最後の挨拶

とても充実した4年間でした。
取材で出会った方々や局内の仲間に恵まれて「もう1年くらいこの人たちと仕事がしたい」と周囲に漏らしていた中での転勤で、残念な思いもあるのが正直な所です。

岩手県内では、いろいろなテーマを取材したつもりです。
おととし5月、米中貿易摩擦が県内企業に及ぼす影響を取材したことがありました。
案外身近な所にもグローバルなビジネスをしている企業があることは発見でしたし、県内の企業が大国の思惑に翻弄されることもあるんだという現状に、率直に驚かされました。
こうした放送を見聞きした皆さんが、知らなかった岩手の一面を知るきっかけになったり、岩手の経済と世界とのつながりに興味を持ったりするきっかけになっていたなら嬉しいです。

他にも取材する中で、頑張っている企業や、熱意のある経営者に出会う機会に恵まれました。
そうした所で働く皆さんは、自社の製品にプライドを持ち、生き生きと働いているように感じました。
企業の取材が多かったので、周囲の人から「経済をテーマにしているんですか?」とか、貿易とか外国人に絡むテーマも多かったことから「国際的なことが好きなの?」などと言われることも多かったんですが、実は、個人的に岩手でテーマにしたいと取り組んだのは「人口減少」と「地方創生」でした。
私は山口県の地方都市出身で、地元では人口減少が課題になっています。
全国各地を取材してきた実感からも、今の日本国内、ほとんどの地域が抱える共通のテーマだと感じていたのです。
そんな中で、取材する機会があった「世界を舞台に挑戦する企業」は、地方創生に向けたヒントを与えてくれる所ばかりで、大変勉強になりました。取材させて下さって本当に感謝しています。

さらに、人口減少などの課題にほかの地域より向き合ってきたのが、東日本大震災の被災地ではないかと思います。
岩手で、震災復興に関連するニュースを日々伝えながら過ごしたことは、大きな意味があったと思っています。

盛岡に赴任する前の話ですが、震災発生当初は隣の宮城県内で取材していて、仙台市や南三陸町に加えて、県境の気仙沼市までは行ったんですが、岩手県に入ることはありませんでした。
県内を初めて取材したのは、平成26(2014)年4月。
三陸鉄道の運転再開に合わせて、釜石市、大船渡市、山田町に入りました。
当時は、運転再開の高揚感や、復興に向かうエネルギーを感じた一方、さら地が広がる現場で話を聞いて、課題も感じた取材になりました。
同じ年の9月、震災3年半のタイミングで陸前高田市に入ったこともありました。
山を切り崩して、巨大なベルトコンベヤーで土砂を運ぶ。
大規模な造成工事の規模感に圧倒されたのをよく覚えています。
加えて、街を根本からつくり直そうというプロジェクトをどう感じるか市内で聞くと、賛否があることもよく分かりました。
「まちづくりがどうなっていくのか、今後も見ていきたい」と思わされたことが、強く印象に残っています。

▲「あの高さまでかさ上げする予定です」とリポート
(陸前高田市/平成26年9月11日放送)【震災3年半】
▲「見えてきたのは 土を盛ってつくった新たなまち」とリポート
(陸前高田市/平成30年9月14日放送)【震災7年半】

そんな思いを胸に、岩手に赴任することになりました。
経験や教訓を伝える人、水産業に従事する人、ラグビーW杯の関連取材など、折に触れて沿岸を訪れてきたつもりです。
上記写真のように、赴任する前に取材した場所を再び訪れ、変化も目の当たりにしてきました。
具体的には放送で発信してきましたので、詳しくは書きませんが、いろいろな方にお話を聞く中で、課題を感じたり、時には喜んだり、悲しんだり、共に考えたり、悩んだりすることもありました。
これを書いていても、1人ひとりの顔が思い浮かびます。
私個人が放送で発信できたことは限られますが、それでも、スタジオから、局内のメンバーが取材したことをたくさんお伝えしてきました。
そうした内容が、少しでも皆さんの心に残っていればと願っています。

震災や地方創生をテーマにした取材以外にも、いろいろな現場で、たくさんの人にお会いしてきました。
さまざまな話をしてくれた、出会ったすべての方に感謝しています。
そして、手前味噌ですが、局内の仲間にも本当に恵まれました。
一緒に現場に向かい、重い撮影機材や音声照明機材を持って勝負してくれた仲間。
撮影した内容が分かりやすくなるように編集してくれたメンバー。
魅力的な字幕を作ってくれた人。生放送をキッチリ出してくれた仲間たち。
このうちの多くが地元岩手出身のメンバーです。
そして、取り組みたいテーマに挑戦させてくれた上司や先輩に感謝しています。
「品質の高い放送を届けよう!」と、みんなで努力したのは、1人でも多くの方に、私たちが取材した内容を届けたかったからです。
そんな放送を見聞きしてくださった皆さんに心から感謝しています。
ありがとうございました。

思い出いっぱいの愛する岩手を離れるのはとても淋しいですが、今後もずっと「岩手はよかったよ〜」と語り続けます!
(寒いのはちょっと苦手でしたけどね 笑)
岩手の皆さん、本当にありがとうございました!

令和3(2021)年6月25日(金) 児林大介

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