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インタビュー・メッセージ

チーフプロデューサー海辺潔 インタビュー

世界に届けるにふさわしい作品を

“世界に届けられるソフト”を視野に入れて検討した、放送90年記念作品。その題材として上橋菜穂子さんの『精霊の守り人』を選んだ理由のひとつは、多くの国で翻訳され、海外でも人気が高い点です。また、女性が子どもを守って冒険するストーリーは普遍的で訴求力があります。
 ただ本当に実現可能なのだろうか、と。野暮な話で恐縮ですが、まず予算が大丈夫かな…と頭の中で“カチャカチャカチャ”と電卓の音が鳴りました(笑)。それからアクションシーン。アクションはワンカット撮るのにすごく時間がかかります。きちんとやるつもりでしたので、日程をどう調整するかも課題でした。これらを考えると、もうスタッフ集めに全てがかかっていると思い、大森寿美男さんを口説いて脚本を引き受けてもらい、人物デザイン監修は柘植伊佐夫さんにお願いするなど、多くの精鋭が仲間に加わってくれて、少しずつ具体化していきました。

「守り人シリーズ」を全部やります!

場所も架空、時代も架空という、ここまで本格的なファンタジーはNHKではおそらく初めてでしょう。上橋先生とは「守り人シリーズ」全部を網羅することをお約束しましたが、全12巻のどこを切り取って放送22話にまとめるかは非常に難しい課題でした。物語の中には、ほとんど“脳内ワールド”のような話もありますから、そこは率直に「何巻と何巻は映像化が難しいです」とご相談し、エッセンスを取り入れることでご理解いただきました。
今年放送するシーズン1は、かなり原作に忠実につくりましたが、来年放送予定のシーズン2以降は構成を大胆に変えています。原作ファンの方たちからは「おお、なるほど」、あるいは「えー、これやらないの?」など、いろいろなご感想をいただくでしょう。幸い上橋先生は、完成した台本を送るたびにお電話をくださって「おもしろい!」と大絶賛してくださいますので、先生のお言葉に力をいただきながら制作を進めています。

主人公バルサは、“綾瀬はるか”ありき

身体能力の高さと、硬軟演じ分ける演技力。バルサは綾瀬さんありきです。上橋先生は最初、きれいすぎないか、若すぎないかと心配しておられたのですが、「いえ、大丈夫です」と断言しました。長いスパンで描きますから、スタート地点は若々しいぐらいがいいのではと思ったんです。
綾瀬さんは集中力がすごく、皆がOKだと言っても、ご自身が納得しなければ、「もう一回!」と諦めない。アクションシーンは吹き替え(スタント)で撮るつもりでしたが、ほぼ全てをご自分でやられています。声も、ふだんは高くてきれいな印象があったので、こんな低い声が使えるんだと驚きました。「カット」がかかったとたんに、「わぁ〜、疲れたぁ」と言って、ふだんの綾瀬さんに戻る感じがまたかわいいんですよね。

多彩で魅力的なキャストたち

脇を固めるキャストたちも魅力的です。例えば帝役は「原作はもっとおじさんじゃないの?」と思われるかもしれないのですが、我々は藤原竜也さんに演じていただくことで、親子の葛藤をより色濃く出せると踏みました。時折見せるお人形のようなキラキラした目で…憎んでいる(笑)。あれは本当にゾクゾクしますね。
 大呪術師トロガイは、元の顔が残らないほどの特殊メイクをするので、逆にきれいな方にお願いしてその落差をアピールしようと考えました。高島礼子さんに「こんなバアサンの役がありますが…」と打診したところ、「おもしろそう!」と。特殊メイクには時間もかかりますし、相当なストレスになるのではと心配でしたが、ご本人は今までに経験のなかった「ゲヘヘヘ〜ッ!」と笑うような役を、とても楽しんで演じていらっしゃいます。
 そしてバルサと共に旅をする王子チャグムは、オーディションで決めました。100人くらいに会って、最終的には小林颯君の“ふにゃ”っていうカワイイ笑顔と、イメージしたことを計算ではなく本気で身体表現できる感受性が決め手となりました。

これまでにないスケールで挑む“ヒューマンドラマ”

「精霊の守り人」は、VFXも駆使した壮大なファンタジー作品です。ここまでVFXを使った作品としては、スペシャルドラマ「坂の上の雲」(2009〜2011年)もありますが、「坂の上の雲」で描いた船や大砲といった硬質のものに比べると、今回VFXで描くものは、水や卵や怪物ラルンガ…といったテクスチャーの軟らかいがものが多く、同じVFXでもまったく異なる趣きとなりました。
ロケも、原作に描かれているアジアの多様性をモデルにした世界観とその大自然を描くべく、北は北海道から南は九州、そして韓国でも敢行しました。天候の影響を受けて予定が大幅にオーバーしましたが、効果は十分に得られたと思っています。
これだけのスケールでつくりあげたドラマですが、やはりヒューマンドラマとしての部分というのをいちばん見ていただきたいと思っています。はっきり言って泣きます! バルサとチャグムの距離がどんどん縮まり、関係を深めていくのに、最後は…。とても感動的です! 「精霊の守り人」をぜひ楽しんでください。

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