削り出すことができるよう、金具ひとつからこだわって選んでいることも分かりました。

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