期待の新星!岩手県北上市出身 高校生フルート奏者岡本梨奈さん
- 2023年01月30日

「どうして一番になりたがる」
「No.1にならなくていい」
そんな歌詞の歌も、流行り「No.1」より「Only1」にというような風潮もある中で、ひたむきに「No.1」を目指し高校1年生で全国コンクールで優勝した北上市出身のフルート奏者岡本梨奈さんをご存じでしょうか?いま注目されている若手音楽家です。
フルートを始めてからおよそ7年でつかんだ高校生No. 1。
No.1になった原動力や、さらにOnly1のフルート奏者になる思いを聞きました。
▽1月10日のおばんですいわてで放送 動画リンクは記事下部に
取材:NHK盛岡 渡邊貴大、グレーヴァ遼
フルート奏者・岡本梨奈さん

北上市で去年12月に開かれた、県内の音楽家で作るプロの楽団「いわてフィルハーモニー・オーケストラ」の定期演奏会。岡本さんは、モーツァルト作曲のフルート協奏曲をソリストとして演奏し、力強い音の伸びと豊かな表現力で集まったおよそ300人の観客を魅了しました。
この曲は、去年11月の全日本学生音楽コンクールのフルート部門高校の部でも演奏し、優勝を決めた曲です。

高校1年生らしい、あどけなさもある岡本さん。優勝という偉業を成し遂げたコンクールにどのように向き合って練習したかを聞き真っ先に返ってきた返答は…。

1位だけを目指してやっていました。1位をとりたかったし、とってほしいという周囲の期待も感じていたので、プレッシャーという面では、かなり今までより緊張するところもあったのですが、そこを力に変えてしっかり本番で成果を出せたかなと思います。
「1位だけを目指してやってきた」私たち2人が人生で一度も発したことのない言葉にまず頭が下がりました。
フルートとの出会い
岡本さんがフルートと出会ったのは7年前。北上市立黒沢尻北小学校4年生の時でした。
もともとピアノを習っていたそうですが、新たな楽器に挑戦しようと吹奏楽部に入部した岡本さん。たまたま希望者がいなかったのがフルートでした。

先生に『誰かやる人はいませんか?』と言われ、そこでふっと手をあげたのも何か縁があったのかなと思います。フルートを初めて吹くと音が鳴る人が少ないのですが、初めて吹いてみた時に音が鳴ったということが自分の中でも好奇心や、これからの自信につながったと思います。

音を出せたうれしさをきっかけに、フルートの魅力に引き込まれていった岡本さん。

それまでピアノを習っていましたが、ピアノはたたいたら音が出るので、みんな同じような音が出る楽器だと思うのですが、フルートは音を出す時点でまず1人1人、骨格とかで音も変わってくるし、音が出せる、自分で音を作り出すという所に、ピアノと違う楽しさがあったのかなと思います。
師匠・村野井友菜さん
小学校のクラブ活動にとどまらず、さらにうまくなりたいと考えた岡本さんは、盛岡市にあるフルート奏者・村野井友菜さんの教室に通い始めました。

村野井さんに通い始めた当時の岡本さんの印象を聞きました。「天才少女が降臨した」といった言葉を予想していた私たちには、驚く回答が返ってきました。

演奏については本当にいたって普通の小学4年生の子という感じでしたね。私の方から『ちゃんと練習してね』と言わなくても、よく練習する子ではありました。
「え?普通の子…だったんですか?」と思わず聞き返してしまいました。
しかし村野井さんは指導する中で、岡本さんには音楽的なセンスだけではないある才能を感じていました。

ちょっとずつ才能が確かにあったんですよ。耳が良かったりとか。感性豊かだったり、すごくいいものを持ってるなとは思っていたんですが、何よりもやっぱり努力できるという才能がすごくありました。


出来なくて悔しくて泣くというタイプではなかったです。でも本当に、あからさまに悔しがっている目をしていた。言われたことはしっかりと練習して、次のレッスンで意地でも直すみたいな感じでやってきてたので。どんどん自然とレベルアップしていきました。小6の時には、中学生がやるような曲をやっていて、そのあたりから、もう難しい曲が出来るという達成感でものすごく練習量が増えた気がしました。
村野井さんが“いたって普通の小学生”と評した岡本さんは指導するなかで、めきめきとフルートの腕前を上達させていきました。

出来なかったことが出来るようになる楽しさをわりとすぐに覚えて、どんどん積み重ねていくと、自分ができないことはないという感じでやればできると思って練習してきて今にいたるのではないでしょうか。
岡本さんは、そこまで真摯にフルートと向き合うことができたのも寄り添ってくれる指導者・村野井さんがいてこそだと振り返ります。

できないところがあっても、それを一緒に乗り越えるみたいな。レッスンが楽しかったから練習も頑張れたかなと思う。
音楽家の道へ
中学生になると国内外の大会で好成績をおさめ、北上市立上野中学校2年生の時には全日本学生音楽コンクールのフルート部門中学校の部で優勝しました。
岡本さんはフルートを始めて約5年で全国の中学生の頂点に立ちました。岡本さんが去年、優勝したのは同じ大会の高校の部。岡本さんは中学生、高校生で全国大会のNo. 1になったのです。
中学生で頂点にたった岡本さんはさらなる高みを目指し、去年春からは全国各地から生徒が集う東京芸術大学音楽学部附属高校に進学しています。

夢に向けた挑戦とはいえ中学を卒業してすぐに故郷を離れることに迷いはなかったのか、岡本さんに聞いてみました。

小6の頃から芸高(東京芸術大学音楽学部附属高校)を目指そうと、もう高校からは東京に行こうというふうに中学3年間で用意してきました。故郷を離れて東京の高校に進学するのは少し寂しかったり大変だろうなというのもありましたが、どんな時もやはり失敗や不安を恐れずに挑戦していくことは、すごく自分の成長にもなると思うし、これからも大事にしていきたいなと思います。
今後の音楽の道を見据え目標を定め実行し結果もしっかり出す。私たち2人の中学生の時を振り返ると…またまた頭が下がりました。
さらに東京の音楽を専門にしている高校に進んだからこそのメリットもありました。

音楽高校ということで周りの仲間も同じコンクールに出場したり同じ先生に習ったりしている。皆と切磋琢磨しあいながら本番に向かって練習できたというのもある。周りの演奏も毎日、聞くようになったので相手の得意なところや自分のできないところがわかり刺激になりました。皆がいたから本番に向けて頑張らなきゃという闘争心も芽生えてきて、今までより細かいところまで追求して曲を仕上げた感じでした。その練習が実を結んで本番で結果を出せて、これからの糧になりました。
地元での凱旋公演
東京での生活が中心となりましたが、ふるさと北上市での演奏は楽しみの1つとなっています。ソリストとしてステージに立ったこの日は、およそ半年ぶりに地元での演奏となり、オーケストラとも初めて共演しました。

コンクールでも披露したモーツァルト作曲のフルート協奏曲。
“基礎の塊”とも言われるこの曲を、丁寧かつ流ちょうに奏で、観客を心の底から堪能させていました。
凱旋公演にもなった後に、観客の前で語った優勝の喜び。


こうやってたくさんのお客さまが聴きに来て下さって、また1ついい経験を作ることが出来たし、皆さんにも楽しんでいただけたかなと思いとてもうれしいです。これからも岩手の皆さんに応援していただけるように精いっぱい頑張るので、これからも応援よろしくお願いします。ありがとうございました。
教え子の成長した姿を観客席から見ていた村野井さん。高校1年生の岡本さんに、これから期待することを聞くと。


やはり聴いている人たちを楽しませるという所をメインに、でも自分が追い求めたい音楽も突き詰めてもらうために、これからも努力を続けていってほしいなと思います。
岡本さんには、今後目指す音楽の道を聞きました。

音楽高校でたくさん音楽を学んで、いろんな課題やこれからに向けての目標をたくさん見つけることが出来たので、それらの目標に向かって、将来プロのソリストという目標に向かって、これからも頑張っていきたいと思います。

岩手が育んだ若い才能。岩手から全国へ、さらには世界に羽ばたくような音楽家になってほしいですね。今後の活躍にも引き続き注目していきたいです。
▽演奏の様子などはこちら
<取材後記>
音楽についてド素人の私ですが、不思議な縁で、盛岡局に赴任してわずか半年で2度も音楽の取材をする機会に巡り会えました。今回、1年生にして高校生のフルート奏者のNo.1になった岩手の若い才能に話を聞かせてほしいと取材を申し込みましたが、岡本さんや、師匠の村野井さんの取材を進める中で、フルートを始めたころから天才だったわけではなく、普通の小学生だった岡本さんがたゆまぬ努力を重ねることで現在があることに気づかされました。努力するということもまた非常に難しいことなのだと、自分のこれまでを振り返り思いましたが、音楽を身近に感じるきっかけをくれた岡本さんに感謝するとともに、これからのさらなる活躍を心より祈念しています。<渡邊 貴大>
バイオリン歴20年強の私は、岩手に来てから3年ほどの間に多くのすばらしい音楽家と出会ってきました。そんな中、今回は岩手出身の期待の新星に出会うことができて、その才能の一端を取材し放送しました。
はじめて岡本さんの演奏を聴いた際、美しい音色や表現力はもちろん、何よりその素直な演奏に感動しました。音には性格が出ると言いますが、その点からもたゆまぬ努力を続けてきた岡本さんの一面がうかがえました。
岡本さんの好成績の背景には師匠の指導力も大きく、村野井さんの指導も岡本さんに合っていたのだろうと2人を見て感じました。いつか私も共演したいという願望もあり、さらに腕を上げるよう取り組みたいです。<グレーヴァ 遼>